第169話「漫画のような屋敷」
「着いたか……」
俺は目の前にある、自分の身長よりも遥かに高い門を見上げた。
中がどんなふうになってるかは、一切わからない。
門以外の部分は、塀で囲まれているからだ。
ここが、雲母の家か……。
想像はしていたが、思ったよりも大きいな……。
今俺が見渡せる範囲は全て塀がある。
つまり、最低でも塀がある部分は全て、西条家の土地というわけだ。
どうして俺が雲母の家に来たのか?
実は、昨日久し振りにKAIのサイトを開いた俺は、ある会社にメールを送っていた。
そのある会社というのが、西条財閥が経営するシステム会社だ。
返信はすぐに来た。
もちろん、俺の望む答えを用意して。
俺が連絡した相手はきちんと要求通り西条社長に取り次いでくれ、話はスムーズに進み、今日直接会う事になった。
普通なら絶対に取り次いでもらえない相手に取り次いでもらえたり、ここまで話がスムーズにいったのは、向こうにとってKAIにそれだけの価値があるという事だ。
次の日に会うというのは急ではあったが、あちらはなるべく早く会いたいと言っていたし、俺もなるべくアリアとの事に集中したかったから、都合がよかった。
俺はスマホからKAIのサイトを開いた。
そして、西条社長のメールアドレスに直接メールを送る。
俺がKAIだという事を証明するのに一番手っ取り早いのが、このサイトからメールを送る事だからな。
あちらも、KAIのサイトならセキュリティ万全で、ハッキングなどされてないと信用してくれている。
――程なくして、門が開いた。
開いた門の向こう側には、一人のメイドさんと黒色のリムジンが控えていた。
「お待ちしておりました、KAI様。さぁ、こちらのリムジンにお乗りください」
驚きはなしか。
KAIが学生だと知れば、多少なりとも驚くと思ったが……。
KAIの事をよく知らないのか、それとも学生だと知っていたのか。
おそらく後者だな。
門や塀の周りにはいくつもの監視カメラが付いている。
門の前でスマホを取り出し、西条社長にメールが届いた時点で、俺がKAIだとわかったという感じか。
「敷地内なのに、リムジンに乗るんですね?」
「はい、敷地内と申しましても、この辺りは見ての通り庭になっておりまして、屋敷に歩いて行くとなると時間がかかってしまいます」
本当、金持ちだな……。
なんのためにそれだけ広い庭がいるんだよ。
見れば、ドーベルマンも多数いるし。
なんだ?
俺は漫画の世界にでも潜り込んだのか?
あまりに現実離れした雲母の屋敷に、俺は思わずツッコミを入れたくなる。
「――ん?」
辺りを見回してると、門の先に見知った女の子を見た気がした。
金髪の、俺がよく知る女の子が。
「お乗りにならないのですか?」
「あ、いえ、乗ります」
不思議そうに見つめるメイドさんに慌てて答えた後、もう一度門の外を見れば、そこには誰もいなかった。
気のせいか?
……まぁ、そうだよな。
今のあいつがこの家に近付くわけないか。
きっと、外国人の女の子をあいつと見間違えただけだろう。
そう結論付けた俺は、メイドさんに案内されるままにリムジンへと乗り込むのだった。
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