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第156話「意外な人物からの助け舟」

「アリアと話をさせてもらえませんか?」

 同級生ではあるが、相手が敬語で話してきてる以上俺も同じように敬語で対応する。

 俺の目の前に立つ女の子――不知火(しらぬい)るかは、微笑みを保ったまま目を細めて俺の顔を見てきた。

 

(わたくし)でございましたら問題なかったのですが、アリア様ですか……。残念ながらアリア様はお食事の最中になりますので、出直して頂けませんか? ……いえ、それよりも、神崎さんとアリア様は同じクラスになりますよね? どうして今なのです? わざわざお食事の最中に現れるなんて、いささかマナーがなっていないのではございませんか?」

 不知火さんは優しい声色を保ちながらも、畳み掛けるように痛い所を突いてきた。

 というか、まずい。


 この人、俺が苦手とするタイプだ。


 基本俺は、礼儀正しい相手や優しそうな相手には強く出られない。

 不知火さんはその両方を兼ね備えている。


 何より、彼女が言ってる事は正論だ。

 正論だけで俺の事を言い負かそうとしてきている。

 

 アリアみたいに頭がキレても言葉に裏があるタイプのほうが、それを逆手に取れるため余程やりやすい。

 さて、どうしたものか……。


 正直、彼女の言い分が正しすぎて何も言えない。

 

「――あれ、神崎さんじゃないですか? また一人だけ美少女たちに囲まれてるなんてずるくないですか?」

「九条君?」

 空気が読めていないのか、呑気そうな声で現れたのは昨日から俺の傍を付きまとっている九条君だった。

 彼は笑顔で俺の横に立つ。


「どちらさまでしょうか?」

 突然部外者が現れたため、不知火さんは笑顔を崩さないまま視線を俺から九条君に移した。

「あれ? 神崎さんの言葉が聞こえなかった? 俺の事を九条って呼んだよな? それなのにわざわざ名前を聞いてきたのか?」


 いや、九条君……不知火さんはそういう意味で聞いたわけじゃないぞ?

 遠回しに、俺とどういう関係があって話に割り込んできてるんだって聞いてきてるんだが?


 不知火さん、九条君の言葉に馬鹿にされたと思ってるのか、笑顔が引きつってるし……。


 しかし、これはチャンスだ。

 不知火さんみたいな正論で相手を負かそうとする真面目そうなタイプは、こういう空気が読めない、もしくは話が通じない系が苦手だ。


 …………九条君って、割とその辺まだマシなほうだった気もするというか、結構敏感に感じ取ってくれるタイプだった気がするが……今は、全く空気を読めていない。 

 いや、わざと空気が読めないふりをしてくれているのかもしれない。

 それならば、ここは彼を利用させてもらおう。


 ただ、その前に一つだけ仕込みを入れよう。

 

「すみません、えっと……あ、そういえば名前を聞いてませんでしたね」

 俺は不知火さんが声を発する前に、わざと不知火さんに言葉をかけようとして名前がわからないふりをする。

 こちら側はアリア陣営の情報を一切持ちえてない事をアリアに示めせば、これだけであいつは自分の有利を錯覚するだろう。

 そしてその状況にプラスして自分の信頼するメンバー全員がこの場にいる事で、この場での話し合いなら自分は有利だと思ってくれるはずだ。


「申し訳ございません、自己紹介を(おこた)ってしまいました。不知火るかでございます。以後、お見知りおきを」

「ありがとうございます。それでは僕のほうも一応自己紹介させて頂きます。改めまして、神崎海斗です。以後お見知りおきを。それで不知火さん、先程は失礼致しました。確かに僕の礼儀がなっておりませんでした」

 俺が素直に頭を下げると、不知火さんは驚いた表情をした。

 そして、ゆっくりと口を開く。


「凄く、礼儀がなった御方なのですね。……あ、いえ、申し訳ございません。意外だったもので、つい……」


 彼女の言葉からは、俺に対して持っていたイメージが良くなかった事が伝わってくる。

 まぁ、自分の敬愛する相手に無礼を働いた者なのだから、当然といえば当然か。

 しかし、俺が礼儀正しく接した事でイメージの違いに戸惑ってるみたいだ。


 ……ここだな。


「一つお願いなのですが、僕たちも一緒に食事に参加させて頂けませんか?」

「え?」

 俺の意外な言葉に、不知火さんの動揺は大きくなった。

 しかし、すぐに笑顔に戻る。

 やはり俺一人では押し切れなさそうだな。


 でも、今は一人じゃない。


「おぉ、いいですね! 是非ともご一緒させてもらいましょう! な、いいよな、不知火さん!」

 そう言って俺の言葉に賛同したのは、もちろん九条君だ。

 彼なら俺の言葉に便乗してくれると信じていた。


 なんせテーブルにつくのはアリアを除いても美少女ばかり。

 彼が美少女たちと食事を共にするチャンスを見逃すはずがない、という俺の見立ては間違いじゃなかったようだ。

 

「いえ、しかし……」

 元気の良さと妙な押しの強さを見せる九条君に、不知火さんは若干引き気味になる。

「なんだよ? 同じ学園生なのにだめだって言うのか? 俺たちみたいな庶民とは食事を共にしたくないと言うのかよ?」

「……いえ、そういうわけでは……」


 先程皆の前で俺たちを平等に見ていると言った手前か、不知火さんは痛い所を突かれたような顔をする。

「じゃあ、いいんだな? だって、同じ学園生だもんな」

「いえ、ですが……」


 やはり俺の見立て通り、不知火さんは九条君が苦手なのか、俺を相手にしていた時とは打って変わってタジタジになっていた。

 というか、こう言い方は悪いが、こんな遠慮ない態度をとられるのは初めてなのかもしれない。

 だから対応に困っているのだろう。


 女子だけで食事がしたいとか、断れる理由はまだ他にもあるだろうに。

 多分九条君が入って来なければ、彼女はそう言う理由で俺の言葉を断ったと思う。

 今は、頭が回っていないといったふうに見える。


 皆の視線を集め、女の子ばかりの中でこんなふうに平気で食事に混ざろうとする九条君は凄いと思う。

 俺には出来ない行動だけに、九条君には感謝だな。


 ……若干、不知火さんが気の毒ではあるが。

 この人、本当真面目そうなんだよな。

 どうしてアリアなんかに付き従うのだろう。


 まぁ今はそんな事どうでもいいか。

 劣勢な不知火さんを見て、やっとアリアが重い腰を上げたから。


「うるさいわね……。いいわ、混ざりなさいよ」

 アリアは自分の右側に座る少女に席をずらさせ、メイドに椅子を持ってこさせた。

「来なさいよ、カイ」

「あぁ、悪いな」

 アリアの言葉に従い、準備された椅子へと俺は座った。

 不知火さんは、少し不服そうに自分が座っていた席へと着き直す。


「……あれ、俺の席は……?」

 俺の席はアリアがメイドを使って用意したが、九条君の席は準備されなかった。

 当然、九条君は困惑の声を出した。


 しかし、誰一人として彼の声には反応を示さない。 

 不知火さんを含め、転校生組の視線は全て俺とアリアに集まってるからだ。

 先程まで威勢のよかった九条君は、寂しそうに自分で椅子を持ってきた(ちゃっかり、不知火さんの横に)。


 なんだか凄く不憫だったが、俺も今は彼に気遣う余裕はない。

 なんせ、獲物を狩るような目をした奴が真横で俺の事を見つめているのだから。


「さて、話を聞こうかしら?」

 ギラッと光る目を俺に向け、アリアは笑顔を浮かべた。

いつもボチオタを読んで頂き、ありがとうございます!

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九条君は勇者だったんだね!心臓に毛が生えてるのかな?この行動にモブの男子生徒達は勇気をもらい心の中で拍手喝采しているだろう。
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