第260話「アリスルート22」
「――あれ? お姉ちゃん何してるの?」
カイを探して屋敷の中を歩き回っていた私は、部屋に閉じこもってパソコンと睨めっこをしていたお姉ちゃんに声をかけた。
すると、お姉ちゃんは気だるそうな目を私に向けてくる。
「株」
それだけ言うと、またパソコンに向き直した。
機嫌、わる……!
「えっ、何、もしかして暴落しちゃった……?」
「なんのこと? 元金の十倍くらいには増えてるけど」
「あ、あぁ、そう」
じゃあなんで機嫌悪いのよ……!
しかも口調流暢になってるし!
「あ、そ、そういえば、カイ知らない? 相談が――」
「…………」
「――ひっ!?」
カイの名前を出すと、お姉ちゃんは無言で私を見つめてきた。
その表情は真顔だけど、目はなんだか据わっている。
どうやら、お姉ちゃんが怒っている理由はカイにあるみたい。
あいつ、私が仕事してる間にお姉ちゃんに何したのよ……!
「カイは、朝から勝手にどこか出かけてる」
「そ、そうなんだ。珍しいわね、何も言わずに出て行くなんて」
「ほんと、居候してるのにいい気なもの」
あ~、完全に拗ねてる。
多分カイとどこかに出かけるつもりだったんだ。
それなのに起きたらカイがいなくなってたから、不機嫌なんだろうなぁ……。
お姉ちゃんに内緒で出かけたってことは、おそらくクロのところに行ったんでしょうけど……さすがに、言えないわよね。
「ま、まぁカイも高校生なんだから、そういう時もあるって」
「ふ~ん、アリアはカイの行き場所を知ってるんだ?」
「――っ!? な、なんでそうなるの!?」
思わぬ返しに私は動揺をしてしまった。
そんな私を見たお姉ちゃんは、呆れたように溜息を吐いて画面に向き直す。
「アリアが知らないのだったら、どこに行ったのって騒ぐはず。それなのにフォローに回ったということは、思い当たる節があるからでしょ? 最近カイはクロとやりとりをしていたみたいだし、今度のクリスマスイブに向けてクロのところに行ったってところかな」
正直私は、自分の姉が怖くて仕方がない。
どうしてこんな些細な情報でそこまで辿り着けるのか。
たまに本当に人間なのか疑うことすらある。
「さ、さぁ、どうなんだろうね?」
「ふ~ん、アリスに隠し事するんだ?」
「ごめんなさい、その通りだと思います」
カイとお姉ちゃんのために誤魔化そうと思った私だけど、ジト目を向けられた瞬間反射的に答えてしまった。
お姉ちゃんは普段優しいけれど、怒らせた時は本当に怖いので仕方がない。
これはもう、お姉ちゃんを怒らせたカイが全て悪いということで。
「つまらない」
お姉ちゃんはそれだけ言うと、パソコンの電源を落とした。
もう株はやめたみたい。
そして、ベッドにゴロンッと寝転がる。
「寝るの?」
「んっ、今日予定ないから寝る」
「そう……」
あ~、これはカイ、帰ったら酷い目に遭わされそうだなぁ……。
もうちょっとうまくやればいいのに、本当女関係になると不器用な男。
「ケーキでも作らせておくわ」
「んっ」
私の言葉を聞くと、お姉ちゃんは目を閉じて眠り始めた。
まぁケーキは焼け石に水だろうけど、何もないよりはマシでしょ。
早く帰ってきなさいよね、カイのばか。
いつもお読み頂きありがとうございます!
『ボチオタ』の次に連載を開始した、『お隣遊び』の書籍表紙イラストを活動報告のほうで公開しています!
もう神イラストすぎてやばいです!
是非とも見て頂けると嬉しいです(*´▽`*)