第184話「妹との話し合い」
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「…………俺たちも、帰ろっか?」
断末魔みたいな声を上げて連れて行かれたカミラちゃんを見届けたあと、隣に立つ桜ちゃんに声をかけた。
「うん!」
桜ちゃんは先程の光景を見ても何も思っていないのか、元気よく頷いて俺の腕へと抱き着いてきた。
その際に凄く柔らかい感触が右腕を包む。
俺はなるべくその感触を意識しないようにしながら、先程の衝撃的な光景を思い返していた。
ほんと、青木先生って神出鬼没だよな……。
――って、そうだ。
色々とあって忘れかけていたが、桜ちゃんに話があったんだった。
話がある事を思い出した俺は、足を止める。
すると、桜ちゃんがキョトンっとした表情で不思議そうに俺の顔を見上げてきた。
「桜ちゃん、ちょっといいかな?」
「うん?」
声を掛けると、やっぱり桜ちゃんは首を傾げながら俺の顔を見てくる。
いつも通り、ジーっとこちらを見つめている感じだ。
さて、どう切り出そうか?
変な言い方をして、怒ってると思われたくないし……。
でも、実際怒りたいのは怒りたい。
桜ちゃんがした事は、軽い気持ちでしていい事ではないのだ。
一度約束してしまったものは仕方ないが、今後このような事をしないように注意しておきたい。
どう言えばいいのだろうか?
「……ごめんなさい」
「え?」
頭を悩ませていると、なぜか急に桜ちゃんが謝ってきた。
その様子はシュンっとしていて、まるで怒られているかのような態度だ。
「ちょっ、え? どうしたの?」
「お兄ちゃん、怒ってるよね……?」
おいおい、嘘だろ……?
俺まだ何も言ってないんだぞ?
どうして怒ろうとした事がバレたんだ?
もしかして、表情から察したのか?
いや、そんなあからさまに怒っているような態度は見せていないはずだ。
じゃあどうしてこの子はわかったんだ?
…………相変わらず、この子は底が知れないな……。
時々見せる妹の計り知れない才能に戸惑いながらも、俺は首を横に振りながら口を開く。
「別に怒ってないよ。ただ、桜ちゃんに聞きたい事があるんだ」
なるべく優しい声を意識して、桜ちゃんに話し掛けた。
怒りたいといっても、怒鳴ったりしたいわけではない。
もう同じような事をしないように、注意したいだけなんだ。
怒られてると思われると、委縮させてしまって伝えたい事が届かない場合だって多い。
だから、ちゃんと会話をしようと思った。
……別に、桜ちゃんが可愛いから怒りたくないとか、そんなんじゃない。
……うん、そんなんじゃないからな?
「聞きたい事って、アリア先輩の事……?」
やはりこの子は察しがいい。
俺が何を聞きたいのかまでを理解している。
それに多分、この子もわかっているんだ。
アリアが持ち掛けた話に乗れば、俺が怒る事を。
それでも話に乗ったという事は、この子なりの考えがあるはずだ。
まずはそこを聞いて、理解する必要がある。
「うん、そうだよ。どうして、自分を賭けるような事をしたんだ? 桜ちゃんにメリットなんてないだろ?」
「そうだね……」
俺の言葉に桜ちゃんは頷いた。
この反応を見るに、何か見返りがあったというわけでもなさそうだ。
桜ちゃんは一度目を閉じたあとすぐに目を開き、俺の目を見つめてきた。
そして小さな口をゆっくりと開く。
「桜はね、お兄ちゃんを信じてるの」
桜ちゃんが発したのは、なんとも予想外な言葉だった。
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