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Link10「永遠の愛にする為に将来を誓います」

今回でラストの予定でしたがもう一話延びます。また前話ですがご要望を頂いて加筆をしました。その関係で前話のラストを今回の頭に持ってきています。

 彼女は愛してもいないオレの為に躯を捧げたのだろう。考えてみればそうだ。レインがオレを好きな素振りなんてなかった。急に女らしくしたり、不自然な行動はすべてオレを救う為にやっていた事だったのだ。その真実に胸の内が絶望へと染まっていく。


「それは違う! 勘違いするなよ! 躯だけじゃ条件を満たす事は出来ない! オ、オレは心からライの事が好きなんだ!」


 絶望の闇を退ける光が灯される。レインはボロボロに涙を流していた。オレはなんとも言えない喜悦に溢れ、彼女を強く抱き締めた。


「疑って悪かったよ。一瞬だけそう思ったんだ。オレの為に大事な初めてを捧げたのかなって。でもそうじゃないって分かった。レイン、オレを心から好きになってくれて有難う」

「オレの話を信じてくれたのか?」

「あぁ。オレを追いかけて背中に傷を負ったオマエの言葉は疑わないよ。それにレインは無意味な嘘は言わないだろ?」

「ライ……」


 レインは心の底から安堵した様子だった。今この時になって気付いた。あの現象は男だった頃のレインとの出来事を忘れさせないものだ。あれも大切な人生だ。それまで共に歩んできた出来事をすべて忘れてしまうのは、あまりにも彼女に悪い。


「信じてくれて有難う。でも男だったオレなのに、気持ち悪いって思わないのか?」

「なんでだ? オレの為に性別を変えて救ってくれたんだろ?」

「そ、それはそうだけど」

「寧ろオレは申し訳ないと思っている。オマエの元の人生を壊してしまったんだからな。本当にごめん」

「いやそれが実はその辺も複雑な事情があってさ。女神が言うにはオレは本来女に生まれる筈だったのに、何かの手違いで男になったみたいなんだ。それで女神はオレを女に戻す為に、オレの願いを叶えようとしたみたいだ」

「なんだそれは? ややこしいな?」


 レインが男に生まれたのが間違い? 元の元は女だった? 


「うん、そうなんだ。でも本来オレは女だったわけだから、ライが気にする事は何もないんだ。それにオレは女になれて……そ、そのこうやってライの傍にいられる幸福(しあわせ)があるからさ」

「レイン……」


 オレは彼女の頬に手を添えて口づける。これ以上の幸せがあるだろうか。初めてレインと結ばれた時のように、オレは心の底から幸福を噛み締めた。


「いてっ……」

「大丈夫か。無理させて悪かった、こうやって躯を起こすだけでも躯の負担になるんだよな。ゆっくりと休んでくれ」


 レインに無理をさせまいとオレは彼女を寝台に寝かせようとしたが、逆に彼女はオレから離れようとしなかった。


「レイン?」

「このままでいいんだ。この方が落ち着く」

「レイン……。オレもオマエが女でいてくれて嬉しいよ。オマエが命懸けで守ってくれたオレの命は、この先もずっとオマエだけのものだ。ずっと傍にいて欲しい」

「も、勿論、オレはずっとライの傍にいるぞ」


 レインが命を張って救ってくれた命だ。オレはこの命が尽きるまで、彼女の傍を離れるつもりない。これからはオレが彼女をずっと守り続ける。そうオレは心に強く誓った……。



.。.:*・゜+.。.:*・゜+.。.:*・゜+.。.:*・゜+



 反乱軍と殺し屋一味の事件から数日後、病室で報告があった。三日後に殺し屋一味の処刑が決定されたと。その時のオレは松葉杖から解放されていて、団長に無理を言い、殺し屋一味の処刑日に王宮へ連れて行ってもらった。


 本来処刑に至るまでは何度も裁判が繰り返されるが、殺し屋一味は例外であり、早い段階で刑が決定された。その理由は数多く出た被害者達への弔いだ。そして処刑日にオレが王宮に行ったのは奴等の最後を見るまでが仕事だと思ったからだ。

 

 自分が怪我まで負って関わったというのもあるが、何より大事なレインが何度も傷づけられ、奴等の罪が裁かれる瞬間を目にしないと気が済まなかった。あの日、オレは最後に殺し屋首領を見た。


 他の奴等は死を目前にして怯えていたが、彼女だけは腹を括ったのか、虚勢を張っているのか、その真意は分からないが平然としていた。レインの性別の違いでオレはあの女に殺される運命にあった。


 憎むべき相手なのだが皮肉にもレインと結ばれるきっかけを作ったのもあの女だ。そんな複雑な思いを抱いたまま、オレは彼女の最後を見届けた。続いて反乱軍の連中は処刑に至らなかった。


 力任せで刑を下す事は出来たが、きちんと彼等の声を国王に伝え、今後暴動が起こらぬ対策を取って幕を閉じた。それから数週間後、怪我を負っていたオレとレインは回復していき、それぞれの日常へと戻ったのだった……。



.。.:*・゜+.。.:*・゜+.。.:*・゜+.。.:*・゜+



 ――凄い人だかりだ。


 オレはリラックス・ウサギ専門まで来ていた。今日は店の外まで人の行列が作られている。その原因はつい最近に新しいバージョンのリラウサが誕生し、それが話題となっていた。洋服を着せたウサギや♂バージョンのウサギなどなど。


 ♂リラウサは単体でも売っているが、♀リラウサとカップル売りされており、恋人達や夫婦へのプレゼントとして、よく送られているようだ。どうやらカップリングをもっていると、相手と生涯をずっと一緒に過ごせる、そういう意味をもつと聞いた。


 そしてレインも♂リラウサを気にしている。この間、彼女の部屋に行った時、オレがプレゼントしたリラウサに手作りのウェディングドレスを着せていた。それを見た時、レインがペアとなる♂ウサギを送られる事を待っていると気付いた。


 すなわちレインはオレとの未来を決めているという事だ。感極まったオレはまた男一人でリラウサ専門店にまで足を運んだのだ。女性や子供が多く並ぶ列に入るのは若干、いやかなり抵抗あったが、愛しのレインの為だ。意を決して並んだ。


 一時間ほどしてやっと店内へと入れた。想像していたよりも人数が少なく驚いた。どうやら人数と時間制限をおこなって上手く調整しているようだ。だから店内は落ち着いて見て回る事が出来る。


 何とも言えない熱気や視線を感じる一方で、恋人同士のような愛に溢れた雰囲気まで漂っていて、以前訪れた時よりも活気づいているように見えた。店内の中央にはカップルリングされたリラウサが置かれ、寄り添う姿から幸せオーラが溢れている。


 ――ああやってレインの部屋にも飾られるのか。


 喜ぶ姿のレインを想像してオレは口元が綻んだ。


「あれ~、いつぞやの兄ちゃんじゃん?」


 目的のウサギを探していると、以前会計してくれた店員が声を掛けてきた。


「どうも」


 オレは簡単に挨拶をする。オレの事を憶えていてくれたのか。男一人で買いに行ったから印象強かったのかもしれない。


「この間のリラウサは彼女喜んでくれたのかい?」


 店員は気さくに会話をする。


「はい。リラウサのおかげで彼女と恋人同士になれました」

「それは良かったな! 今日はまた彼女に新しいウサギをプレゼントかい?」

「はい、今日は♂リラウサをプレゼントしたいのですが、単体で正装したウェデング用の♂ウサギはありますか?」

「あぁ~生憎その単体は売り切れなんだよ。次の入荷は一ヵ月後だ」

「……そうですか」


 心の中でオレは肩を落とす。人気のウサギだ。品切れでも仕方ない。店員は悄然とするオレの心を読んだのかもしれない。


「あそこのディスプレイ用のもので良ければ出せるぞ」


 店員が指差す方向には銀色のフロックコートを着た♂リラウサが飾られていた。優しい顔立ちでバックに飾られた薔薇の造花と似合って上品に見え、特別なオーラを放っている。


「ディスプレイ用と言ってもほんの数日前に飾ったばかりで、お客様の手に触れられていないし綺麗だぞ」

「いいんですか?」

「今回限りの特別だ。兄ちゃんはうちのリラウサで見事彼女の心をゲットした強者だからな」

「有難うございます!」


 オレは店員の厚意に甘えて無事に♂リラウサを手にした。一目でオレはそのリラウサを気に入った。しっくりする感じがある。このウサギならレインにプレゼントしたリラウサともお似合いだ。


 後はこれを渡すタイミングだな。今後のオレ達の将来に関わる。オレはこのリラウサと一緒にレインへプロポーズしようと考えていた。彼女は受け入れてくれるだろうか。いや受け入れてくれると信じている。


 もうオレはレイン以外の女性は考えられない。そう思う気持ちはレインも一緒だと信じている。きっと喜んでくれる事だろう。その姿を想像するだけでオレはとても幸せな気分となった……。



.。.:*・゜+.。.:*・゜+.。.:*・゜+.。.:*・゜+



「レイン、次のオレの休みに部屋へ遊びに来ないか?」


 三日前、仕事の帰りにオレはレインの店で飯を食べた。その時に何気なく誘ってみた。突然だったからかレインは驚き、その後に顔を赤らめたのが不思議だった。躊躇っている様子に不安となったが、彼女は静かに頷いてくれた。


 そして当日♂リラウサを渡せる日が来た。オレは早速レインの部屋まで向かえに行くと、彼女は部屋を出る土壇場になって、ドレスアップさせたリラウサを持って出た。オレにとっては願ってもいない幸運だ。


 これから♂リラウサをプレゼントするんだ。カップリング姿を目にしたら、レインの喜びも倍増するだろうし、互いの未来についても語りやすい。オレは部屋に着くまで、ずっと気持ちが高ぶっていた。


 レインの方は王宮というのもあって(オレの部屋は王宮の一室にある)始終緊張している様子だった。その間、ずっとプレゼントしたリラウサをギュッと抱きかかえる姿が、何とも愛らしかった。そして、ようやく♂リラウサとレインが対面する。


「どうぞ」


 オレはレインの手を取って部屋へ招く。彼女は足を踏み入れた瞬間、動きが止まった。ドアを開けた少し先には例の正装姿の♂リラウサをちょこんと座らせていた。レインの目につくよう、わざと置いておいたのだ。


「ラ、ライ、あそこに座っているのはもしかして?」


 彼女の声が弾んでいる。昂奮しているのが分かった。


「あぁ、そうだ」


 オレが答えるとレインは♂リラウサの方へと走っていく。ウサギの目の前まで行くと彼女は食い入るように見つめ、手に持っていた♀リラウサと寄り添うように並べる。それを見つめる彼女の瞳はキラキラと潤んでいた。


「そのリラウサ、気に入ってくれた?」

「ライ、このリラウサどうしたんだ!」

「ここ最近ペアのリラウサが流行っているだろ? もしかしてレインもそれを意識して、プレゼントしたリラウサにドレスを作ったのかなって思ってさ」

「き、気付いてたんだ!」


 それは気付くとも。レインがオレとの未来を考えてくれているんだ。オレもきちんと彼女に誠意を見せて応えないと。


「レインはオレとの将来を考えて、リラウサにドレスを作った?」


 オレはすぐに核心へと迫った。


「そ、それは……」

「もしかしてオレから片割れをプレゼントされるのを待っているのかと思ってさ」

「え?」


 レインは瞳をパチパチさせる。オレが気付いていた事に驚いているのだろう。


「レイン、それはオレからの言葉を待っていたって事だろう? オマエがオレとの将来を考えてくれていて、すっげー嬉しかったよ」


 正直な気持ちを伝えた時、レインの瞳からスーッと雫が零れた。


「レイン?」


 予期しなかった展開にオレは目を丸くする。何かマズイ事を口にしたのかと焦る。


「ライ、有難う。ずっと男の子のリラウサ、欲しかったんだ。貰ったリラウサと隣に並べたら、ずっとライと一緒にいられるような気がしてさ」


 とんだ杞憂に過ぎなかった。レインは見事にオレの欲しかった言葉をくれた。より心が強く一つに繋がったように感じた。伝えるなら今だ。


「レイン、オレはオマエと心を通わすようになって、愛しさも大切さも日に日に大きくなっている。それはこの先も変わらないって自信がある。オレにはレイン、オマエだけだ。だからこの先もずっとオレの傍にいて欲しい」


 将来を誓う言葉だ。それにレインは驚きの色を見せる。


「オレ、ライのお嫁さんになるって事か?」

「あぁ、それは嫌か?」


 レインは嬉しさより驚きの方が勝っているようで、オレの自信が萎む。ここまで来て実は結婚まで考えていなかったと言われるのはショックだ。


「嫌なものか! オレもライと生涯を誓える事が出来たらって夢見てたんだ! オ、オレも、ラ、ライだけだ!」

「レイン!」


 咄嗟にオレは彼女の躯を強く抱き締める。全身に嬉しさが滲み出て触れられずにはいられなかった。そしてレインと瞳を合わせる。はにかんでいる彼女の表情を見て、オレは唇にキスを落とした。


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