表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

157/272

第149話「かわいい寝顔」

「これ……人気ラノベの表紙絵レベルじゃねぇか……」

 あまりの絵の上手さに、俺は思わずそう呟いた。


 咲姫が描いた絵は、二人の男女が仲良く手を繋いでる絵だった。

 しかし、この絵をそんな言葉だけで表すのでは足りない。

 キャラの完成度は言わずもがな、背景の絵まで凄く上手い。

 背景となる夜景――特に、星空は見入ってしまう程綺麗だ。


 草木も神秘的にも思えるくらい、綺麗に(えが)かれている。

 

 色鉛筆だけでこれ程ハイクオリティな絵が描けるなんて知らなかった。

 多才な奴とは思っていたが、咲姫の底が全く見えない。


 こいつは一体どれだけの才能を持っているのだろう?

 最近残念な子と思いかけていたが、やっぱり俺とは比べ物にならないくらい凄い奴だ。


 というか、勉強より先に絵を完成させてしまったのか。

 まぁ口振りからもう少しで出来そうな感じだったから、キリがいい所まで描くつもりだったのかもしれない。


「しかし――俺、このキャラ達を知らないな……」


 俺の手元にある絵に描いてあるのは、長い黒髪の女の子と黒髪の男の子。

 女の子は清楚な感じだが、男の子の事が好きな設定なのか、手を繋いでる事に対して凄く幸せそうな顔をして男の子の事を見つめてる。


 男の子はそんな女の子に対して、優しく微笑んでいた。

 絵が上手いから美少女と美男子になっているが、こんなキャラ絵は見た事がない。

 もしかして、少女漫画のキャラなのだろうか?

 さすがの俺も少女漫画には手を出していないから、それなら知らないのにも納得がいく。


 ただ――なんだろ?

 このキャラ達、誰かに似てる気がするんだよな……。


 それにこの服もどこかで――――あっ、もしかして……。


 絵のキャラ達が着る服に見覚えがあった俺は、自分の部屋に向かった。

 そして服がしまってある引き出しを開けると、思った通り目的の服があった。


 咲姫が描いた男の子が着る服と、全く同じデザインの服が。


 これは、俺が咲姫の誕生日に遊びに行った時の服だ。

 そして絵の女の子が着ていた服は、その日咲姫が着ていた服だった。


 間違いなく、咲姫はその二つの服をモデルに絵を描いている。


 それにキャラに見覚えがあった理由がわかった。

 咲姫が描いた女の子は、特徴が咲姫によく似ているのだ。


 ――俺は一度リビングに戻り、咲姫と絵の女の子を見比べてみる。


 うん、見比べてみるとよくわかる。

 絵の女の子は髪型や顔付きが咲姫そっくりだ。


 それに、咲姫がいつも着けてる髪留めと同じものを、イラストの女の子も着けてるしな。


 という事は――絵の男の子は、俺なのだろうか……?


 なんとなく、似てる気がする。

 髪型とか特に。


「――うっ……!」


 夜景を背景に仲良く手を繋ぐ男女が俺と咲姫かもしれないと思った途端、俺の体温が急上昇してきた。

 この絵がもし俺の予想通りだとすると、咲姫はやっぱり俺の事が――。


 ――いやいやいやいや!

 ちょっと待てよ、俺!

 咲姫が自分からこんな絵を描いていたからって、俺の事を思ってくれてるかもしれないって思うのは安直すぎだろ!?

 咲姫はただ単に、仲のいい姉弟を描きたかっただけかもしれないんだし!


 それに、この女の子はともかく、男の子が俺とは限らないだろ!


 だって俺はこんなイケメンじゃないんだから!

 もしかしたら咲姫が好きなキャラに着せる服に困り、俺が前に着ていた服を着させてるだけかもしれないだろ!


(かい)……君……」

「――っ!?」


 俺が頭を抱えていると、急に名前を呼ばれた。

 声を出していたつもりはないが、物音で咲姫が起きてしまったのかもしれない。


 俺はおそるおそる咲姫のほうを見る。


 すると――

「えへへ……海君……むにゃむにゃ……」

 ――咲姫が、『ふにゃあ』って言葉が似合いそうな少しだらしない、そして凄く可愛い寝顔を浮かべていた。


 どうやら、先程のは寝言だったようだ。

 

 咲姫が起きなくてよかったと思いながらも、俺は少しだけ咲姫の寝顔を見つめる。

 一体なんの夢を見てるのか、咲姫は幸せそうな寝顔を浮かべている。

 俺の名前を呼んでいた事から、多分俺も夢に出てるんだろうが……。


 ………………部屋に、戻ろう……。

  

 なんだかめちゃくちゃ気恥ずかしくなった俺は、咲姫を起こすのをやめて自分の部屋に戻る事にした。 

 多分もうすぐ桜ちゃんが帰ってくるだろうから、咲姫の事は桜ちゃんに任せればいいだろう。


 まだ、今日はやる事が残ってるしな。

 俺は熱くなっている顔を右手で抑えながら、階段を昇って行く。


 ――そして部屋に戻った俺は、久しぶりにKAIのサイトを開くのだった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『新作です……!』
↓のタイトル名をクリックしてください

数々の告白を振ってきた学校のマドンナに外堀を埋められました

『数々の告白を振ってきた学校のマドンナに外堀を埋められました』5月23日1巻発売!!
  ★画像をクリックすると、集英社様のこの作品のページに飛びます★ 
数々1巻表紙
  ★画像をクリックすると、集英社様のこの作品のページに飛びます★  


『迷子になっていた幼女を助けたら、お隣に住む美少女留学生が家に遊びに来るようになった件について』8巻発売決定です!
  ★画像をクリックすると、集英社様のこの作品のページに飛びます★ 
お隣遊び6巻表紙絵
  ★画像をクリックすると、集英社様のこの作品のページに飛びます★  


『迷子になっていた幼女を助けたら、お隣に住む美少女留学生が家に遊びに来るようになった件について』コミック2巻発売中!!
  ★画像をクリックすると、集英社様のこの作品のページに飛びます★ 
お隣遊びコミック2巻表紙
  ★画像をクリックすると、集英社様のこの作品のページに飛びます★  

― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ