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第199話「答え合わせ」

『ボチオタ』2巻の発売が丁度一ヵ月後に迫りました(/・ω・)/!


予約がまだの御方は、書店さんで手に入りづらい可能性も考えられますので、是非とも予約して頂けると幸いです!


『ボチオタ』2巻の表紙絵も後書きの下くらいに貼り付けましたので、是非とも見て頂けると嬉しいです(*´▽`*)


一巻をまだご購入されていらっしゃらない御方がいれば、この機会にお手に取って頂けると幸いです!

 アリスさんが何を狙っていたのか――それは、上位百名のテスト順位が発表された時にわかった。


 結果自体に関しては、咲姫が離脱した時点で大方の予想通りアリアが一位を取るという形で終わった。

 それどころか、上位十名中九名は転校生――つまり、お嬢様学園から転校してきた奴等が入るという驚異的な結果だった。


 アリスさんを除いてお嬢様学園出身で上位十名に入らなかったのは、俺がアリアに勝負を挑みに行った時終始おどおどしていた女の子だ。

 だが彼女でも十一位になっている。

 事前に彼女たちの学力を知っていた俺はこの結果を予想はしていたが、他の生徒たちからすれば戸惑うのも当然だ。


 今まで咲姫に続いて二位をずっと取り続けていた生徒なんて、順位発表の紙の前で発狂している。


 だけどそれ以上に驚く出来事があった。

 それは――二位の名前欄に、『西条雲母』という名前が書いてあった事だ。

 点数差はアリアとたったの四点差。

 

 この学園の生徒からすれば、それがどれだけ異常事態な事か。

 西条雲母といえば、テスト順位で底辺を争うような生徒。

 そんな生徒がいきなり二位を取れば、生徒たちの話題は予め一位を取ると予想されていたアリアの事よりも、底辺から二位まで急上昇した雲母の事で持ち切りとなる。

 これは元々雲母がこの学園で有名だった事や、影響力が高かった事も関係しているのだろう。


「なるほど……これが、アリスさんが言っていた『勝つ事が全てじゃない』という事ですか……」


 生徒たちから離れた位置で様子を見ていたアリスさんに、俺は声を掛けた。


「一応……答え合わせをする……?」

「そうですね。あなたが雲母に勉強を教えた理由――それは、アリアに勝つためではなく、底辺から一気にアリアと競えるほどの順位にあげる事で、注目を集めようとしていたアリアの狙いを遮ったんですね? おそらくは、咲姫がアリアに負けた時の保険といったところでしょうか」


「うぅん……微妙に……違う……?」

「あれ、違うのですか?」

「おしい……かな……? アリスは……アリアが負けるとは……思っていなかった……。でも……甘えん坊が……負けるとも……思っていなかった……。そうなると……どっちみち……アリアの話題性は増す……。話題性が増すという事は……あの子に注目する子が増えてきて……君の後々の負担が……高くなる……。だから……そうならないための……金髪ギャル……」


 アリアと咲姫、両方が負けるとは思わなかった――それはつまり、両方が満点を取るという事だったのだろう。

 現にアリアは今回のテストで満点を取っている。

 咲姫に関しては絶対にではないが、今までのテストのほとんどで全教科満点を取っていた。

 だからアリスさんは両方が一位を取ると思っていたのだろう。


 しかし、甘えん坊か……また変なあだ名を付けられたものだ。

 一つ怖いのは、咲姫が学校で素を出し始めてからも、一応極端に甘えてくる事はやめてくれているのに、アリスさんがこんなあだ名を付けた事だ。

 咲姫との事でさえ、この人は見通している気がして怖い。


「だけどアリスさんも人が悪いですね。ない才能を伸ばせないとか言っていたくせに、きっちりアリアと勝負が出来るくらいまで雲母の学力を伸ばしていたなんて。その言葉がなければ、結果が出る前にこの答えに辿り着けたかもしれませんのに」

「それも……ヒントだった……。アリスがその事を言った時……もう一つ……教えたはず……」


 もう一つ教えてくれた事……?

 確かあの時言っていた事は、先入観は時に簡単な見落としを引き起こすって事だったか……?


 その言葉とアリスさんの言葉を結び付けるなら――。


「雲母は、元々勉強が出来る人間だという事ですか? それなのに、雲母がいつもテストで最下位争いをしていた事で、俺が勝手に勉強が出来ないと決めつけていたと?」


 でもそれは、本当に決めつけなのか?

 確かに最下位争いをしている人間をたった一週間足らずで二位まで引き上げた事のほうがありえないかもしれない。

 だけどアリスさんならやりかねない気がする。

 むしろ俺からすれば、元から雲母の成績がよかったというほうが信じがたい話だ。


「あの子はテストで……わざと手を抜いていた……。どうしてそうしたかは……まぁなんとなくわかるけど……馬鹿な思い込み……」

「手厳しいですね」


 いつも素っ気なくても、本当は優しい彼女にしては随分と辛辣な言葉。

 だから俺は思わずツッコんでしまった。


 すると、チラッとアリスさんが俺とは別の方向に視線を移す。

 俺がその視線につられて廊下の曲がり角を見ると、金色の髪と黒色の髪が見えた。


 アリア――だとすればこんな会話をアリスさんがするわけがないから、多分雲母が隠れて俺たちの会話を聞いているのだろう。

 となると、もう一人は咲姫か?

 二人していったい何をしているんだか……。


 でも、アリスさんがわざと厳しい言葉を使った理由がわかった。

 盗み聞きをしている雲母に対して、『もうするな』と釘を刺したのだ。


「カイは……どうして金髪ギャルの事を……勉強が出来ないと……思い込んでいたの……?」

「えっ……それは、あいつが入学した時からずっと最下位争いをしていたのと、授業とは関係ない本ばかりを読んでいて、授業をまともに聞いていなかったからですが……」


 むしろその条件で勉強が出来る奴なんて天才でもいない。

 インプットがなければアウトプットが出来るはずがないのだから。


「そこに……彼女は元々……アリスたちの学園にいたという情報を……足すと……?」

「あっ……確かにおかしいですね……」


 今回の結果を見てわかる通り、アリスさんの学園では勉強に凄く力を入れている。

 そして、幼稚園から大学までエスカレータで一貫されている事を利用して、授業スピードも桁違いに早いと聞いた。

 雲母がいた中学三年生の段階では、高校の範囲を半分くらいは網羅しているのではないだろうか?


 何より、外国との交流が当たり前となっている昨今では英語が必要不可欠。

 だからアリスさんがいた学園では、小学生の段階で誰一人例外なく全員が英語をマスターしていると聞く。

 それなのに、どうして雲母は英語でも最低点を取っているんだ?

 普通に考えればおかしいじゃないか。


「気付いた……? あの子は……前の学園では……アリアとずっと……テストで競っていた……。高校でまともに……授業を聞いていなかったのは……本当だろうけど……元が出来ているのなら……この学園レベルのテストくらい……上位を取らせてあげられる……」


 いくら元が出来ているとはいえ、暗記科目に関しては覚え直しだろうし、そもそも習っている歴史が変わっている事もある。

 何より、授業を疎かにしていた間に大きなブランクが出来ている。

 アリスさんが言っているほど簡単な事じゃなかったはずだ。

 アリスさんだからこそ、短期間で雲母をここまで鍛えられたんだと思う。


「アリスさんは本当に凄いと思います。それに比べて……そんな簡単な事を見落とすなんて、俺は駄目すぎますね……」

「元々君は……あの子の出身校などは……知らなかった……。だから当初は……疑わなかったんだろうね……。まぁでも……アリスが出身校などを教えた時……この矛盾には……気が付かないといけなかった……。少なくとも……アリスが……金髪ギャルに……勉強を教えていると言った時には……。君がどうして……その矛盾に気が付けなかったか……わかる……?」

「それは最初に言われた先入観のせいじゃないですか?」

「そうだけど……違う……。君が……金髪ギャルの出身校という情報を……(かろ)んじていたからだよ……。だから……誤った先入観を……消せなかった……」


 アリスさんの言う通り、雲母がアリスさんたちと同じ学園にいたという事を、俺はそこまで気にしていなかった。

 いや、情報としては頭に入れていたけど、そこまで深く考えなかったのだ。

 でも、それは当たり前じゃないのか?

 必要不必要の情報はわけ、優先順位を付けて処理をする。

 そうしなければ、それこそ大事な事を見落とす。


「情報は……命……。思わぬところに……重要な情報が落ちている事も……ある……。カイの長所はまた違うから……全ての情報を取り入れろとは……言わないけど……アリスや……クロに並びたいのなら……少なくとも……身近にいるこの子とは……もう少し入れておく事……。そうしないと君は……必要な時に……力になれない……」


 なんというか、本当にこの人には敵わないな……。

 俺にとって一番大切な事が、身近にいる人たちの幸せだという事を理解しているからこそのアドバイスだ。

 彼女やクロと肩を並べられる時がくるのだろうか……。


「わかりました、以後気を付けます」

「うん……素直で……よろしい……」


 アリスさんは優しい笑みを浮かべて言うと、俺の頭に手を伸ばしてきた。

 そして、『よしよし』と頭を撫で始める。


 この人が頭を撫でてくるのは相変わらずで、嬉しくはあるのだが――雲母たちがいる曲がり角から、ゾッとするようなオーラを感じた。

 でもここで退くとアリスさんが拗ねる。

 八方塞がりとはまさにこの事だ。


「……手……疲れた……。やっぱり……膝枕が一番……」

「ア、アリスさん、もしかしてわざとやっていますか……?」


 まるで雲母たちを煽るように発された言葉に、俺は血の気が引く。

 なんせ、普段声が小さいはずなのに、今の声だけは大きめに発されたからだ。

 完全に意図的に出された声としか思えない。


 ……後、寒気が止まらないくらいに怖い圧力を壁側から感じる。


「まぁこれくらいしないと……あの子は動かないから……」

「えっ?」

「なんでもない……。それよりも……金髪ギャルが頑張ったのは……カイのため……。だから……ちゃんと労って……あげるんだよ……?」


 アリスさんは背伸びをして俺の耳元で小さな声でそう言うと、そのまま雲母たちが待ち構える角とは別方面へと歩いて行った。


 確かにアリスさんの言う通り雲母にはお礼を言わないといけないが――アリスさんについて行かなかった事を、俺は凄く後悔した。


 なんせ――

「か、海君、少しお話がしたいなぁ……?」

「ちょっとそこの校舎裏にいこっか、海斗」

 ――この二人を俺一人で引き受ける事になるのだから……。

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[一言] ハーレムやろうなんてもっと苦労すればいいんだ。 アリス様不憫すぎ説
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