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第157話「ゆさぶり」

 俺は一度周りを見渡して、状況を確認する。

 

 この場にはアリアのお付きたち以外にも九条君、それに多くの生徒がいる。

 そしてその生徒たちの視線は全て、俺とアリアに集まっていた。

 先程まではざわついていたのに、今は誰一人、声を漏らそうとしない。


 桜ちゃんにお弁当を作ってもらうまでは俺も食堂を利用していたが、これ程までに静かな食堂は初めてだ。


 全員が、俺とアリアの会話に耳を傾けている。

 人の話を盗み聞きするなと言いたい所が、全員アリアが気になるのだろう。

 仮にもアリアは、日本中に名が知れている有名人だからな。


 雲母がいないクラスに転入していれば、アリアに付き従う生徒も出てきた事だろう。

 いくら雲母の存在がこの学園では大きいとはいえ、既に凄腕女子高校生社長として名が売れてるアリアと、日本三大財閥のご令嬢でしかない雲母なら、誰が見てもアリア側に付くほうが得だ。


 アリアとの接点が生まれ、雲母の目がつきづらい場所なら、アリアに付かないほうが珍しいとも言える。

 上手くごまをすれれば、将来勝ち組になれる事間違いなしだからな。


 それ程の相手に、ただの学生でしかない俺が喧嘩を売る姿を見たら、俺とアリアの関係を知らない彼らはなんと思うだろうか。


 身の程を知らない馬鹿だ。


 西条の後ろ盾を得て調子に乗ってる。


 転校生に喧嘩を売るろくでもない奴。


 ――そんなふうに見えるのかもしれない。

 でも、周りにどう思われようと関係ない。

 今大切なのは、彼らのような関わりのない他人の気持ちではないのだから。

 それで彼らが俺の事を腫れ物扱いして、少し前みたいに近寄らなくなってもいい。


 それでも、傍に居てくれる子たちを俺は知ってるのだから。

 今の俺にはそれで十分だ。


「――嬉しそうだな?」

 アリアの浮かべる笑顔が歓迎とは真逆の意味だと察している俺は、アリアに皮肉で返す。

「えぇ、嬉しいわよ? わざわざ自分から火の中に飛び込んでくる馬鹿な虫さんが居たから」

 アリアも負けじと嫌味で返してきた。


 突然の俺の変わりように、アリアを除いて、九条君を含めたこのテーブルに座る全員が驚いた顔をしていた。

 何人かは、目を細めて俺の事を見つめだす。

 一人『はわはわ……』っと、こちらが気の毒に思うくらいテンパってる小さな子がいるが、見なかった事にしよう。

 なんだか、毒気が抜かれそうになったから。


 まぁそれはそれとして、こんなのは挨拶代わりだ。

 俺もわざわざ子供みたいな言い合いをしにきた訳ではない。


 ただ、本題に移るのにもタイミングを見なければいけない。

 下手に切り出せば、駆け引きが成立する前に切り捨てられるだろうから。


 それに、他にも気になってる事があるしな。


「確かお前たちの学園からは十二人転校してきたと聞いていたんだが、全員一緒に食べてるわけじゃないんだな? 特に、アリスさんとお前が一緒に食べていないのが不思議だよ」

 とりあえず、俺は当たり障りのない話題から入る。


「別にこれが普通よ。お姉ちゃんと私は、学園ではいつも別だもの。ね、みんな?」

 アリアの問い掛けに、九条君以外のこのテーブルに座る生徒全員が頷いた。

 そして、不知火さんではない別の生徒が代表して口を開く。


「アリア様と違って、アリスさんは一人を好まれます。たまにカミラが一緒に居ますが、基本は教室の隅で大人しく座られておられます」

「あぁ、わざわざありがとうございます」

 丁寧に解説してくれた子に、俺は一応御礼を言っておいた。

 するとなぜか女の子は凄く戸惑った表情をしたが、今はほっておこう。

 それに、アリスさんが前の学園で目立たなくしていた事も、その理由も俺は知っているしな。


「お姉ちゃんはそういう訳よ。私としては、あなたと食べると思ってたけどね……。まぁ、今はそんな事どうでもいいわ。それよりも――ねぇ、カイ。カミラの事は知ってるわよね?」

 カミラちゃんの話題を出してきたアリアは、ニヤっと笑う。

 アリアの表情と話題から、俺は確信した。


 自分の懸念が当たっている事を。


 問題は、どうくるかだな。

 場合によっては、俺のプランが一気に崩される事になる。


 予想でしかないが、おそらく現段階でこいつが持つ手札は多いはずだ。

 転校してくる前に、入念に俺の事について調べてきてるだろうから。

 敵対の意思を露にしているし、容赦なく俺に揺さぶりを掛けてくると思ったほうがいい。


「あぁ、知ってるよ。何度か会った事があるしな」

 俺は言葉を慎重に選びながら、アリアに返事をした。

「昨日ね、そのカミラがこの学園のお友達を家に連れてきたの。不思議よね? まだ、転校してきて一日目だっていうのに」

「一日でそこまで仲良くなれるなんて、いい事じゃないか」


 俺の言葉を聞き、アリアは楽しそうに笑う。

 そして、俺の耳元に口を近付けてきて、小さく囁くように声を出した。


「ふふ、一日かぁ……さすがにそれはちょっと無理があるわよね? 元々この学園にはカミラの仲良しさんが居る事を私知ってるの。桃井、桜。顔は初めて見たけど、可愛い子ね? あなたにとってはよほど大切な妹なんでしょうね」


「だったら、どうする?」

「ふふ、どうもしないわよ。ただ、カミラと仲良しみたいだからこれからも家に遊びに来るだろうし、可愛がってあげようかなって思っただけ」 

 挑発的な笑みを浮かべて、アリアは桜ちゃんの事で脅しをかけてきた。 

 俺にとって桜ちゃんが大切な存在だという事を確信している。

 周りに聞こえないように小声で話してきたのも、俺が桜ちゃんたちと家族になっている事を知られたくないと理解しているからだ。


 要は、ここでそのカードを切らずに脅しの一つにでも使う気なのだろう。

 苗字を変えずに残してたり、家族になったと俺たちが学園で明言していない時点で、一定以上の効果があるとアリアは思ってる。


 俺と咲姫が家族ではなく恋人で見られてる時点で、察しのいいこいつが状況を理解するのにそれほど時間は必要なかっただろうしな。


 ただ、おかげで桜ちゃんについては心配いらないと確信できた。

ボチオタをいつも読んで頂き、ありがとうございます!


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