第254話「アリスルート16」
『お互いの秘密を知ってからクール美少女が仔犬のように付きまとってくるようになった件について ~アマチュア作家の僕とエッチなイラストレーターである彼女の秘密の関係~』の書籍化が決定しました!
ファンの皆様に応援して頂けたおかげです!
本当にありがとうございます!
この作品は、後書きの下にあるタイトル名をクリックすると飛べますので、まだ読んだことがないよって方はどうぞよろしくお願いいたします(*´▽`*)
腕の中に金髪美少女がいる。
この状況を羨ましがらない男はいるのだろうか?
ましてや相手はハーフで、クールな女の子。
そんな女の子を抱く機会なんて滅多にないはずだ。
つまり、俺はそんなとてつもない幸運の中にいることになる。
――それなのに、どうしてこう心臓が掴まれた気持ちになるんだろう?
下手に腕を動かせば俺の体が危ない気がしてならないんだが……。
自分から抱きしめておいてなんだけど、アリスさんの大切な部分に腕が当たりようものなら青木先生に制裁を加えられかねない。
いや、むしろそれくらいで済めば運がいいほうだろう。
触れてアリスさんが怒らないわけがないのだから、十分に気を付けないと本当に命の保証はない。
「それで、いったい何があったの?」
「えっ……?」
「カイが家を出るなんてそうそうない。だから何があったのか話してほしい」
耳まで真っ赤にしているアリスさんは、急に今までの話とは全く関係がない話を振ってきた。
もしかして、アリスさんはそれを聞きに俺と二人きりになったのだろうか?
怒り心頭でアリアを部屋から追い出したのは気のせい?
……いや、うん。
怒ってたのは確かだよな。
アリスさんのあんな雰囲気そうそう見ないしさ。
まぁそんな事を本人に言っても絶対に怒られるだけだから言わないんだけど。
「別になんでもないですよ」
「アリスに隠し事をするの?」
「…………」
「そう、だったら話したくなれば話せばいい」
俺が話したくないとわかると、アリスさんはいつでも聞くという姿勢だけを見せてもう何も言わなかった。
その代わり、ポンポンッと優しく俺の手を叩いてきた。
まるで子供を落ち着かせるような接し方だ。
それからは少しだけ沈黙の時間が訪れる。
後ろから見えるアリスさんの耳は赤いままだけど、特に気まずいという事はなかった。
むしろ逆に居心地がいいと感じている。
この人といる時が本当に一番心が落ち着くかもしれない。
本来ならこういった雰囲気の時は邪魔が入るものだけど、今日はいつもと違うのか誰も邪魔に入ってくる気配がなかった。
多分、アリアは今アリスさんから逃げているし、メイドさんたちもアリスさんから呼ばれるまでは来ることがないのだろう。
「まぁ、カイが納得するまでこの家にはいていい」
「ありがとうございます。でも、ホテルがとれたら出ていくんで――」
「――そんなことアリアの前で言うと、近辺のホテルを全て買い占めるから諦めて」
「…………」
元からホテルが取れれば出ていく予定だったのでそのことを伝えると、アリスさんが若干苦笑いをしながらストップをかけてきた。
その表情には呆れを越した諦めに近い感情が見えた気がする。
俺が出ていけないようにホテルを買い占めるってあいつなんなの。
本当に思考回路がわからない奴だ。
そして本当にやりそうなところがあるのが怖い。
まぁさすがにお金ももたないとはおも――いや、そうか。
いざとなればお金をいくらでも稼げる人がここにいるんだった。
アリアがお願いをすれば喜んでこの人は力を貸すんだろうな。
家に帰れるようにならなければ、俺は帰る事ができないかもしれない。
そう諦めざるを得ない状況にいつの間にか持っていかれていた。