3話「その世界は」
その街は中世ヨーロッパ後期に近い町並みだった。
道は石畳で出来ており、建物も石造、木造の両方が建っている。
だがその街は燃えていた。
所々に火の手は上がり、建物も崩れている。
街の音は悲鳴の嵐だった。
そんな中を異形の者が闊歩していた。
「魔族・・・」
そんな呟きがどこからか聞こえる。
魔族、それは人間を越える種族。
身体能力は勿論のこと、異世界において魔力と呼ばれる力も人とは桁が違う程有していた。
魔族は人間の敵という図は、現在、魔族と人族は戦争中だからに他ならない。
そんな魔族が人族の街を闊歩し、大きい城の城門前にたどり着いた。
それは詰まり人間の街は王手寸前だということだろう。
そして城の中では英雄召喚という儀式の真っ最中だった。
「シュトス様、準備は整っております」
そこには玉座に座る老人と、儀式を行う者1人だけのようだ。
シュトス、それはこの国の名でもあり、玉座に座る老人の名であった。
「つににこの日が来てしまったのか・・・」
「もう敵は城の前まで来ております。このままではこの国は滅びます。」
「解っている。儂が無能なのも、王と言っても適正ランクはCなのも。それでも英雄召喚を行わなくても良いように頑張って来た」
「シュトス様が頑張って来たのは皆解っております。ですがもう手はこれしか残っておりません」
「・・・そうじゃな、また異世界から哀れな者を呼ぶのか、ワシたちのエゴで」
「・・・。では儀式入ります」
シュトスは儀式に入ろうとしていた男にこれで最後と言わんばかりに皮肉を投げかけた。
「ガレオス、そなたが国王なら良かったのにな」
「・・・。私には適正がありませんでしたので」
適正、それがこの国、この世界の全てだった。
子供が産まれるとすぐに適正が調べられ、その子が将来どのような能力、スキルを有するのか調べられる。
それがこの世界の常識。
それがこの世界の神が与えた祝福。
産まれた時からその子が道を間違えないよう、神が道を敷きその上を歩く。
そんな世界に今、結城 藍は召喚されようとしていた。