第129話「ふふ、みんなわかってるよね?」
『ボチオタ』スピンオフ――『怖い金髪ギャルの彼氏役をするハメになったと思ったら、実は尽くす系の可愛いギャルだった』を載せました(^_^)/
時間軸を変え、過去にあったある出来事がなかった世界となっております!
何が原作と違うのか、どういった物語なのか――読んでみて、確かめてください(^^♪
あとがきの下の『ボッチのオタクである俺が、実は尽くし系金髪ギャルの攻略を目指す』を押せば作品に飛べるので、読んで頂けると嬉しいです(^O^)/
「ねぇ、あの西条さんたちが抱きついている人って誰?」
「う~ん、初めて見るね……でも、かっこいいなぁ」
「なぁおい、西条さんたちは神崎さんから鞍替えをしたのか?」
「さぁ? 俺神崎さんと話したことねぇからわからねぇけど、そうなんじゃね? やっぱ、イケメンが全てを持っていく世界なんだなぁ」
「でもでも、あんなにベッタリだった西条さんや桃井さんの妹が、二人一緒に別の男の人を好きになるってありえるのかな?」
「夏休みの間に、あのイケメンに寝取られたんじゃね?」
「わぁ……彼氏の発想がキモすぎてドン引きです……」
「えぇ!?」
俺たち三人が学園内に入ると、そんな声が聞こえてくる。
誰一人として、俺があの『ボッチの神崎』だとは思っていないようだ。
まぁそれと、昨日の文化系の部員たちはいないみたいだ。
よかった、これなら教室には安全に着きそうだ……。
「――か、海斗君が……ハーレムを作ってる……」
……あぁ、そうだよな。
俺今、思いっきりフラグ立てちまったよな。
俺にだけ半端なく修羅場を用意する神が、この状況を何もなしで終わらせるわけないよな。
もう嫌だと思いながら、俺は後ろを振り返る。
するとそこには、口に手を当てて信じられないものを見ているような表情をする、春花がいた。
「春花、これは誤解だ」
「えっと、なにが誤解なのかな?」
「まず、こっちの小さい子は昨日話していた俺の妹であって、彼女じゃない」
俺は桜ちゃんのほうを見ながら、春花と雲母たちにだけ聞こえる声で説明をした。
すると何故か、桜ちゃんの頬がプクーッと膨れていく。
あ、あれ……?
なんか拗ねちゃった?
もしかして小さい子って言ったからか?
でも、背が小さいことを気にしている素振りって見せたことないよな?
俺は急に拗ねだした桜ちゃんに戸惑う。
「あ、この子がそうなんだ……。わぁ、本当に凄く可愛い子だね……。だけど、そっちの人は?」
春花は桜ちゃんに笑顔を浮かべると、すぐに雲母に視線を移した。
どっちかというと、桜ちゃんよりも雲母のほうが気になるみたいだ。
「あぁ、こっちは………………ただのストーカーだよ」
「ちょっ!? それは酷くない!?」
雲母について説明するのに困った俺は、とりあえず何かとくっついてくるので、若干意味は違うがストーカーと説明してみた。
まぁ当然、そんな説明をされた雲母は心外そうな顔で俺のことを見てきたが。
「そうなんだ……ストーカーさんなんだ……」
そして春花は、俺の言葉を信じて雲母のことを若干引いたような目で見だした。
……うん、春花。
言った俺が言うのもなんなんだが……俺が言ったことをなんでもかんでも信じるなよ?
こんなストーカーいないからな?
「海斗が変なこと言うから、私会ったばかりで引かれてるんだけど!?」
「……まぁ、いいじゃないか」
「どこが!? どこがいいの!? 学園生の間で私のイメージがストーカーで定着しちゃったら、どうしてくれるの!?」
「いや、多分大丈夫だろう」
学園生は少なからず、お前のことをそう思ってるだろうから。
なんせ、休み時間のたびに俺に付きまとうんだから。
それと、雲母のことが怖すぎて、あいつらは何も言わないと思う。
「ふぅん……仲がいいんだ……」
俺たちの漫才みたいなやりとりを見て、春花が拗ねたような表情をしていた。
もしかしなくても、やきもちをやいてくれているみたいだ。
周りの学園生たちは、『お、修羅場か!? 修羅場だよな!?』みたいな感じで、この雰囲気を面白そうに見ている。
本当、俺もそっち側に行きたいよ……。
「あ、こんなとこで騒いでたらみんなの邪魔になっちゃうね。私は職員室に来るよう言われてるから、もう行くね」
俺が心の中でこの状況を嘆いていると、春花はあっさりこの場を離れるみたいだった。
「ねぇ、ちょっとまってよ」
しかし、そんな春花のことを雲母が呼び止める。
「どうしたの?」
「随分とあっさり引くんだね? それは海斗を盗られるわけがないって余裕なの?」
「ううん、私にそんな余裕なんてないよ。それに、あなたたちが海斗君に抱き着いてるのを見て、凄く嫌だと思う。だけどね……海斗君が困ってるじゃん。私は、自分のわがままで好きな人を困らせたくないだけ。じゃあ注目を集めちゃってるし、もう行くね。バイバイ」
春花は笑顔でそう言うと、再び歩きだした。
「なるほどね……ありゃあ、手ごわそうだわ」
雲母はそんな春花の後ろ姿を眺めながら、苦笑いを浮かべてそう呟いた。
桜ちゃんは、俺に抱き着いてる腕にギュッと力をこめてきた。
俺は……何もなく終わったはずなのに、なんかもう、修羅場の未来しか見えないのだった――。
2
「――おはよう」
桜ちゃんと階段で別れた後、俺と雲母は自分たちの教室に向かった。
先に雲母が教室に入り、そのあとに俺が続いて入った形だ。
ただ――何故か、クラスに入った瞬間女子たちに囲まれてしまった。
「え、え、誰ですか!? もしかして転校生です!?」
「わ、わぁ! こんなかっこいい人がクラスメイトって凄く嬉しいんだけど!? ねぇ、名前を教えて、名前を!」
そんな感じで、なんだか女子たちは俺に聞いてきた。
俺は急に囲まれたことに驚きながらも、彼女たちの質問に答える。
「えっと……神崎海斗なんだけど……」
「「「「「………………え!?」」」」」
俺が自分の名を名乗ると、クラスにいた雲母以外のクラスメイトたち全員が驚きの声をあげた。
あ、全員ではないな。
俺のこの姿を知っている、雲母のグループの西村と清水は怯えるような目で俺のことを見ていた。
あの、体育倉庫の一件を思い出しているのだろう。
「か、神崎さんなんですか? 本当に?」
まだ俺があの『ボッチの神崎』ということが信じられないのか、クラスメイトの女子がおそるおそる聞いてきた。
ちなみに、今もなおクラスメイトたちは俺の名前を『神崎さん』と、さん呼びしている。
さん呼びはやめてくれと、何度言ってもみんなはやめてくれないのだ。
俺が女子の質問にコクッと頷くと、何故か女子全員が雲母のほうを見た。
すると雲母は、素敵な笑顔で口を開いた。
「ふふ、みんなわかってるよね?」
雲母のその言葉に、クラス内の女子全員が一斉にコクコクと頷くのだった――。
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