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第143話「残された道」

 海斗が鈴花とご飯を食べてる頃、アリスの別荘では――


「これです! これがいいです!」

 ベッドに座ってるアリスの目の前で、猫耳爆弾がたくさん並べた本の中から一冊を取り出してはしゃいでいた。

 猫耳爆弾の目の前には、ニコニコと可愛い笑顔を浮かべるちびっ子天使が居る。


「じゃあ、カミラちゃんのはこのキャラのにするね」

 ちびっ子天使は猫耳爆弾が持つ本に描かれているキャラを見て、笑顔で頷いた。

 

 どうしてちびっ子天使がアリスの別荘に居るかと言うと、学園から帰ってる最中にカイが困ってて、アリスが助け船を出してあげたから。

 その時のカイは腕に抱きついてる笑顔のちびっ子天使に怯えていて、今日大和撫子に会いに行く事を言い出しづらそうにしていた。

 別にカイが誰に会おうとカイの勝手だから普通なら言う必要はないんだけど、晩御飯がいらない事を言わないといけなかったからそうもいかなかったみたい。

 だから、アリスは猫耳爆弾にちびっ子天使を家に呼んでいいよって言って、家に招くことによりちびっ子天使が料理を作らなくていいようにした。

 

 その時にカイも、今日は用事があるからご飯はいらないという事をちびっ子天使に伝えた。

 このタイミングなら、自分は外で食べるからご飯の事は気にしなくていいよって意味で言ったと捉えてもらえると思ったんだと思う。

 その時にカイは、桃井の子のほうにも今日は晩御飯がないから食べに行くなりするように連絡すると言っていた。


 これで問題なく大和撫子に会いに行けるとカイは思っただろうね。


 ちびっ子天使がアリス達の考えを顔などからなんとなく読み取れているという事に気付かずに。

 まぁそれで知らないふりをするのだから、ちびっ子天使はいい子だと思う。


 そんなこんなでちびっ子天使は、今の学園に通う為に買ったアリス達の別荘に遊びに来てた。

 ただ、この家はアリアが買ったからアリス達の別荘というより、アリアの別荘だけど。

 

 別荘に着いた後は二人で一緒に漫画やラノベを読んだり晩御飯を食べたりして、先程アニメ好きの猫耳爆弾のためにちびっ子天使がコスプレ衣装を作るという事になり、その衣装を選んでいた。

 今は猫耳爆弾が選んだキャラに合わせようとしてるのか、同じ作品に出るヒロインの中からちびっ子天使が着るコスプレ衣装を選んでいる。

 二人とも凄く楽しそうで、見ていて気持ちがいい。

 きっとカイならこの光景を見たがると思う。


 ……まぁ、色々と問題がありそうだから、見せる気はないけど。


「――お姉ちゃん、カミラ、帰ったよ」

 アリスが猫耳爆弾達の様子を眺めていると、仕事帰りのアリアがアリスの部屋に現れた。

 時間を見ればもう21時前になってる。

 ちびっ子天使が遊びに来てから随分と時間が経っていた。


「おかえり……。あと……お疲れ様……。今日は……遅かったね……」

 スーツ姿で帰ってきたアリアの労を、アリスは言葉で労った。


「遅かったって……まだ、21時前じゃない。仕事が溜まってるから本当ならもうちょっと残ってたかったのに、遅くまで残るとお姉ちゃんが怒るから帰ってきたんじゃない」

「アリアが残るって事は……重役達も残らないといけなくなる……。それは……かわいそうだし……ヤル気に関わる……。結果……仕事の効率が……悪くなる……。だから……本当なら平社員と同じで……重役達も……定時で帰らせるべき……」

 仕事を残して帰る事に不満があるのか、アリアが珍しくアリスに文句を言ってきたけど、それをアリスは(さと)すように返した。


「あ~はいはい、わかってますって。目指すべき姿は残業なしで高収入を与えられる会社でしょ? ちゃんと言われた通りになるべく残業はさせないようにしてるし、給料だって弾んでるんだから。でもね、高収入を与え続けるには成果を出してくれないと無理なの」

 いつもならアリスの言葉を聞いたら黙るのに、今日はまだ言い返してきた。

 余程機嫌が悪いのかもしれない。

 これは仕事を残してきた不満だけじゃなく、今日一日学園で嫌な視線を浴び続けたから、それで機嫌が悪くなってるんだと思う。


 残業なしで高収入を与えられる会社を目指すというのは、アリアが平等院システムズを受け継ぐ時にアリスが教えた事。

 

 アリスはそれによって平等院システムズに優秀な人材を集める事に成功し、結果を出してきたから。

 

 残業をたくさんするのが当たり前という考えで、それによって会社は成り立っているというのは、日本人が持つ間違えた考え。

 確かに残業をすれば納期を早められるかもしれないけど、仕事効率が凄く悪くなる。 

 (げん)に、アリスが平等院システムズの経営をする前に平等院グループの会社を見て回ると、ほとんどの社員は会社に来てから時間が経つ事ばかりを考えていた。

 本当なら早く終わる仕事でも、仕事を終えると次の仕事を振られるからわざと遅く作業したりとかね。


 残業をするという事は、当然人件費なんかもその分かかってしまう。

 

 そして残業をする事が前提なのと、負荷残業による寝不足や疲労によって社員の集中力が持たないせいで成果が思うようにあがらないから、会社の利益が少なく基本賃金を上げられない。

 挙句、残業のしすぎで体がしんどいとか、基本賃金が少ないからという事でよその会社に優秀な人材は逃げてしまう。

 それによって会社が苦しくなるという事を、多くの経営者は理解していない。

 

 その事に気が付いていたのは、紫之宮財閥の長女くらいだと思う。

 彼女は会社を親から受け継ぐとすぐに、アリスと同じように残業なしの高収入というやり方で経営を始めた。

 そして、今まで結果を出してきた。


 アリアもテレビ局以外の三つの会社はそのやり方でやってるからこそ、平等院グループの中で優秀な成績を残せてるんだけど……アリアは、どうも時間があるなら仕事をしていたいタイプみたい。

 

 それでは、下がついて来ないというのに。


「――そ、その……お邪魔してます……」

 アリスとアリアが話をしていると、ちびっ子天使がビクビクしながらアリアに挨拶をした。 

 ちびっ子天使がアリアに会うのはこれが初めてなのに、アリアが機嫌悪く登場したから怯えてるみたい。

 ……まぁ、それだけじゃないだろうけど。

 

「あら、こんな時間に客人? ごめんなさい、みっともないところを見せたわね」 

 ちびっ子天使を認識すると、アリアは優しい笑顔を浮かべて答えた。 

 そのアリアの顔をちびっ子天使はジーっと見つめて、その後ペコっと頭を下げた。


「桜ちゃんは私のクラスメイトなのです!」

 頭を下げるちびっ子天使の横で、猫耳爆弾が笑顔でちびっ子天使の事を紹介した。


「そう、カミラのクラスメイトなの。この子は問題ばかり起こすけど、悪い子じゃないから仲良くしてあげてね。それじゃあ、私は勉強するから部屋に戻るわ。あなた達も来週テストがあるんでしょ? 遊ぶのもいいけど、勉強もしっかりしなさいね」

 アリアはそう言うと、笑顔でアリスの部屋から出て行った。


「優しい人……?」

 手を振りながら去って行ったアリアの後ろ姿を見て、ちびっ子天使は首を傾げた。

「はい! アリアお姉様はたまに凄く怖いですけど、優しいお方なのです!」

 首を傾げるちびっ子天使の横で、猫耳爆弾が笑顔で頷く。

 猫耳爆弾はアリアの事が大好きだから、ちびっ子天使が同じ感情を抱いてくれたと思って嬉しいみたい。


 だけど、ちびっ子天使は疑問を口にしただけ。

 きっとちびっ子天使にはアリアの事が黒色に見えていたんだと思う。

 

 これはアリスの推測に過ぎないけど、ちびっ子天使は、他人を陥れる考えを持つ人間を色で判断する。

 ちびっ子天使はその色を基準にして、いい人と悪い人を判断してるって言ってたけど、それが絶対に正しいわけじゃない。

 例え凄く優しい人でも、他人を陥れる考えを持つ事はあるから。


 それについては、カイの一件でちびっこ天使も理解してる。

 でも、今まで信じてきた感覚はそう抜けないんだろうね。

 

 そしてアリアはほとんどの人間に対して陥れる事しか考えていないから、ちびっ子天使には黒く見えたんだと思う。


 だけど、実際話してみたアリアは優しい雰囲気だったから、疑問に思ったってところだね。


 アリアは他人を利用する対象として見ている。

 だけど、それは全員に対してではない。

 ある一部の人間に関しては、アリアはいい人になる。


 まぁそれも結局は、人を従える立派な経営者になるように行われた、平等院財閥の教育によってだけどね。

 

 だけど、それが唯一アリアに残されたまともな人間になれる道でもある。


 カイにもその事がわかるように、予め手を回しておいた。

 後は、カイ次第だね。

 アリスはいつも肝心な部分をカイに任せてるけど、それが一番確率が高いのだから仕方ない。


 その代わり、『この件が終わったら、お礼と称してまたカイを甘やかそう』と、アリスは思うのだった――。

いつも読んで頂き、ありがとうございますヾ(≧▽≦)ノ

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