第112話「それぞれの役目」
『神に勇者認定されて異世界に来たが、人間辞めたので魔王もやろうと思います』を連載中の雨蟲 乙さんから素敵なレビューを頂きました(*´▽`*)
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俺達は今、桜ちゃん達が居る場所の近くまで来ていた。
そして俺は、車で移動していた間からずっと、ある機械の設定を行っていたのだ。
「準備できました!」
全ての機械を設定すると、俺はその事をアリスさん達に報告する。
「凄い……やはり、君だったか……」
黒柳君は俺の方を見て何か呟いたが、上手く聞き取る事ができなかった。
俺が黒柳君に何を呟いたのか聞こうとすると、アリスさんが俺に声を掛けてきた。
「じゃあ、カイは打ち合わせ通りに飛ばして、アリス達は準備に入るね」
「わかりました」
俺はアリスさんに頷くと、人工知能を搭載したドローンを一台ずつ飛ばしていく。
ドローンとは、簡単に言えば無人航空機だ。
今俺の手元には、その人工知能まで搭載している最新鋭の小型のドローンが、十台もある。
人工知能を搭載したドローンなんて初めて見たが、流石にこのドローンが搭載している人工知能には、学習機能は付いていないらしい。
ただこちらが与えた情報に対して自動で判断し、指示に従い続けるとの事だ。
そしてこのドローンには、搭載している小型カメラで撮影した映像をリアルタイムでパソコンに送る機能が搭載されている。
だから今から俺がするのは、このドローン十台に指示を送り続け、アリスさんと黒柳君が持つそれぞれのパソコンに映像を送り続けるといったものだ。
ちなみに、このドローンは一人で三台を担当するのが普通らしい。
それを俺は今から、一人で十台も担当するのだ。
しかも、ただ飛ばせばいいというわけではなく、飛ぶ方向を変えるなどの指示を送り続けなければならない。
そして、十台が十台別の行動をする。
という事は、十台ものドローンにそれぞれ指示を送るために、常に画面を頻繁に切り替えながら指示を送らねばならないのだ。
……はっきり言おう――地獄だ!
「――うん、こっちの映像は大丈夫そう。クロは?」
「はい、こっちも大丈夫です」
俺が十台のドローンに指示を送っていると、後ろから二人の落ち着いた声が聞こえてくる。
正直半分くらいは担当してもらいたかったが、二人には二人の役目があるし、そもそもドローンに指示を送れないだろうから、仕方ないが……。
二人の役目は俺が送った映像を元に、アリスさんは白兎に――黒柳君はマリアさんにそれぞれ移動の指示を送るというものだった。
ちなみに、アリスさんの方には白兎達の四方を見張る用に四台と、移動先に怪しい奴が居ないか確認する用に一台という、計五台のドローンから映像が送られるように設定した。
当然、アリスさんの方で五台という事は、黒柳君が担当するのは残りの五台だ。
ただ、黒柳君の担当する五台は白兎達を安全に逃がす為ではなく、カミラちゃんを襲った犯人達の居場所を見つける事が目的だった。
だから、五台とも別々の所を飛ぶようにしている。
十台ものドローンに指示を送らなければいけない俺には映像を確認する余裕が無いが、予め人工知能に障害物を避けて飛ぶように指示している為、ぶつかる心配は無い。
ただ、飛ぶ方向などはこちらから指示しないといけないため、映像を確認できる二人の指示に従って、俺がそれぞれのドローンに指示を送っているといった感じだ。
「しかし……本当に、マリアさん一人で大丈夫なんですか?」
ドローンの映像を確認しながら、黒柳君がそんな事を口走った。
何故彼がマリアさんの心配をしているかと言うと――今回犯人を捕まえる役を、マリアさん一人でこなす事になっていたからだ。
正直女性にこの役目を任せるのも、ましてや一人で行かせるのも納得できなかったが、アリスさんとマリアさんが並々ならぬ自信を持っていた事から、俺と黒柳君は押し切られてしまった。
しかし、やはり不安が残っている為、黒柳君はマリアさんを心配したんだろう。
「大丈夫。この程度の相手なら、秒殺」
表情を見る事はできないが、アリスさんは淡々とした声で黒柳君の質問に答えた。
「びょ、秒殺……? 流石にそれはちょっと……。そもそも、どんな相手かすらわかっていませんよね?」
いくらなんでも秒殺は無いんじゃないかと思っていると、黒柳君も同じことを思ったみたいで動揺していた。
それに黒柳君の言うとおり、まだどんな奴かもわかっていないはずのに、まるでアリスさんは相手の力量がわかっているみたいだった。
「獲物を取り逃がしただけじゃなく、見失っている時点で力量は知れてる。車は五人乗りの乗用車だったから、多くて四人だと思う」
「いや、五人かも知れませんよ? カミラちゃんを乗せる人数として考えているのかもしれませんが、体を縛ってトランクに詰め込むって手もありますからね。そうなると、五人居てもおかしくありません」
「猫耳爆弾相手にそんな真似はできない。それに、今回の件に関しては人手を多くしたくないはず」
「その根拠はなんなんですか?」
「……」
黒柳君の問いかけに、アリスさんは黙り込んだ。
答えたくないという事だろうか。
何故人手を多くしないのか――それは、凄く疑問だ。
普通に考えれば人手は多いほうがいいはず。
人数が増えればそれだけできる事も増えるからだ。
なのに今の言い方だと、まるで多ければ邪魔みたいな言い方に聞こえる。
もしかして、用済みになれば攫った奴も口封じの為に消したいから、その手間を省くため?
……いや、流石にそんな漫画みたいな事はないだろ、俺……。
脳が二次元に染まりきってしまっている俺は、馬鹿な妄想をしてしまい慌てて考えを振り払う。
というか、二人とも呑気に話してるけど、映像はちゃんと見ているのだろうか?
まぁ、まだ一定の方向にしか飛ばないからいいけど……。
今はドローンを高めに飛ばして、障害物が一切ない空から速度を上げて目的地に向かわせている。
その為、何も気にせず真っ直ぐに飛び続ける事が可能なのだ。
「――カイ、そこでアリスの五台は停めて」
ドローンを飛ばしてから少しすると、アリスさんがドローンを停めるように指示してきた。
どうやら、桜ちゃん達が居る地点についたようだ。
俺はアリスさんの指示に従って五台のドローンに停まるよう指示を送り、そのまま低空飛行に切り換えるよう指示を送った。
「神崎君、こっちもオーケーだ。五台とも予定していた地点に着いたよ」
「わかった」
黒柳君に映像を送っているドローンも予定していた地点に着いたため、低空飛行へと切り換える。
「一つのミスが取り返しのつかない事に繋がる。二人とも、一瞬たりとも気を抜かないでね」
「「はい!」」
アリスさんの声掛けに、俺と黒柳君は頷いた。
それを合図に、アリスさんは白兎に――黒柳君は、マリアさんに連絡を取る。
そしてドローンに細かい指示を送らなければいけなくなった俺は、必死にキーボードを叩いた。
――十台のドローンを使って、白兎達を安全に逃がしながら犯人達を捕まえていく。
このアリスさんの作戦は問題ないように思えるが……。
何も問題ないはずなのに、何故だかこの時の俺は、一抹の不安を抱えていたのだった――。
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