第235話「一発打開の策」
新作ハイファンタジー『落ちこぼれ魔法使いの成り上がり』を公開致しました!
舞台は魔法学園になります(*´▽`*)
魅力的なヒロインも出てくる予定ですし、わくわくどきどきと楽しんで頂ける話にしますので是非とも読んで頂けると嬉しいです(/・ω・)/
後書きの下ら辺にある『落ちこぼれ魔法使いの成り上がり』をクリックして頂くと作品ページに飛べると思います!
「二人が頑張っていたのは知ってるけど……でも……」
雲母は何か思うところがあるのか、龍の言葉に対して難色を示す。
そしてチラチラと俺に視線を向けてきた。
それで龍は雲母が何を考えているのかわかったのか、納得したように頷く。
「色々と酷い事をしていたのに、アリアさんばかりがいい思いをした事に納得がいきませんか?」
龍の質問に今度は雲母が小さくコクリと頷いた。
要は雲母はいじけているという事か。
アリアばかりがいい思いをしたという事には疑問があるが、雲母には納得がいかなかったらしい。
「別にいい思いなんてしてないし」
「ふ~ん、はぁ、そうですか? そうなんですねぇ?」
二人の会話に納得がいかなかったらしきアリアが口を挟むと、雲母が目を細めて疑うような目でアリアに反応する。
どう見ても煽っているようにしか見えなかった。
どうやら完全に二人は犬猿の仲になってしまっているらしい。
二人を仲良くさせるのは無理じゃないだろうか……?
混ぜるな危険の二人が言い合いを始めてしまい、どうするべきか判断に迷った俺は龍に視線を向ける。
すると龍と目が合い、彼は俺との距離を詰めてきた。
「君、他人事みたいな顔してるけど、二人が仲違いしている原因は思いっきり君だからね?」
近寄ってきた龍は、俺にだけ聞こえるよう小さな声で耳打ちをしてきた。
別に他人事のような顔をしていたわけではないが、それよりも少し納得がいかない事がある。
だから俺はそれをツッコむ事にした。
「いや、元々二人は仲が悪かったぞ? アリアなんて雲母の事を目の敵にしていたんだからな」
さすがにそれを俺のせいだと言われるのは納得がいかない。
むしろ二人の喧嘩に俺が巻き込まれたようなものだ。
しかし、龍は俺の言葉を否定するように首を横に振った。
「でもさ、西条さんのほうはアリアさんの事を許してたんだよね? それなのにどうして彼女は今アリアさんと喧嘩をしているのかな?」
「それが俺のせいだと?」
「心当たりがないとは言わせないよ」
「……そうだな」
正直言うと、心当たりはある。
雲母が俺を異性として好いてくれている事は知っていた。
だからその気持ちを考慮すると、俺がアリアを抱きしめたりしていたのが雲母の怒りを買ったという事だ。
先程言っていたいい思いとは、俺に抱きしめられる事が雲母からすればいい思いという事なのだろう。
……自分で言っていて恥ずかしくなるが、事実がそうなのだから仕方がない。
「さて、この状況を一発で解決出来る方法があるんだけど、どうかな?」
さすが龍といったところか。
コミュ力に優れている彼は、あの犬猿の仲である二人を仲良くさせる手段を持ち合わせているらしい。
「その方法とは?」
「君が西条さんを抱きしめれば済む話だ」
「はっ……?」
提案された内容がおかしすぎて思わず耳を疑ってしまった。
だけど龍は真剣な目で俺の顔を見つめてくる。
「言い方はちょっと幼稚だけど、西条さんはアリアさんにやきもちを焼いているだけだ。同じように君に抱きしめてもらえば彼女はアリアさんを流してくれると思う」
「まぁ冷静な雲母ならアリアを取り合わないとは思うが――ほんとうにそれで機嫌が直るのか?」
「あぁ、大丈夫だと思うよ」
「ちなみに、実際に実行した場合今日俺は複数の女の子を抱く最低野郎になってしまうのだが?」
「今更だよね?」
人が懸念している事を笑顔でバッサリと切り捨ててくれる龍。
あれだな、意外とこの男言う事に容赦がない。
事実今更なのだが……。
おそらくアリア親衛隊の中では俺は女たらしのクソ野郎になってしまっているだろう。
おかげでさっきから向けられる視線が痛くて仕方がない。
ここで雲母を抱きしめてしまえば更に視線は痛くなるだろうが、結局は痛いのだから変わりないと龍は言いたいようだ。
「雲母怒らないかな……?」
「喜ぶと思うけど?」
「いや、ほら、俺汗だくだし……」
「大丈夫だよ」
どこから来るんだその自信は?
普通汗だくの男に抱き締められたら嫌だろ?
……でも、確かにアリスさんは嫌がった様子はなかったため、龍の言う通り大丈夫なのかもしれない。
とはいえ、なんで俺は女たらしのクソ野郎みたいな事ばかりしないといけないのか。
自分で自分が嫌になってくる。
「――まぁ、アリアさんの反応が読めないけど、どっちみち矛先は西条さんから海斗に変わるから問題はないはず」
「……えっ? 今なんか言ったか?」
一人考え事をしていたせいで、龍が呟いた言葉を聞き逃してしまった。
しかし龍は笑みを浮かべるだけで何も答えない。
その笑顔が逆に怖いなと思ったが、アリアと雲母の言い合いがヒートアップしだしたため俺は雲母の元へと向かうのだった。