第249話「アリスルート11」
新作ラブコメ『高嶺の花である美少女先輩が狙っているのはイケメンの親友かと思ったら、どうやら狙っていたのは俺のことだったらしいです』を公開致しましたので、是非とも読んで頂けると嬉しいです!
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「いや、わからないな……。こき使いやすいとか、そういう事か?」
「なんでそうなるのよ……。あなた、自分の事過小評価しすぎじゃないの?」
あまり考えもせずに答えを伝えると、アリアが溜息に交じりに呆れた表情を向けてくる。
意外とこいつからは高い評価を貰えているのかもしれない。
「じゃあなんなんだ?」
「もう少し自分で考えようとしないわけ? そんなにお姉ちゃんの事に興味がないの?」
「いや、そういうわけじゃないけど……」
別にアリスさんの事に興味がなくて考えないわけではない。
ただ、こういうのは人の感情が関わっているのであって、正しい答えなど本人か本人から聞いた人間しかわからないのだ。
決まった答えがない以上どれだけ憶測を立てても正解には辿り着けない可能性が高い。
それなら答えを知っている本人から聞いたほうがいいと思う。
「もしかして、私の話だから適当に答えるわけ?」
そうしていると、何を勘違いしたのかアリアがシュンと落ち込んだ表情をする。
まさかこいつがこんな表情をするとは思わなかった。
いつも着丈に振る舞っていてとても偉そうにしている奴なのに、一緒にいる事が多くなってから本当に意外な一面を見る事が多い。
こんな態度を取られると、落ち込んだ時の咲姫と重なってしまってどうしても優しくしたくなるのだ。
「そんな事はないよ。ただ、考えてもわからなかったってだけだから」
シュンとしたアリアを慰めるように、俺は優しい声を出してアリアの頭に手を伸ばした。
そして優しく頭を撫で始めたのだけど――硬直したアリアを見て、俺は遅ればせながら自分がやらかした事に気が付く。
どうして俺は相手が咲姫でもないのに自然と頭を撫でてしまったのか。
いくら咲姫と重なって見えたとはいえ、相手は咲姫ではないのだから同じように接したら駄目なのに……。
そういえば、初めて咲姫の頭を撫でた時もほぼ無意識に頭を撫でてしまっていた。
なんでこういう事をしてしまうかな……。
後悔先に立たずという言葉がある通り、もうやってしまった事は後悔したところでもうどうにもならないのだけど、やはり俺は後悔をしてしまう。
しかも相手はアリア。
頭を撫でた事でセクハラだなんだと言って変な脅しをかけてきかねない。
俺は黙って俯いてしまったアリアの顔を恐る恐る覗き込んでみる。
すると――
「えへへ……」
――俺の予想とは反して、だらしない笑みを浮かべていた。
てっきり怒りを溜めて俺にどう仕返しするか考え込んでいると思っていたのに、想像もしていなかった笑顔を見せられてしまい俺は思わず固まってしまう。
というか、不意打ちだったせいか、いつものギャップからかはわからないけど、アリアの事がとてもかわいく見えてしまった。
絶対こんな事、こいつに対しては言えないのだが。
さて、どうしよう?
こんなかわいい表情を見せられたら撫でるのをやめたくない気持ちになってしまう。
アリアもアリアで頭を撫でられて嬉しいのだろうし、特段止めてくる気配もない。
そういえば、前にアリスさんがアリアの事を甘えん坊と言っていたけど、こういう一面があると知っていたのだろうか?
いや、本当……こう見るとアリアはツンデレに見えて、かわいいよな……。
普段生意気な分デレッとした表情のアリアがかわいく見えてしまい、俺は彼女の頭を優しく撫でながらその表情を至近距離から見つめてしまった。
そのせいか、背後に音も立てず忍び寄った気配に気付く事が出来なかった。
「――随分と楽しそうだね、カイ」
「――っ!?」
耳元でいきなり声がして慌てて振り返ったら、とても素敵な笑みを浮かべるアリスさんが立っていた。
言葉が流暢な事で本気モードになっているようなのだけど、全身から殺気のようなものが見えるのは俺の訓練のたまものなのだろうか?
「カイ」
「は、はい!」
「これ、食べるよね?」
素敵な笑みを浮かべるアリスさんは、手に持っているお皿からクッキーを一摘まみし、俺に向けて差し出してくる。
まさか、毒が入っているんじゃないよな……?
アリスさんの雰囲気的に毒を盛られていても不思議じゃない。
だけど無言の圧力が断る事を許してくれそうになかった。
「い、頂きます」
俺はアリアの頭を撫でる事をやめ、アリスさんからクッキーを受け取ろうと右手を伸ばす。
しかし、クッキーを掴もうとした瞬間アリスさんがヒョイッとクッキーを引いてしまった。
「えっと……?」
「食べさせてあげる」
「えっ……」
「あ~ん」
アリスさんは口を開けろと言わんばかりに『あ~ん』と言ってきながらクッキーを俺の口に伸ばしてくる。
一瞬『いいのか?』と思ったけど、アリスさんの後ろにいる青木先生が『逃げたらわかっていますよね?』みたいな顔をしていたので、俺はそのままアリスさんにクッキーを食べさせてもらう事にした。
その時にクッキー以外の物にも舌が当たってしまったけど、こればかりは仕方ないだろう。
アリスさんは頬を赤くしながらその指を見つめていたけど、何を考えているのか俺は気にしないほうが身のためだと思うのだった。