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第4話「口を開けば姉弟喧嘩」

『早くも、家に居るのが憂鬱(ゆううつ)になった』

 部屋に戻るなりすぐに、俺は花姫ちゃんに愚痴をこぼした。


『どうしたの?(>_<)』

 彼女からの返信はすぐに来た。

『一緒に住むことになった子が、凄く嫌な奴なんだよ』

『うわー、相手にも連れ子がいたんだね(;・∀・) そんな子と一緒だなんて可哀想だ~(>_<) 私の方も新しい弟が出来たんだけど……多分、主導権を握れたと思う!』


 主導権って……。

 相変わらず、花姫ちゃんは面白い言い方をするなー。


『凄いなー。じゃあ、そっちは上手くやれそうなんだ?』

『上手くやれるかなぁ……? まぁ一緒に生活する以上、喧嘩はしたくないかなぁ……』

『花姫ちゃんは優しいから、喧嘩なんてしないだろ。 あぁ……あいつも、花姫ちゃんみたいな性格になってくれないかな……』

『よっぽど性格が悪い相手なんだね(>_<) あ、ごめん……ちょっとお母さんに呼ばれたから、また後でね!』


 あ……もう少し愚痴を聞いてほしかったんだが……。

 まぁ、仕方ない。

 それに、『また後でね』って言ってくれてるから、彼女から返信が来たら聞いてもらおう。


 俺はそう思いながら『了解』っと、送ろうとすると――

「海斗くーん、みんなでご飯を食べに行きましょ!」

 香苗さんからそう呼びかけられた。


「あ、わかりました! すぐ行きます!」

 ドアを開けて下の階に居る香苗さんにそう答えた後、俺は文字を一度消し――

『俺も呼ばれたから、ちょっとご飯行ってくる』

 ――と、送ってスマホをポケットにしまう。


「「あっ」」

 部屋を出ると、今一番顔を見たくない奴と鉢合わせしてしまった。

 そういえばこいつの部屋は、俺の隣だったな……。


 あの後――父さん達が俺達に仲良くするようにと言って、俺の隣の部屋を桃井の部屋としたのだ。

 

 こんな奴じゃなく、桜ちゃんを隣の部屋にしてくれればよかったのに……。

 ちなみに桜ちゃんの部屋は、一階だった。

 そして俺達の部屋は二階だ。


 この階は俺達の部屋の他に、クローゼットを数個置いてある部屋と、物置が一つ、そしてトイレが一つあるだけだった。

 つまりこの階では、俺と桃井の部屋しかないのだ。

 

 はぁ……本当恨むぞ、父さん……。

 とりあえず、この女の事は無視しよう。

 向こうも俺の事なんて、気に留めてないだろうし。

 

「ねぇ」

 

 ……。


「ねぇってば!」

「――っ!」


 俺はいきなり桃井に、肩を掴まれた。


 ビックリしたぁ……。

「なんだよ、急に?」


「一つ、あなたに確認取っておかないといけない事があるのを思い出してね」

「確認?」

「えぇ、そうよ。間違っても、私があなたの家族になったと言う事を、学校の人に話さないでよ? もし誰かに知られたら、恥でしかないから」


 この野郎!

 例えそれが事実だったとしても、普通本人に言うか?


「言うわけないだろ? そんな事すれば、父さん達が気を遣ってくれた意味がなくなる」

 父さん達は、急に名字が変わったら悪目立ちするだろうという事で、俺達が高校を卒業するまで、桃井の姓を残すことに決めてくれた。


 それは俺にとっても有難かった。

 これだけ目立つ桃井が、俺とおんなじ苗字になってみろ。

 変な勘繰りをされかねない。


 ……いや、同級生たちは俺の事を空気扱いしているから、もしかしたら気が付かないかもしれないが……。


「そう、それならいいわ。あ、後、私の事をお姉ちゃんとか呼ばないでね。もし呼ばれたら、寒気がするから」

「誰が呼ぶか! ……まてよ、なんでお前の方が上だって決まってるんだ? 俺の方が兄かもしれないだろ?」

 俺の言葉に、桃井がフッと笑う。

「あなたの誕生日は、8月8日でしょ? 私は7月7日。つまり、私の方が早く生まれているから、私が姉なの」

 くっ……それなら仕方ないか……。

 

 ん?


「え、お前何で俺の誕生日知ってるの? 学校でのあの行動といい、お前本当にストーカーなの?」

 俺の言葉に、桃井が顔を真っ赤にして怒る。


「誰がストーカーよ! あなたの誕生日は、お父さんが教えてくれたに決まってるじゃない!」

「あ、そう」

 そんな事だと思ってたから、俺は普通に流す。


「あ、あなたわかってて聞いたわね!?」

「さっきの仕返しだ、バーカ」

 そう言って、俺は階段に向けて歩きだす。

 背中では、なにやら桃井がギャーギャー騒いでいたが、俺は気にしない。

 ちょっとだけではあったが、先程の仕返しが出来た事で、俺の心は満たされていた。


 ……あれ?

 そう言えば、俺……普通に桃井と会話が出来ていたな? 

 まぁ会話と言うか、喧嘩みたいなものではあったが、あいつと普通に話せたのが俺は不思議だった――。


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