第94話「お兄ちゃんに自分を見てもらいたい妹は頑張ります!」
ネコクロの新作を載せました!
詳しくは後書きとその下を見てくださると嬉しいです(^^♪
「桜ちゃん、ちょっといいかな?」
カミラちゃんが乱入して大暴れするというアクシデントはあったが、アリスさんのおかげで気持ちが少し楽になった俺は桜ちゃんの部屋を訪れた。
……ちなみに、明日からも俺の走り込みは続くらしい。
やらかした事がやらかした事だから仕方ないのだが……俺、明日は筋肉痛で動けない気がする……。
そして部屋で大暴れをしたカミラちゃんは、今アリスさんの手によって凄く説教されている。
カミラちゃんは説教されている最中泣いていて可哀想だったが、俺はアリスさんの雰囲気に口を挟む事が出来なかった。
あと、猫耳少女で可愛いカミラちゃんとは仲良くしたいのだが、カミラちゃんのあの様子ではそれは無理そうな気がする……。
……まぁ話は戻るけど、俺が桜ちゃんに会いに来た理由は、昨日桜ちゃんを蹴り飛ばしてしまった事を謝る為だ。
「お兄ちゃん、もう大丈夫なの……?」
部屋から出てきた桜ちゃんは、心配した様に俺の顔を見上げていた。
昨日俺に蹴り飛ばされたにもかかわらず、俺の事を心配してくれるなんて本当にこの子は良い子だ。
だから、大切にしたいと思う。
「うん、もう大丈夫だよ。ちょっと話をしたいんだけど、いいかな?」
「あ、うん! じゃあ、入って!」
桜ちゃんは笑顔で俺を部屋へと招き入れてくれた。
もう寝ようとしているかなと思っていたけど、どうやら桜ちゃんはアリスさんの別荘にある大きなテレビで、アニメを見ていたみたいだ。
……しかも、オタク向けのアニメを。
「意外だね、こういうのも見るの?」
俺が桜ちゃんにその事を聞いてみると、桜ちゃんは恥ずかしそうにモジモジとし始めた。
「え、えっとね……カミラちゃんが面白いからって録画していたアニメを貸してくれたんだけど、面白かったらお兄ちゃんにも見てもらおうって思ったの」
桜ちゃんはチラチラと俺の顔を見上げながら、そう言ってきた。
「そ、そっか」
俺は桜ちゃんに対して少しドモリながらも、何とか笑顔を返す。
桜ちゃんが俺に紹介しようとしたアニメは、実は俺も見ていた。
そのタイトル名は――『英雄になり損ねた男は平和な異世界に転生したと思ったら、幼女女神に連れ戻されハチャメチャ生活を送るハメに』だ。
うん、タイトルなげぇよ……。
まぁこの作品はタイトルから何となく察することが出来るように、ロリが結構重要な立ち位置にいる。
ストーリーは、リア充生活を楽しんでいた主人公が幼馴染に告白をしようとした日、突如目の前に現れた幻想的な雰囲気を持つ幼女の手によって、異世界に飛ばされてしまう所から話が始まる。
異世界に飛ばされた理由は、この手の物語で有りがちの魔王を討伐するためだった。
そして主人公は魔王を討伐する力として『盗賊』の才能を見出されるのだが、その世界では『盗賊』という職業は馬鹿にされており、人気が無かった。
元々は『盗賊』になる予定だった主人公も結局剣士になってしまい、その事を知った幻想的な雰囲気を持つ幼女は大泣きしてしまう。
主人公はそんな幼女に対して罪悪感を感じたのと、元の世界に戻りたいという思いから、剣士としてちゃんと魔王を討伐すると誓うのだが――その主人公が魔王を討伐するために結成したパーティーは、主人公以外全員見た目がロリだった。
当然主人公は周りからロリコン呼ばわりされるし、パーティー名も『ロリコンパーティー』とあだ名付けされてしまう。
でも、そんなヒロイン達とハチャメチャな生活を送りながら、主人公達が成長していく話な為、俺は結構好きだった。
……決して、俺がロリコンという訳ではないぞ?
……本当だからな?
桜ちゃんの事は好きだけど、見た目がロリだからって訳じゃないぞ?
ま、まぁ、とはいえ、桜ちゃんがこのアニメをわざわざ俺に勧めようとしていたのが気になる。
この子は俺の趣味を把握している節があるから、もしかして俺がロリ好きだと思っているんじゃないだろうか?
まさか自分が幼い見た目をしてるから、俺にこのアニメを勧めようとしていたって事はないだろう。
彼女がそんな事をする理由が見えてこないからな。
俺がそう思って見ると、桜ちゃんが俺の顔をジーっと上目遣いで見つめていた。
「あ、このアニメは俺も見てたけど、好きだよ」
俺が桜ちゃんにそう言うと、桜ちゃんの顔がパーっと満面な笑顔に変わる。
「そうなんだ! やっぱりお兄ちゃんこういうの好きなんだ!」
なんだか桜ちゃんはとても嬉しそうに笑っているけど、俺としては凄く複雑な気持ちになってしまう。
だって……なぁ?
桜ちゃん今、思いっ切り『やっぱり』って言ったんだもん……。
これ、完全に俺がロリコンって思われてる奴じゃんか!
なんで!?
なんで俺は自分の妹にロリコンだと思われてるの!?
俺はあまりのショックな事実に頭を抱えてしまう。
そんな中桜ちゃんがクイクイっと俺の服の袖を引っ張てきて、ベッドの上に座るよう促してきた。
そして俺がベッドの上に座ると、桜ちゃんが少し遠慮した表情をしながらも、最後には思い切った表情で俺の膝の上に座ってきた。
「さ、桜ちゃん!?」
桜ちゃんは結構甘えん坊だが、膝の上に座ってきたのは初めてだったため、俺は凄く驚いた。
後ろから覗き見る様に桜ちゃんの横顔を見ると、彼女は頬を真っ赤にして俯いていた。
いつもニコニコ笑顔で抱き着いてきてはいるが、この様子を見るに流石にこの体勢は恥ずかしいのだろう。
なのにどうしてこんな事をしてきたのか……。
「あ、あのね……今日だけは、このままアニメ見てもいいかな……?」
桜ちゃんは俺の方を振り返ると、上目遣いでそうおねだりしてきた。
俺はそんな桜ちゃんのあまりの可愛さにクラっときてしまい、反射的に頷いてしまう。
そして俺達はアニメ鑑賞をするのだが――正直この時の俺は、アニメどころではなかった。
膝の上に抱えている桜ちゃんが可愛すぎるのと、彼女から凄く良い匂いがしてドキドキしていたのだ。
俺は妹相手に何を考えているんだ……。
そんな風に俺は頭を抱えたくなるが、桜ちゃんを後ろから抱きしめているため、そうもいかない。
……だって、落ちたら危ないだろ!?
俺が抱きしめたくて抱きしめてる訳じゃないからな!?
誰に言い訳をしてるのかわからないが、俺は心の中でそう叫ぶのだった――。
2
「桜ちゃん、昨日はごめんな?」
俺はアニメが一話終わった所で、桜ちゃんに昨日の事を謝った。
すると桜ちゃんはアニメを一時停止し、俺の方を振り返る。
罵倒されても仕方がない。
俺はそう思っていた。
それだけの事を俺は彼女にしてしまったのだから。
しかし、そんな俺に対して桜ちゃんは優しい――そして、可愛らしい笑顔で笑いかけてくれた。
「ううん、謝らないでお兄ちゃん。だって、お兄ちゃんは桜の事を助けてくれたんだもん。だから、そんなに自分の事を責めないで」
桜ちゃんはそう言うと、俺の体に抱き着いてきた。
そして、俺の胸の鼓動を聞くかのように、自分の顔を俺の胸へと押し付けてくる。
「でも、そもそも桜ちゃんがあんな目にあったのは、俺と桐山のせいだから……」
「それは違うよ。お兄ちゃんも桜も巻き込まれただけだよ。全てあの人達が悪くて、お兄ちゃんは被害者なの。だから桜はお兄ちゃんのせいだって思ってないし、凄く感謝してるんだよ」
「本当にそう思ってるの……?」
「うん! だって……あ……」
桜ちゃんは何か言おうとして、俯いてモジモジとし始めた。
「どうしたの?」
そんな桜ちゃんの事が心配になった俺が尋ねると、桜ちゃんは顔を真っ赤にして口を開いた。
「あのね……桜はお兄ちゃんが大好きなの!」
何を言われるのかと思ったら、俺にとって凄く嬉しい事を桜ちゃんは言ってくれた。
彼女が前から俺に懐いてくれていた事には気づいている。
今真っ赤になっているのは、俺と顔が近いから、再び膝の上に座ってるのが恥ずかしくなってしまったのかもしれない。
俺はここで先程のアリスさんの言葉を思い出す。
『好意をちゃんと受け止めないのは……相手を傷つけてる』
その言葉を思い出した俺は、こんな近い距離で直接伝えるのは凄く恥ずかしいけど、いつも好意を向けてくれる妹に答える事にした。
「俺も大好きだよ、桜ちゃん」
俺の顔を真っ赤になりながらも見つめてきている桜ちゃんに対してそう言うと、桜ちゃんはニコニコ笑顔でまた抱き着いてきた。
一瞬だけ残念そうな顔をした様に見えたけど、きっと気のせいだろう。
俺は抱き着いて甘えてくる妹がした表情に、何も疑問をもたないのだった――。
3
海斗達が甘い時間を過ごしている頃――
「うぇ~ん……!」
「よしよし、そんなに泣かなくても、もう平等院さんは怒ってないよ」
先程急に泣きながら僕の部屋に来たカミラちゃんを、僕はどうにかこうにかあやしていた。
「でもぉ……でもぉ……あんなにアリスお姉さまに怒られたのは初めてなのですぅ! もう嫌われちゃいましたぁ!」
そんな風に泣きながら僕に抱き着いてきたカミラちゃんに対して、僕は苦笑いを浮かべた。
平等院さんがこの子を嫌う事はないと理解していたからね。
彼女がカミラちゃんに接している態度を見るに、凄くカミラちゃんの事を大切にしている。
だから平等院さんがカミラちゃんを嫌う事はまずないと断言できる。
ただ、落ち込んでいる神崎君を元気づけてる所に乱入して、その上彼に襲い掛かったりしたら流石にそれは怒られるよね……。
でも、平等院さんも神崎君を抱きしめて元気づけるなんて、意外と大胆なんだなぁ。
神崎君は西条さんと出来てる物だと思ってたけど、ひょっとして平等院さんと付き合ってるのかな?
……いや、桃井さんの妹さん――桜ちゃんの事があるし、それもなんだか違う気がするなぁ。
多分、彼は巻き込まれ体質なんだと思う。
きっと彼は泥沼の様な恋愛関係に放り込まれる運命なのだろう。
……うん、ご愁傷さまだね。
僕はそんな風に神崎君に同情しながら、カミラちゃんをあやし続けた。
その結果、僕は凄く後悔する事になる。
「凪紗お姉さまと今日は寝たいです……」
さっきまで泣いていたせいで目を赤く腫らしているカミラちゃんが、ギュッと僕にしがみつきながらそんな事を言い始めた。
「だ、だめだよ!? それは流石にまずいよ!」
「なんでです……? 別に女の子同士だからいいじゃないですかぁ……。今日は一人で寝たくないんですぅ……」
そう言って、甘えるようにおねだりしてくるカミラちゃんに対して、僕は心の中で『僕男なんだけどね!?』とツッコんだ。
その事を口に出来ないのがつらい。
だって口にすれば、きっと僕は悲壮な目にあうから。
一体どういったら彼女を説得できるかな……?
「うぅ……」
僕が断る理由を探す為に頭を悩ませてると、カミラちゃんが泣きそうになりながら僕の方を見上げてきた。
この子って凄く甘えん坊だよね?
見た目もとても可愛いし……正直もう少し大人だったら(といって歳は一つしか変わらない)、僕はきっと彼女の事を意識してしまってた気がする。
それくらいカミラちゃんは可愛い。
でも、それとこれとは話が別。
流石に女の子と添い寝するなんて過ちを犯すほど僕は馬鹿じゃない。
そんな事をすれば、とんでもないフラグが立つ事間違い無しだからね。
そう思った僕はやっぱり断るのだけど――次のカミラちゃんの言葉で、コロっと意見を変える事になった。
「じゃあ、泣いちゃって気分転換にお風呂に入りたいので、一緒にお風呂に入ってくれたら寝てくれなくてもいいです……。でも、それ以外は譲りません……」
「よし、一緒に寝ようか!」
僕はカミラちゃんの選択肢に対して、躊躇なく一緒に寝る事を選んだ。
一緒にお風呂なんて入れば即アウト。
そしてカミラちゃんは一切引く気が無い。
そうなれば、このまま話がこじれて本当に一緒にお風呂に入るまでひかないと言われ出す前に、ここで決断するべきだと僕の勘が告げているんだ。
……うん、とりあえず、彼女が寝たら僕はソファで寝よう……。
そう結論付けた僕はこの後一緒にカミラちゃんと寝るのだけど――ガッツリと彼女に抱きしめられてしまい、結局その夜はベッドから出る事が出来なくて寝付けないのだった――。
本当、僕の人生はどうなるんだよ……。
――と、可愛い寝息を立てるカミラちゃんに抱き着かれながら、僕は頭を抱えるのだった――。
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