7話「魔王の願い」
魔王城、魔族の王が住む城。
そこで鳥を介して鏡に映し出された映像、召喚された英雄と魔族の男との戦いを魔王は玉座に座りながら見ていた。
「やっと召喚されたのねー」
魔王、それは人間に近い形、更に付け加えるなら女性の形をしていた。
胸は大きく、腰はくびれ、服装もどこか扇情的でサキュバスだと言われれば信じてしまいそうな姿だった。
もしかしたらサキュバスで合っているのかもしれない。
「戦争を仕掛けた甲斐がありましたね」
それは側近の言葉だった。体は小さく恐らくドワーフの女性だろう。
「タオ様の悲願が叶う時が・・・遂に・・・」
「コラコラまだ泣くのは早いわよー?」
タオと呼ばれた魔王はドワーフの女性の頭を撫でて落ち着かせながら思い出していた。
この世界に来た時の事、そして夢叶わず死んだ事を。
神に人間の味方をして欲しいと英雄として召喚され、当時の魔王を殆ど死に体で辛勝した。
そして・・・神の裏切り。
後少しだった、あと少しで絵流を開放して貰えるはずだった。
なのに・・・・。
叶えて貰えた望みは次回の転生時の記憶と性別だけ。
一番叶えたい願いは叶わなかった。
「さて、カチアもう泣くのは止しなさい。迎えの準備をするわよ」
タオはカチアと呼ばれた少女の頭から手を離し準備をするように言った。
「アレは完成してるんでしょうねー?」
「もちろんです、実験も済んでおります。後はタオ様が魔力を注ぎ、アレを相手に埋め込めば制御は奪えるはずです」
「なら良いわね。ルドルフには損な役を押し付けたわね・・・。私の願いの為に」
一人で敵陣へ向かわせ、相手の力を見る為だけに戦わせた。控えめに言っても捨て駒である。
「アレは死に場所を求めてました、タオ様の為に死ねたなら本望でしょう」
「そうね、ルドルフとの約束を守るわ、これからこの戦争を終わらせる」
死ぬのは自分だけで十分だと、悪魔の風貌をした優しき男はそう言っていた。
「きっと2戦目でラスボスが出てきたらビックリするわね」
さぁ、旧友との再会に行こうか。