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第6話「ロリっ子義妹が懐きすぎて、逆に怖い!」

「ねぇ、あの子可愛くない?」

 昼休み――急にクラスの女子が、そんな事を言い出した。


「あ、本当だ! 小っちゃくて可愛いのに、顔も凄く可愛いね! ……なのに胸が私より遥かに大きいなんて、おかしいよ!」

「あれはパッド、パッドに決まってるわ!」

 なんだか、胸が大きい子に嫉妬している女子達の馬鹿げた声が聞こえてくる。


「おい、あれ一年の子だろ? なんで二年のクラスに来てるんだ? もしかして、俺に告白しに来たのか!?」

「いや、俺に告白しに来てくれたんじゃないか!?」

「いや、俺だ!」

「いやいや、お前らみたいなゴツイだけが取り柄の奴らに、あんな可愛い子が来るはずないだろう? つまり、僕に告白をしに来てくれたのだ!」


 ……なんか女子よりも、男子の方が馬鹿な事を言っていた。


 お前ら、面識がないはずなのになんで自分に告白しに来たと思うんだよ。

 まぁ、俺には関係ないからいいが……。


 とりあえず、なんだか前のドアは混雑しているみたいだから、後ろのドアから食堂に行こう。


 俺は教室を出るためにドアに向かっていると――

「あ、あの……神崎先輩はいらっしゃいますか……?」

 と言う、可愛い声が聞こえてきた。


 え?

 今、俺の名前が呼ばれた?


「神崎……?」

「え、神崎ってあの神崎?」

「いつもクラスの隅にいる、ボッチの神崎?」


 おい……確かにその通りだけど、最後の奴ひどくないか?

 いくら事実とは言え、その名で呼ぶな……。


 しかし……俺に用事ってどんな子だろうか?

 

 俺が前のドアの方を見ると、その子も俺に気が付いたみたいだ。


「あっ! すみません、通してください!」

 そんな声が聞こえたと思ったら、小さい影が人混みの中から飛び出してきた。

 

 あ、この子は――。


「おにい……神崎先輩、こんにちは」

 小さい影の正体は、桜ちゃんだった――。





「いきなりビックリしたよ」

 俺は隣を歩く、自分よりかなり小さい女の子を見る。

 その子はニコニコ顔で俺の横を歩いていた。

 そしてトレードマークのショートツインテールがピョンピョンと跳ねている様に見え、凄く可愛いと思った。


「えへへ、だってお兄ちゃんと一緒にご飯食べたかったもん」

 そう言って、俺の方を見上げてくる。


 本当可愛い子だよな……。


 それにもしかしたら、昨日あの女が俺に友達が居ないと言った事で、気を遣って誘いにきてくれたのかもしれない。

 そうだとしたら、あの冷徹女にも感謝しよう。


 ……いつかは泣かしてやるがな。


「とりあえず、食堂でいいかな? それとも、購買でパンを買って、何処かで食べる?」


 俺がそう尋ねると――

「ジャッジャーン! お弁当だよー!」

 と、桜ちゃんは後ろ手に持っていた、弁当箱を二つ出してきた。


 ずっと、手を後ろに回しているなっと思ったら、そういうことだったのか!

 朝ご飯だけでなく、弁当まで作ってもらえるとは凄く有難い。

 俺は手間になるから、弁当までは作らなかった。

 桜ちゃんは女子力が高いなー。


「でも、いつの間に作ったんだ? 俺が起きた時に弁当はなかったと思うんだけど?」

「えへへ、お兄ちゃんを驚かせたくて、朝ご飯を作る前に作って、隠してたの」

 桜ちゃんは、悪戯が成功したみたいな顔をしている。


 可愛い……。

 でも、やはり疑問に思う。

 何故この子は、俺にここまでしてくれるのだろうか?


 新しく兄になったからか?

 わからない……俺はこの子について知らなすぎる。

 まぁそれはそれとして、今はそれ以上に気になる事がある。


「なぁ、あの子可愛くないか!?」

「本当だな! ……おい、隣のは彼氏か?」

「いやいや、それはないだろう! あんな可愛い子があんなオタクみたいな奴を選ぶと思うか?」

「ないない! でも、あんな可愛い子と一緒に歩けるなんて、羨ましいなー」

「本当だよな~。あぁ、あの大きな胸を揉んでみたい……」

 

 ……俺達は今、先ほどからこの様な会話と、嫉妬と羨望(せんぼう)が入り混じった視線を向けられていた。

 流石は、あの学校一のモテ女の妹と言ったところか。


 しかし――最後の台詞を言った奴、顔はしっかり覚えたからな?


 俺の可愛い妹を変な目で見た罰として、今度お前のスマホにウイルスを放り込んでやる。


「どうしたの、お兄ちゃん?」

 俺がどうやってあの男のスマホにウイルスを送り込んでやろうかと考えていると、桜ちゃんが不思議そうに俺の顔を見上げていた。

「いや、なんでもないよ」

 俺はそんな桜ちゃんへ誤魔化すように、笑いかけた。


 しかし……この子は俺の雰囲気を敏感に感じとっているのか、すぐに反応してくるな……。

 もしかして、案外抜け目がないのか?


 それにこれだけ視線を向けられていて、全く気にした様子を見せない。

 自分が見られていると思っていないのだろうか?


 どちらにせよ、なんだかこの子は大物な気がしてきた……。


「ねぇ、お兄ちゃん。それで、何処で食べるの?」

「あぁ、中庭にでも行こうかなと思っているんだ。あそこならベンチが複数あるから、そこに座って食べよう」

「うん! ……それで、中庭って何処から行けるの?」


 そういえば、この子は方向音痴だったな……。

 中庭に出るには、玄関から普通に出ると遠回りになってしまうため、別の道から行かなければならない。

 この子が一人で辿り着けるとは、思えないな……。


 ん?

 そう言えば、この子はよく俺のクラスに辿り着けたな。

「なぁ桜ちゃん、俺のクラスに迷わずに来れたのか?」

 俺が尋ねると、桜ちゃんは頬を膨らませた。

 どうやら、拗ねてしまったようだ。


「もー……いくら桜でも、階段を一つ下りればいいだけなら間違えないよ! ……二回ほど違うクラスに入っちゃったけど……」


 もうそれは、方向音痴というレベルではなくないか?

 一度病院で()てもらった方がいいと思う……。


「そ、そっか、安心したよ」

 だけどそんなこと言えるはずがなく、俺はそう誤魔化したのだった。





 なぜ、こうなった……?

 俺は隣でニコニコと食べている、可愛い義妹を見る。


 俺が何を疑問に思っているのかというと――

「桜ちゃん……なんで、くっついて食べてるの……?」

 そう、何故だかわからないが、ベンチに座るなり桜ちゃんは俺にベッタリくっついてきたのだ。


「うん? だめ、かな……?」

「全然だめじゃないです!」

 そんな顔で見られたら、断れるはずがない!

 と言うか、別に嫌だったわけではない。


 なら何が問題かと言うと――緊張しすぎて、弁当がまともに食べれていないという事だ。


 コミュ障の俺がこんな可愛い子にくっつかれて、冷静にいられるはずがないだろう!

 

 というか本当この子何なの!?

 なんでこんなに懐いてきているの!?


 なんか裏がありそうで凄く怖いんだけど!?

 

 ……あれか?

 裏で桃井が糸を引いているのか?

 純粋な桜ちゃんを使って、俺を(おとしい)れようとしているとか?


「どうしたの……? 弁当、おいしくなかった……?」

 桜ちゃんが、俺の方を悲しそうに見上げていた。


「あ、ごめん……ちょっと考え事をしてただけなんだ。桜ちゃんの弁当は凄く美味しいよ」

「えへへ……」

 俺がそう答えると、桜ちゃんは嬉しそうに微笑んだ。


 こんな純粋な子が、そんな事するわけないよな。 

 俺は一体、何を馬鹿な事を考えているのか……。


「ねぇ、お兄ちゃん。お姉ちゃんと仲が悪いの?」

 急に桜ちゃんがそんな事を聞いてきた。


 うーん……。

 正直に言うと桜ちゃんを悲しませてしまいそうだし……。


「えっとな……仲が悪いというわけじゃないんだが、距離感をまだ掴めてないんだよ」

 結局、そう誤魔化すことにした。


「そっかぁ……でも、早くお兄ちゃんとお姉ちゃんには仲良くなってほしいなぁ……ね?」

 その上目遣いは(ずる)いと思う。

 そんな風にお願いされたら、断れるはずがない。


「うん、わかった。頑張ってみるよ」

 俺は笑顔でガッツポーズをする。

 桜ちゃんはそんな俺を、微笑んで見ていた。


 俺達はそんな心地良い時間を過ごしていたが――そんな時間は、思いもよらない形で終わる。


「……何をしているのかしら?」

 それは、地獄の底から聞こえて来たかのような低い声だった。

 俺はおそるおそる後ろを振り返る。


 そこに立っていたのは、雪女かと思うほど冷たい眼をしている、学校一のモテ女だった。


「も、桃井……?」

「人の大切な妹に、早速手を出しているとは良い度胸ね……?」


 桜ちゃん、やっぱり無理だと思うな……。

 だってこの女……今にも俺を殺しそうな目をしてるんだもん……。


 この後の俺がどうなったかは、ご想像にお任せしよう……。



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