第204話「本当、馬鹿だよな」
ネコクロ新作『ゲーム初心者の幼馴染みがチート級の幸運を持っていた件について』公開しました!
ジャンルは【VRゲーム〔SF〕】です!
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――一回目の分岐点、テスト勝負で思い通りの結果を得られなかったアリアは数日間荒れていた。
しかしそんな彼女を落ち着かせたのはお付きのお嬢様たち。
伊達にアリアと一緒にいたわけではないようで、アリアが暴走を始める前に彼女たちはちゃんとアリアを落ち着かせられたようだ。
正直このままアリアが暴走してくれる可能性も期待してなかったわけではないが、やはりそこまで自分に都合よく世界は回ったりしない。
それどころかアリアはちゃんと切り替えて積極的に生徒たちへと関わり始めた。
皆最初は戸惑いを持っていたものの、アリアが友好的な姿勢を見せるようになった事と、例えアリアと仲良くしても雲母は怒らないという事を予め宣言しておいたおかげか、アリアに対して好意的に接する生徒たちが出てきている。
当然アリアは裏では物を使って買収をしているのだが、前と同じように俺は指摘をするつもりはない。
むしろ本当に思い通り動いてくれていて助かっているくらいだ。
アリスさんとは違って俺はアリアの心の中や細かい考えなどを読む事は出来ないが、それでも段階が進んでいけば見えてくるものがある。
あいつが取る行動から何を考えているのか、自然と読み解け始めていた。
ただ、段階が進むにつれてわかる事はそれだけではない。
アリスさんが味方につかないだけで、どれだけアリアという少女が無謀で無茶苦茶な少女なのかが露わになっていたのだ。
ちゃんと方向修正が出来る奴がいないせいで、アリアは間違った方向に完全にアクセルを踏み続けていた。
アリアのお付きたちはアリアを落ち着かせる事は出来ても、あいつの考え方自体には口を挟めていない。
どれだけ優秀そうな人間が周りにいようと、たった一人が思案から決定までをしてしまったら、一度道を踏み外した時修正を出来るはずがないんだ。
もしアリスさんがアリアの味方についていたのなら、物での買収など絶対に止めた事だろう。
いや、そもそも今回の賭けの対象から雲母を外させなかったはずだ。
例え外させてしまった場合は、先程言った通り物での買収は絶対にさせないだろうな。
今俺に見えているアリアが絶対に打つであろう手――いや、この状況では打つしかない手は、物での買収をしている事が足を引っ張る事になる。
どうしてあいつは自分で自分の首を絞めるのか。
おそらくは変なプライドが邪魔をしているのだろうが、このまま物での買収を続けるのなら結果は目に見えている。
プライドを持つ事は大切だが、不要なプライドはただの足枷にしかならないという事をあいつは早く気付いたほうがいい。
まぁ俺は、そこまで面倒を見てやるつもりは無いが。
アリアが行動する裏で、俺もしっかりとトレーニングを積んでいた。
上限が一切ないのか、日に日に訓練の厳しさは増し続ける一方。
今ではもう、家でエロゲーをする体力は残っていなかった。
今でさえ気を抜けば倒れてしまいそうなくらいに疲弊をしている。
アリアに悟られないよう平然とした態度を取り続けてはいるが、正直今すぐにでも保健室に行って寝たかった。
しかしそんな事も言っておられず、期日も近付いているため俺は気を引き締めてトレーニングに臨む。
後半はもう完全に対アリアを見越した模擬トレーニングに入った。
相手はマリアさんではなく青木先生だ。
アリアの動きを完全に真似をするなら、今までアリアの傍を離れていたマリアさんより、いつもアリアの相手をしている青木先生のほうがいいとの事だった。
ただ、モーションはアリアそのものでも、速度は数段速くしているとか。
これで目が慣れればアリアの技は完全に受け流せるようになるらしい。
――そうして俺は、アリアがクラスメイトたちを引き込んでいく状況を確認しながらトレーニングに励んだ。
アリアのほうは実に順調に交友関係を広めていく。
チラッと俺に向けてきたアリアの顔は勝ちを確信するかのように笑みを浮かべていた。
現状で言うと八割くらいのクラスメイトがアリアの事を仲間として認めているような素振りを見せている。
少なくとも、アリアとの友達としての会話は行われるようになっていた。
残りの生徒たちは物の買収では動かない生徒たち。
今まで雲母の傍に居続けた生徒たちだ。
アリアがどれだけ好条件を出そうと、彼女たちにとっては雲母のほうが大切になっているという事だろう。
雲母が許していたとしても、自分たちは雲母の味方だと主張しているのだ。
そこには打算も含まれているが、雲母に対する信頼が大きな要素を占めているんだと思う。
だがしかし、先程のアリアの表情を見るに、彼女たちを取り込む方法も既に準備されているわけだ。
そしてその方法にアリアは絶対的な自信を持っている。
……………………本当、馬鹿だよな。
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