第258話「アリスルート20」
新作
『負けヒロインの相手をしていたらいつの間にか付き合っていると勘違いされていたらしい』
を公開致しました!
男性にも女性にも楽しんで頂けることを目指したアオハル物になります!
後書きの下のタイトル名をクリックして頂けると作品に飛べますので、
楽しんで頂けますと幸いです(≧▽≦)
「カイはアリアのことが好きなの?」
部屋に戻ってきたアリスさんは、開口一番そう聞いてきた。
それにより俺の全身にはダラダラと汗が流れる。
「最近目を離すとすぐにいちゃいちゃしてるよね?」
感情が伴わない淡々とした声が怖い。
なんだろう、蛇に睨まれた蛙とはこういうことを言うのだろうか……?
「聞いてる?」
「き、聞いています……」
「じゃあ、質問に答えて」
質問とは、アリアのことが好きかどうか、という奴のことだろう。
好きかと聞かれるのは、正直困る。
元々は嫌いの部類に入る奴だったけれど、最近はそう悪い奴ではないのではないかと思うようになっていた。
同時に、ちょっと残念な子と思うようにもなったけれど、まぁそれは置いておこう。
だから答えとすれば、嫌いではなくなったけれど、別に好きというわけではないということだ。
しかし――このシスコンであるアリスさんの前で、アリアのことを好きではないと答えるのは勇気がいる。
ここまでの話の流れだと好きというほうがアウトだとは思うが、この人の場合は思わぬところに罠を張っていることがあるため迂闊に答えれば地獄を見るのだ。
つまり、現在俺はどちらの答えを選ぶにしても賭けになってしまっている。
「十、九、八」
「な、なんのカウントダウンですか……?」
「四、三、二」
「あ、あの……?」
「零」
俺が戸惑っている間に、アリスさんのカウントダウンは零になってしまった。
いったい何が起きるのか――そう思った瞬間、アリスさんは踵を返した。
「えっ、あの……?」
「寝る」
声を掛けると、アリスさんは拗ねたような声を出した。
どうやら俺が答えなかったことが余程気に入らなかったらしい。
「ちょっ、待ってくださいよ!」
「カイなんてアリアと乳繰り合っておけばいい」
「無理に決まってるでしょ、そんなこと!」
とりあえずこのまま帰すのはよくないと思った俺は、アリスさんの右手を掴んで引き留めた。
すると――。
「へぇ……アリスの手を掴むだなんて、いい度胸をしてる」
アリスさんは、感情が一切読めない無表情で俺の顔を見上げてきた。
こ、こえぇ……。
怒っている表情ではないのに先程から冷や汗が全く止まらない。
やっぱりこの人は一番怒らせたら駄目な人な気がする。
「あ、あの、アリアのことは誤解ですからそんなに怒らないでください」
とりあえず一刻も早く機嫌を直さないとやばい、そう判断した俺はすぐにでも誤解を解こうとする。
しかし――。
「最近、アリスに隠れて何かしてるよね? 気に入らないんだけど」
どうやら、俺が怒らせていたのはアリアのことだけではないらしい。
むしろ、このことがあるからこそ彼女はアリアとのことでも不機嫌になっているのかもしれない。
「いや、それは……」
「いいよ、言えない事なら。君にとってアリスはその程度だったって話だから」
何やら変なふうに誤解をされてしまっているようだ。
あれ、おかしいな……。
確かクリスマスイヴに俺は彼女のことを誘っているし、それ以前に彼女の気持ちも聞いている。
それなのに、どうして俺は今更疑われているんだ……。
――この時の俺は知らなかった、待たせているということがどれだけ相手の心に負担をかけているのかということを。
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