第114話「ふぁいっと……!」
「思ったより、呆気なく終わりそうですね」
あの後――マリアさんが追加で二人捕まえた為、アリスさんの読みでは犯人は後一人という状況となっていた。
白兎たちもすぐそこまで来ているし、この様子だと問題なく終わりそうだ。
「……そうでもないみたい。カイ、1番と2番をすぐに戻して」
「え? わかりました」
もうこのまま犯人たちを捕まえて終わるのかと思っていると、アリスさんがドローンを戻すように言ってきた。
これは予定されていたことではないから、どうやら問題が起きたようだ。
「待ち伏せしてる男が居る。おそらく、最後の一人」
「そういうことですか……場所的に、マリアさんは遠くなりますね……」
黒柳君の言うとおり、マリアさんは犯人を捕まえていくにつれ、俺たちから離れて行ってしまった。
必然、白兎たちの待ち伏せをしているという犯人からは遠い位置に居ることになる。
「待ち伏せってことは、俺たちのこともバレているということでしょうか?」
「ううん、多分ただ待ち伏せしているだけ。というより、連絡がかりを引き受けてた男かも。だから、一定の位置に留まってたんだと思う」
「ということは、仲間と連絡が取れなくなって焦っている感じでしょうか?」
俺がそう尋ねてアリスさんを見ると、アリスさんはコクリと頷いた。
なるほどな……そうなると、ドローンを使って俺たちで捕まえるのか。
……え!?
どうやって!?
ドローンを使ってどうやって犯人を捕まえるのかわからない俺は、一人でツッコんでしまう。
「――カイ、これ付けて」
俺が不思議に思っていると、ドローンが戻って来てアリスさんが何やら俺に渡してきた。
それは――スタンガンだった。
「……なんで、持ってるんですか?」
普通にスタンガンを取り出したアリスさんに対して、俺は思わず尋ねてしまう。
「カイに、襲われた時用……」
俺の顔を一瞥したアリスさんは、シレっとそんなことを言ってきた。
それも、真顔で。
「おい……!」
俺は反射的にツッコミを入れそうになる。
一体何故この人はこんな切迫した空気の中、俺を弄ろうとするのだろうか……。
俺が文句を言いたくなっていると、アリスさんはニコッと笑った。
「まだ、いけそうだね」
「あ……」
どうやらアリスさんは、ドローン十台を集中して動かしていた俺に、元気が残っているかどうかを確かめたかったみたいだ。
しかし、普通に聞いてくれればいいと思うんだがな……。
「今からどうするか、説明する。クロも、あと少しだけ頑張って」
「大丈夫ですよ」
アリスさんの言葉に、黒柳君は笑顔で答えた。
だけど、その額には大量の汗を浮かばせている。
手術や長期間の入院生活で体力が落ちているのだろう。
あまり、無理はさせたくない。
「――ま、まじですか……」
アリスさんの作戦を聞いた俺は、彼女の作戦に頭を抱えたくなる。
「ハハ、君も大変だね……」
黒柳君はそんな俺に、同情のような目を向けてきた。
それだけ、また俺がする事は大変なのだ。
アリスさん……人使いが荒すぎますよ……。
まぁしかし、やるしかないか……。
少なくとも、リスクはゼロだしな。
「あ、壊したら弁償だからね? 凄く高価だから慎重にしないと、借金地獄になるから」
…………全然リスクゼロじゃないわ。
思いっ切りハイリスクじゃねぇか!
「ふぁいっと……!」
両腕で可愛らしくガッツポーズまでして、なんだかキャラ違いのテンションを見せるアリスさんに対して、俺はただただ頭を抱えるのだった――。
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