第127話「いつもいつも上手くいかない」
「綺麗だね……」
清水町の丘から見える夜景を見て、咲姫がウットリしながらそう呟いた。
ただ、俺は清水町の綺麗な夜景よりも、咲姫に見惚れていた。
月明かりが照らす彼女は、長い髪を風になびかせており、凄く色っぽい。
彼女を見ているだけで、体が熱くなる。
俺と一緒にいるだけで楽しそうな笑顔を浮かべてくれ、エロゲーやラノベの感想を言い合える女の子。
そんな女の子がどれだけ貴重なのか、俺は理解していた。
俺がどうして春花への返事を戸惑ったのか、咲姫と合流してから理由がわかった。
もう誤魔化せないくらい俺は咲姫のことが――。
「どうしたの?」
咲姫に俺が見惚れていると、彼女はキョトンっと首を傾げながら俺の顔を見上げてきた。
俺は慌てて清水町の夜景へと視線を逃がした。
「いや、夜景が綺麗だなって思ってさ」
「さっき、夜景を見てなかったよね?」
「……何を言ってるんだ、見ていただろ?」
俺がそう言うと、咲姫は胡散臭さげな視線を向けてきた。
その視線に気付かないふりをして、俺は清水町の夜景を見つめる。
しかし、心の中では全く別のことを考えていた。
――もし龍の言っているとおりに受け止めるのなら、これだけスキンシップをしてくる咲姫は、少なからず俺に好意を持ってくれているんだろう。
……そうじゃなかったら、俺はただの痛い勘違い野郎になってしまうがな……。
まぁそれはともかく、俺と咲姫は姉弟だ。
前から何度も考えているが、例え血が繋がってなくてもやはりその部分は気にしてしまう。
だから俺は、自分の心の中にこの気持ちを閉まっておくことにした。
だけど、咲姫のスキンシップを拒むつもりは無い。
仲の良い姉弟ってことにして、咲姫が望むのなら今日みたいに手を繋いだりもすると思う。
しかし、過ちを犯さないように今までどおり一線を引く必要があるということだ。
ただ、春花への返事は決まった。
他の子に意識がいってるのに、不義理をするわけにはいかない。
折角この学園に来てくれたのに悪いけど、断らせてもらおう。
…………いや、本当、春花が転校してくる前に会いたかった。
これだと、話がややこしいことになるじゃないか。
……まぁそしたら、また俺の答えが違ってややこしいことになってたのかもしれないけど……。
「ねぇ、海君」
俺が一人夜景を見ながら考え込んでいると、咲姫が声をかけてきた。
咲姫のほうを見てみると、彼女は目をうるわせながら俺の顔を見上げていた。
その姿が、この前パーキングエリアで二人だけで話していた時の姿と重なる。
ただ、月明かりのせいか、あの時よりも一段と魅力的に見えた。
俺は黙って彼女の言葉の続きを聞くことにする。
「私ね、海君のことが――」
「あ、海斗ちゃんだ! それに桃井さんもいる!」
咲姫が何か言おうとした時、明るい声が聞こえてきた。
そのせいで、咲姫はガクッとした。
「おかしい……おかしすぎるでしょ……。なんで私が告白しようとすると、邪魔ばかり入るの……」
咲姫は俯いてブツブツと何か言い始めた。
なんだかちょっと怖いので、俺は名前を呼んできた人物――如月先生を見る。
声で彼女だとはわかっていたが、その横には華恋さんも一緒にいた。
元々この場所は如月先生に教えてもらったため、如月先生がここにくるのはおかしくない。
彼女たちも夜景を見に来たのだろう。
手を繋いでるところを見るに、やっぱり仲のいい姉妹だ。
ただ……華恋さんは俺と同い年なのに、こうしてると本当に小学生にしか見えない。
「こんな遅い時間に二人だけでこんなところにいるなんて、怪しいなぁ? いけないことでもしようとしてたんじゃないの?」
ポンコツ教師は俺たちをからかおうとしているみたいで、ニヤニヤと顔を近づけてきた。
そんなポンコツ教師に、俯いた状態の咲姫がトボトボと近寄る。
そして――
「私、たった今先生のことが大嫌いになりました。明日から、何があっても先生のお手伝いは致しませんので、そのつもりでいてください」
と、ポンコツ教師に向かって言った。
まぁなんとなく察してはいたが、このポンコツ教師は咲姫にも頼っていたんだな……。
咲姫にいきなり見捨てられたポンコツ教師は、凄くうろたえていた。
「ま、待って! なんで!? ちょっとからかっただけなのに、なんでそんなに怒られないといけないの!?」
「なんでもです」
縋るような感じで咲姫に言うポンコツ教師を、咲姫は短く切り捨てた。
完全に学園にいる時のモードになっている。
まぁ相手が学園の教師だから、それはそれで当然なのかもしれないが、有無を言わせない感じだ。
「海斗ちゃん、助けて~」
ついには、俺のほうに泣きついてきた。
そのせいで咲姫の怒りが増していることを、この人は気付かないのだろうか?
華恋さんは状況がよくわかっておらず、困ったような――そして、咲姫のことは怯えるような目で見ていた。
ただ、ギュッと俺の服の袖を握るのはやめてほしい。
そのせいで咲姫の冷たい眼が、今度は俺に向けられているから。
「――海君、前々から思っていたけど、海君ってロリコンだよね?」
挙句の果てに、この言われようだ。
俺、何も悪いことしていないのに……。
「いや、全く心当たりがないんだが?」
俺がそう言うと、咲姫どころか、如月先生まで俺のことを疑うような目でジーっと見てきた。
おかしい。
俺は何も嘘をついていないのに。
「海斗ちゃんがロリコンだってことは、学園中で噂されてるよ?」
「……前から思ってたんですが、俺の噂っていつも酷くないですか? 事実無根なんですけど?」
「いやぁ……桃井さんの妹にデレデレしてるのに、それはとおらないでしょ?」
如月先生は俺の否定の言葉に対して、苦笑いをしながらそう言ってきた。
どうやら、俺が桜ちゃんに甘いせいで、学校ではロリコン呼ばわりされているみたいだ。
まぁもう一つは、桜ちゃんの彼氏としても噂がたっているからだろう。
確かに桜ちゃんは一見小学生にも見えるから、一つしか歳が離れてなくてもロリだと言える。
しかし、俺があの子に甘いのは妹だからだ。
だからシスコンと言われるのならまだ我慢するが、ロリコンって言われるのは納得いかない。
……でも、桜ちゃんが妹ってことを言うと、咲姫が家族ってことも知られてしまう為、言う訳にはいかない。
今日の様子を見るに、咲姫と家族になったことを知られれば、それだけで嫉妬によって酷い目に遭わされる気しかしないからだ。
つまり、俺はロリコンってことを否定できないという訳だ。
……本当、身に覚えのない噂ばかり流してるのは誰だよ……。
次から次へと学園で変な噂が流れることに、俺は頭を抱えるのだった――。
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