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第103話「家出した少女」

「しまった……考えが甘かった……!」

 私は家の現状を確かめると、すぐに家を出た。


 どうして私が慌てて家を出たかというと――桃井が家出をしたからだ。


 桃井の頬を叩いた後、あの子の事が気になって一時間くらいしてリビングに行ってみた。

 するともう桃井は居なかったから、部屋に戻ったのかと思って念のため桃井の部屋に行ってみると、部屋のドアが開けっぱなしになってたの。


 そして家の何処を探しても桃井は居なかった。

 いくら大金持ちのアリスの家とはいえ、住宅街にある一軒家だからそれほど広くない。

 だから探せば、高校生一人を見つけられないわけがないの。


 なのに桃井は見つからなかった。

 つまり、もう家にはいない。


 本当に私の考えが甘かった。


 こんな夜遅くに桃井が外に行ったりはしないと思ってたけど、よく考えれば私の事を嫌ってるんだ。

 そんな私に頬を叩かれたりしたら、一緒の家に居たくないと思うのも当然だと思う。


 でも、あの馬鹿……この辺には、この前の奴らみたいなのがまだいるかもしれないのに……!

 とにかく、すぐに見付けないと!


 私は寝間着姿のまま貴重品だけもって、街灯の少ない夜の道を歩き続けた。



2



「ひどいひどいひどい! やっぱりあの人は最低! 暴力をふるうなんて信じられない!」 

 私は目から涙が(あふ)れるのも気にせずに、真っ暗な道を歩いていた。


 暴力をふるわれるなんて、私の人生で初めて。

 絶対に許さない。


 ………………でも、何処に行こう……?


 家を飛び出してきたのはいいけど、行く当てがないの……。

 

 ――お祖母ちゃん達の家に戻る事が出来ない私は、当ても無く夜道を歩き続けた。


 私が数時間歩き続けると、いつの間にか海君達と別れることになった山に着いた。


 何も考えずに歩いてたはずなのに、無意識のうちにここを目指してたなんて……。

 一度しか通った事が無い道をしっかりと記憶している自分の記憶力が、(うら)めしい。


 引き返そうかと思ったけど、どうしてか足が山に吸い寄せられた。

 そして、海君が別人の様になった場所についてしまった。


 この場所に足を踏み入れた瞬間、あの時の光景が目の前に浮かびだされた。

 もう海君達は居ないから、これは私の脳が見せている幻影。


 見たくもないのに見せてくるなんて、酷いと思った。

 まるで、あの時の光景から目を逸らす私に対して、『もう一度よく見てみろ』と言ってるみたいに。


 ……本当は、わかってる。 

 あの時暴れてたのが、海君だって事を。


 でも、信じたくなかった。

 だって、(かい)君は(うみ)君で、他の男の子とは違う優しい人なんだもん。


 なのに、あの時暴力を振るっていた(かい)君の顔は怖かった。

 私が怖いと思う、同級生の男の子達よりも怖い。


 その事実を私は受け止めれなかった。

 だから、拒絶をしたの。


 それが海君にとって酷い事を言ったって事もわかってる。

 だけど――。


 ガサッ!


「――っ!? 誰!?」

 突如後ろから物音がして、私はバッと振り返った。


 一瞬誰か悪い人が来たのかと思ったけど、違った。

 (むし)ろそっちの方が全然良かったと思う。


 だって振り返った私の前に居たのは――大きな(いのしし)だったから。


「あ……あぁ……」

 猪と向き合った私は、恐怖からジリジリと後ずさる。

 そんな私を猪は警戒してるのか、ジーっと私の方を見て微動だにしない。

 

 猪について知識はあまり無いけど、確か背中を見せないで、ゆっくりと離れれば大丈夫だったはず……。


 そう思った私はそのまま猪と向き合った状態で、ゆっくりと後ろに下がる。


 だけど――それが、よくなかった。

 暗闇で足場がしっかり見えないのに、よく確認もせずに後ずさったせいで、後ろに踏み出した右足が地面につかなかった。


 私は気付かないうちに、崖の端っこに来ていたみたい。


「きゃあああああああああああ!」


 完全に体重が後ろに行っていた私は、体勢を戻す事が出来ずに崖から転がり落ちてしまった。


「――い、いたい……」

 幸い崖が小さかったようで、転がり落ちた私は大怪我をしていなかった。

  

 結果的に猪からも逃げられたから、よかったのかもしれない。

 そう思って私が立とうとすると――両足に激痛が走った。


「う、うそ……? 両足とも、くじいてる……?」

 崖を転がり落ちた際に、両足をくじいてしまったみたい。

 こんな山の中で、歩くどころか立ち上がる事も出来ない。


 またさっきみたいに猪と遭遇しないとも限らないのに、この状況は凄く危ない。


 ううん、猪だけじゃない。

 蛇だっているはず。

 もしそんな危険生物が現れたとしても、今の私には逃げることが出来ない。


 どうしよう……また、涙が出てきた……。


 私は絶望的な状況に、一人途方に暮れるのだった――。

『ボチオタ』をいつも読んで頂いてありがとうございます(*´▽`*)


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