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第201話「無防備な姿」

 誰にも見られない体育館裏に移動した俺は、早速雲母に膝を貸していた。

 帰りのホームルームには顔を出す事が出来なさそうだが、まぁその辺はポンコツ教師が担任だからどうとでも誤魔化せるだろう。

 最悪何か一つ言う事を聞くって言えば、喜んで誤魔化されてくれるはずだ。


「これでいいのか?」


 俺は、嬉しそうな笑顔を浮かべて俺の膝に頭を乗せている雲母に声を掛けてみる。

 膝を貸しただけでこんな嬉しそうにしてくれるなんて、正直嬉しいと思ってしまった。


「膝枕って、頭を撫でる事までが一セットでしょ?」


 雲母は俺から聞いて来るのを待っていたかのように、ニヤッと口元を歪めて要求をしてきた。

 どうやら頭も撫でてほしいらしい。


「そんな言葉初めて聞いたんだが……?」

「じゃあ、アリスに膝枕してもらう時も頭を撫でられてないの?」

「…………」


 いつも膝枕をしてくれる時はアリスさんに頭を撫でられていたため、俺は返す言葉がなくソッと雲母の頭を撫でた。

 下手に言い訳をするよりは、素直に彼女の要求を呑んだほうが身のためだと思ったのだ。

 優しく丁寧に頭を撫でると、雲母は『ふぁっ……』と気持ち良さそうな声を漏らした。

 頭なでなでがお気に召したようだ。


 こんな状況を誰かに見られれば、多分地獄が待っているのだろう。

 咲姫に見つかれば絶対にめちゃくちゃ怒られるし、アリスさんに見つかれば二人きりの時にからかわれるネタにされかねない。

 春花に見つかった場合はまたややこしい事になるだろうし、桜ちゃんに見つかっても怒られてしまうかもしれない。

 昔桜ちゃんには、『女の子を勘違いさせる行為はだめ……!』って怒られた事があるからな。

 膝枕に頭なでなでなど、桜ちゃんの基準では完全にアウトだろう。


 他の生徒たちに見つかったとしても、きっと話題の種にされるだろうから全員の耳に入る事になる。

 だから、誰一人として見つかるわけにはいかない。


 ――まぁそろそろ帰りのホームルームが始まる頃だし、誰一人として体育館裏になどはこないだろうが。


「「…………」」


 しばしの間、俺たち二人は無言になって頭なでなでをしていた。

 無言というと気まずい雰囲気が思い浮かぶかもしれないが、今は不思議と気まずさなんてない。

 むしろこの時間は居心地がよかった。

 最初の頃こそかなり問題児だった雲母だが、今では数少ない俺が心を許せる相手になっている。

 誤魔化さずに正面から向き合っていたからこそ、信頼出来る仲になれているんだろう。


 ほんと、ボッチのオタクが金髪ギャルと仲良くなるなんて、漫画やラノベだけの話だと思っていたのに世の中わからないものだ。

 挙句今では三大財閥全部のご令嬢と縁があるなんて、漫画にしても出来すぎている。

 まぁ紫之宮財閥のご令嬢に関しては顔を合わせた事がある程度だが、龍と仲良くしていればきっと今後も関わっていく事になるだろう。

 俺のほうだけかもしれないが、龍とは今後も仲良くしたいと思っている。

 龍は、男友達の仲で一番信頼出来る相手だからな。


 白兎は――とてもいい奴だけど、男の()だから男友達には纏めずらい。

 そんな事を白兎に言えば絶対怒るだろうけど、見た目が女の子なのだから仕方がないだろ。


 ……そういえば、カミラちゃんの事は大丈夫なのだろうか?


 白兎の事を考えていて、カミラちゃんに対して性別を誤魔化している事を思い出した俺は、白兎の事が心配になってきた。


 未だに騒ぎが起きていないから誤魔化し続けられているのだろうけど、それもいつまで続く事やら。

 まぁ世渡りが上手い奴だし、あまり心配はいらないのかもしれない。

 助けを求められればもちろん手を貸すつもりだが、今はアリアの事で手一杯だから、せめてこちらのケリがつくまでは待ってほしいものだ。


「――眠く、なっちゃった……」


 別の事に意識を取られていると、膝に頭を乗せている雲母がウトウトとし始めていた。

 まだ九月のため、ポカポカとした居心地のいい温かさで眠くなってしまったのかもしれない。

 ここ最近はテスト勉強もあったから、あまり寝れていなかっただろうし。


 それにしても……雲母がここまで無防備を晒すのも、きっと俺だけなのだろうな……。


「いいよ、少し寝てて。この後も予定があるからあまりゆっくりは出来ないけど、移動しないといけない時間になったら起こすから」

「んっ……ありがと……」


 俺が許すと、雲母はゆっくりと目を閉じた。

 数十秒時間が流れると、スヤスヤと寝息が聞こえてくる。

 どうやらもう寝てしまったようだ。


 この子の事に関しても、まだ色々とやらないといけない事が残っている。

 西条社長との約束もそうだが、朝比奈さんと仲直りさせてあげる事が出来ていない。

 アリアとの事が終われば、そちらもちゃんと動かないといけないだろう。


 ――俺は雲母のかわいらしい寝顔を眺めながら、改めて自分がやらないといけない事を認識し、気合を入れるのだった。

いつもお読みいただきありがとうございます(*´▽`*)


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