第96話「やはりそう簡単にはいかない」
「桃井さん、ちょっといいでしょうか……?」
「……何?」
私がわざと桃井に敬語で話しかけると、桃井が気まずそうに私の顔を見てきた。
そんな彼女に対して私は――
「なんで途中まで私が作ってたのに、こんな料理になるのよぉおおおおお!?」
と、本気で叫んだ。
「ひっ――!」
私がいきなり叫んだせいで桃井が怯えちゃったけど、私は悪くない。
だって、それほど桃井の料理は料理と呼べるものじゃないんだもん。
私の目の前にあるのは、紫色を含んだ得たいの知れない何か。
これを食べ物だなんて、私は絶対認めない。
だってこれ……犬でも食べないよ……。
こんなの食べるとしたら、そいつは絶対に変人に決まってる。
そもそも何で桃井が料理をしたかって事なんだけど、私が料理をしていたら何故か桃井が加わってきたの。
多分、海斗達をアリスにとられて落ち込んでたから、一人で居ると心細くて私のとこに来たんだと思う。
私の事は嫌いだけど、一人よりはマシって思ったのかも知れない。
それで桃井は自分も料理をすると言い出したから、私が途中まで作ってたのを桃井に任せて新しいのを作ってると――桃井が意味のわからない行動をし始めたの。
分量を無視するどころか、色んな調味料を次から次へと入れる始末。
でも私は、『あの完璧美少女である桃井がしてるんだもん。多分科学反応とか色々あって、最終的には美味しいものが出来るのよ』って結論付けた。
だけど、桃井の奇行は留まる事を知らなかった。
私はそんな桃井を横目に『大丈夫……あの桃井だもん……。きっと完成した時には美味しい料理が出てくるのよ……』っと、信じた(ただ現実逃避しただけ)。
そして完成したのが――この毒料理よ……。
もう何処から突っ込んでいいのかすらわからない。
とりあえず言えるのは、これは料理じゃないってこと。
まさか桃井にこんな欠点があったなんて……夕御飯、どうしよう……?
というか桃井のやつ、私が怒ったせいで部屋の隅にいって丸くなってるし。
本当、この子誰よ?
学園での桃井はどこにいったの?
まぁ、予想していたよりもウジウジしてないからまだマシだけど……。
私は隅に座って涙目になっている桃井の横顔を見る。
海斗と桜が連れて行かれて落ち込んでいるせいか、いつもよりも凄く弱々しく見える彼女を見ていると、何だかほっとけなかった。
だから私は、優しい声色を意識して桃井に声を掛ける。
「料理の仕方がわからないんだったら教えてあげるから、今度は一緒につくってみよ? ね?」
私が笑顔で桃井にそう言うと、桃井は私の顔をジーっと見た後、こう言った。
「海君が教えてくれるからいいもん……」
――と。
「「……」」
私達はしばしの間見つめ合うと――その後は揉み合いに発展するのだった。
この子いくら私が嫌いだからって、人の好意を無下にするのはどうなのよ!
さっきまでのシュンっとした可愛い桃井は何処にいったの!
というか海斗、料理までできるって本当に何でも出来過ぎでしょ!
あんたどんだけ学校で猫被ってたのよ!
神様も神様よ!
私の折角のアピールポイントを海斗も持ってるなんて、いくら何でも酷いよ!
もっと私にも長所を頂戴!
私は桃井とじゃれ合うなか、神様にそんなお願いをしながらこの世界は理不尽だと思うのだった――。
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