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第123話「鈴のような綺麗な声」

「ふぅ……しっかし、あの人には困ったもんだな……」

 夏休み最終日――俺は今、如月先生に学校へと呼び出されていた。

 どうせまた何かやらかしたんだろうが……すぐに生徒を頼るのはやめてほしい。


 昨日まで必死に宿題をやっていたから、今日一日は溜まってるラノベの最新刊たちを消化するつもりだったのに……。


 てか……凄く、視線が気になるな……。


 俺は昨日最後の宿題が終わった後、髪を切りに行った。

 何故か髪を切ると言ったら咲姫が喜んでついてきて、髪型も彼女に決められてしまったが……。


 まぁ、別段髪型にこだわりはなかったからいいのだが、アイドルみたいな髪型にされたせいで、(いき)ってると思われないか心配だ。


 ただ、咲姫は凄く褒めてくれた。

 その時のはしゃぎっぷりは、凄く可愛かった。

 というか、可愛すぎた。


 しかし……今もすれ違う女の子たちみんながこっちを見てくるのだが、本当は似合ってないんじゃないだろうか……?


 ……どうせ今日あの人に会うんだ。

 ファッションや髪型のセンスしか取り柄が無いが、その一点に置いてはずば抜けている。

 だから、あの人にこの髪型が変じゃないか、ついでに聞いてみよう。


「――失礼します」

 俺は職員室に着くと、挨拶をして入った。


「あ、来た来た! ……って、髪切っちゃってる!?」

 俺が髪を切っていることに気が付くと、如月先生は大袈裟に驚いていた。

 うん、驚きすぎだろってくらい、驚いてる。


「えっと……変ですか?」

「ううん、凄く似合ってるよ! よし、やっぱり私と付き合おう海斗ちゃん!」

「……こほんっ! 如月先生、今なんと申しましたかな?」

 ポンコツ教師が馬鹿みたいなことを言っていると、眼鏡をかけた厳しそうな先生が、ポンコツ教師のことを睨んだ。

 確かあれは、うちの学園の教頭先生だ。


「いやだなぁ……何も言ってませんよ、教頭先生!」

 如月先生は教頭先生が苦手なのか、ダラダラと冷や汗をかきながら笑顔を浮かべる。

 教頭先生は怪訝な表情でポンコツ教師を睨みながらも、自分の机へと視線を戻した。


「全くもう……地獄耳なんだから……」

 ポンコツ教師はムスっとしながら、小さい声で教頭先生の悪態をつく。

 ただ、先程のは教頭先生が地獄耳なんじゃなく、このポンコツが大きな声で言っていただけだ。


 だが、教頭先生が地獄耳だということも嘘ではなさそうだ。

 なんたって、ポンコツ教師が悪態をついた瞬間、またこっちをギロリと睨んでるもん。


 これ、後で怒られる奴だろうけど、俺はもう知らない。

 だって、自業自得すぎるから。


「それで、どんな心境の変化なの?」


 この後起きるであろう悲劇のことなど気付きもせず、如月先生が俺の顔を覗き込んできた。


「あぁ、ちょっと色々ありましてね……髪を切ろうと思ったんですよ」

 何があったかは言う訳にいかず、曖昧(あいまい)に誤魔化しながら答えた。

 俺が言った言葉に対して、如月先生は嬉しそうに微笑む。


「そっかそっか、もう安心みたいだね」

 もしかしたら、彼女なりに俺のことを心配してくれていたのかもしれない。

 やっぱりなんだかんだ言って、この人はいい人だ。


「それに今日はそっちのほうが、都合がいいんだよ。実は海斗ちゃんに明日から転校してくる子の、学園案内をしてほしいの」

「……はい? 今、なんと?」

「だから~、転校生の学園案内をしてほしいんだって!」

 

 俺はポンコツ教師の言葉に(ひたい)を右手で抑えた。

 このポンコツは、本当にポンコツ過ぎる。

 いくらなんでも、人選ミス過ぎだろ……。


 さっきいい人だと思った俺の思いを返せ。


「あのですね、先生。俺に転校生の案内なんてできるはずがないでしょ?」

 俺はなんとか怒りそうになるのを我慢しながら、口を開いた。


「そりゃあ、私もわかってるよ。だって、海斗ちゃんだもん。初対面(・・・)の子相手だと、会話すらままならないだろうね」

 如月先生の俺を馬鹿にしている発言に一瞬イラっと来るが、あながち間違っていないので我慢しながら俺は続きを促す。


「じゃあなんで俺を選んだんですか?」

「だって、相手の子が海斗ちゃんを指名してきたんだもん。海斗ちゃんの知り合いらしいから、問題ないかなって思ったの。多分、もうすぐ来るよ」

「俺の……知り合い……?」

 

 如月先生の言葉に、俺は黙り込んだ。

 俺の知り合いとなれば、多分中学時代の友達の筈だ。

  

 ただ、今となってはもうそれ自体は問題ない。


 少し前なら俺は逃げていただろうが、今なら過去の友達とも向き合える気がする。


 しかし……俺がこの学園にいることを知っているのはどういうことだ?

 俺はこの学園にきたことを、中学時代の友達に知られないようにしている。

 なのに、どうして……?


「失礼します」


 ――俺が考え込んでいると、その子は現れた。

 職員室に入ってきたその子の声は、鈴のように綺麗だった。


 なんども夢に見た、あの女の子ソックリな声。

 成長している分若干違うが、この声を俺が忘れるはずがない。


 俺がおそるおそる後ろを振り返るとそこにいたのは――

「春……花……?」

「久しぶりだね……海斗君」

 ――目の端に涙を溜める、俺の初恋の女の子だった。

『ボチオタ』を読んで頂き、ありがとうございますヾ(≧▽≦)ノ


第五章、開幕です(*^^*)


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