第108話「猫耳ロリ少女と、天使のように可愛い黒髪ロリ少女の人気がヤバい」
海斗達と桜達が別れた後に戻り――
「桜ちゃん、大丈夫ですか?」
今カミラちゃんと桜ちゃんは手を繋いで歩いていて、元気が無い桜ちゃんにカミラちゃんが心配して声をかけた。
なんで二人が手を繋いで歩いているかという事についてだけど、カミラちゃんと少し距離をとりたかった僕が適当な理由をつけて彼女と手を繋ぐのを拒否すると、カミラちゃんはアリスさんの別荘で一緒に暮らしていたり、飛行機の中で遊んでいるうちに仲良くなっていた桜ちゃんに手を繋ぐよう求めたのだ。
それで桜ちゃんは快諾して、二人は今手を繋いで歩いている。
……僕がカミラちゃんと距離をとりたい理由……?
あのね、ここ最近僕は寝不足なんだ。
なんでだと思う?
……カミラちゃんと初めて一緒に寝たあの夜以来、毎日カミラちゃんが僕の部屋に来て一緒に寝たがるんだ。
そして、断り切れずに結局一緒に寝てしまい――カミラちゃんと一緒に寝ているという事によって、いろんな意味で緊張して僕は中々寝付けていない。
一番の問題は、カミラちゃんが僕を男だと認識していない点だ。
完全に僕の事を女の子として甘えてきている。
ただそれだけでなく、カミラちゃんは男嫌いで、男には容赦無く暴力を振るうという特性まで合わせ持っているんだ。
つまりこのままいけば、僕はいずれ彼女に酷い目に合わされる事間違い無し。
……こんなに小さくて可愛い外国人の女の子にだよ?
身から出た錆とはいえ、なんでこんな事になるんだと僕は神様を恨みたい。
僕がカミラちゃんに懐かれる事によって、寝不足になり困っているというのに、神崎君は僕の事を羨ましいと言ってきたんだ。
誰に対してもあまり怒った事が無い僕も、流石にあの神崎君の一言にはイラっときたね。
彼はラブコメの主人公みたいに、女の子達に困らされてしまえばいいんだ。
……もう既に、そんな状況になっている気がするけども。
今の彼はどう思っているのか知らないけど、学園の生徒にはリア充と認識されている。
その理由が、学園で桃井さんの次に人気がある、西条さんの恋人として認識されているからだ。
もしくは、桃井さんの妹であり、その可愛らしい容姿で少し前から人気が爆発している、桜ちゃんの恋人としてね。
ちなみに桜ちゃんが海斗君をお兄ちゃん呼びしている事は、学園生ならもう周知の事実になっている。
ただ、その事について彼の事を悪く言う人間は一人もいないんだ。
理由は二つ。
まず一つ目――この理由が大きいんだけど、神崎君の悪口を言って西条さんを敵に回すのが怖いからという理由なんだ。
だって、西条さん怖いもん。
あの人笑顔で脅迫するし、日本を代表する大手財閥のご令嬢だから、機嫌を損ねれば人生を終わらせかねない。
当然、僕だって大の苦手だ。
……まぁそんな理由から、神崎君に対して悪い噂を流そうとする人間はいない。
もう一つの理由は、神崎君がオタクだと周知されているからなんだ。
だから神崎君が桜ちゃんに妹呼びされている事については、この一言で終わらせられている。
『あぁ、だってオタクだもんな』っと。
彼がこの事を聞けばきっとショックを受けるだろうけど、桃井さんと家族になった事を知られたくないのなら、都合がいいと思う。
まぁ僕から見ても、西条さんが神崎君に惚れているのは間違いないし、桜ちゃんもかなり神崎君を慕っている。
もしかしたら、好きなのかもしれない。
ただ、学園生は知らない存在だけど、アリスさんもまず間違いなく神崎君に気が有る。
その上家族になった桃井さんまでもが神崎君を好きになったりしたら、彼の人生は大変な事になるだろうね。
まぁ流石にあの桃井さんが惚れるって事はないだろうけど……今の僕は、その展開を望んでいる。
理由?
そんなの決まってるじゃないか。
そっちの方が面白いからだよ。
……いや、うん、流石に嘘だよ?
確かに僕の苦労が分からない彼には、僕と同じような目に遭ってしまえとは少しだけ思ってるけど、流石にそんな酷い展開は望まない。
ただ、今まで一人で居た神崎君の学園生活が、これから楽しい物になればいいなって思ってるだけなんだ。
だから精々神崎君の取り合いは、西条さんとアリスさんの二人くらいでやってもらって、神崎君を時々困らせてくれるのが一番良い。
まぁそれはさておき、カミラちゃんが桜ちゃんの事を心配した理由についてだけど、今の桜ちゃんは凄く暗い表情をしているんだ。
だからカミラちゃんは桜ちゃんの心配をしていた。
「あ、うん、大丈夫だよ」
カミラちゃんに声をかけられた桜ちゃんは、笑顔をカミラちゃんに返した。
でも、すぐに暗い表情になってしまう。
まぁ僕はその理由を察していたけど、カミラちゃんにはわからないみたいだ。
「本当ですか? なんだか暗いですよ? もし何か悩んでいるのなら相談してほしいです」
カミラちゃんは立ち止まると、桜ちゃんの顔を覗き込んだ。
桜ちゃんは戸惑ったような表情をした後、嘘をつくのが嫌だったのか正直に話し始めた。
「あのね……桜、お兄ちゃんと一緒にアメリカ巡りするの楽しみにしてたんだ……。でも、お兄ちゃんと別々になっちゃって……それがちょっと悲しかったの……。でも、カミラちゃんや白兎先輩が一緒に居てくれるから、大丈夫だよ」
そう言って笑顔を浮かべる桜ちゃんだったけど、やっぱりその表情は寂しそうだ。
それに言葉にはしなかったけど、きっと神崎君がアリスさんと二人っきりで行ったという事も気にしている。
それが大好きなお兄ちゃんを盗られているからなのか、もしかしたら僕がさっき思い浮かべたとおり、神崎君の事が異性として好きだからなのかは、微妙な所だね。
「アメリカにはアリスお姉様たちに何度も連れてきて頂いているので、楽しい所に案内します!」
カミラちゃんは桜ちゃんに元気になってもらえるように、励まそうと頑張っていた。
今は僕がこの二人を預かっているのだから、彼女たちが楽しめるようにしっかりしないとな。
そう思って僕は彼女たちを楽しませようとするのだけど――僕はこの後地獄を見る事になった。
まず、猫耳ロリ少女と、天使のように可愛い黒髪ロリ少女の人気がヤバかった。
行くところ行くところで、滅茶苦茶アメリカ人に声を掛けられる。
そして何を言われているのか僕には全くわからない。
英語が分からない僕はカミラちゃんや桜ちゃんに通訳をしてもらうという、逆に面倒を見られる事になってしまっただけでなく、言い寄ってくる男の人に容赦なく暴力を振ろうとするカミラちゃんを押しとどめるのに、滅茶苦茶体力を使った。
……うん、もう帰りたい……。
アメリカ人に囲まれてクタクタになっている僕は、ただただそう思うのだった――。
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