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故郷へ2

すみません……なぜか、銀河の英雄な伝説的なアニメ全一一〇話を一気見していたので更新が全くできませんでした。


次は外伝一〇話一気見予定とは口が裂けてもいいませんw

「んー、やっと魔の森を抜けたねえ」


 鈴木さん@ドワーフ佐藤さんの背嚢の上。


 鈴木さんの言う通り……一行は、魔の森を含む森林地帯の山道を抜け、街道を目前にしつつあった。


 既に頭上にあった木々の梢もまばらになり、青い空の比率が高くなってきている。


 大きく伸びと欠伸を見せながら言う小人コロポックル鈴木さんに、後続のダークエルフ山田さんが頷きながら応じる。


「そうですねえ。 魔の森を抜けるのに三日もかかっちゃいましたからねえ。


 普段なら、ゴリゴリのパラメータ任せで半日も掛からない行程なんですけど。」


 人のいい笑顔を見せながら、また山道を移動しながら息も切らさず言う山田さん。


 それに、ドワーフ佐藤さんが言葉を継ぐ。


「確かにのう。


 こう言ってはなんじゃが……我々全員、人の限界を超えておるからのう。


 ほぼすべてのパラメータがカンストしておるし。


 言うなれば【魔法使いがドラゴンを殴り殺せる】レベルじゃ。


 その気になれば、この半径一〇〇キロの魔の森だろうと一時間で抜けることも可能なわけじゃし」


「そうだねぇ……【時速一〇〇キロ】で【一時間】歩けば一〇〇キロ移動できる訳だしねえ」


「まあ、鈴木さんはどっちみち我々のリュックの上でしょうけどね」


「「「あーっはっはっは」」」


 鈴木さん一行は山道を進みながら……いつもの【どっと笑い】を見せていた。

「いやいやいやいや!!


 山道一〇〇キロを三日で走破すること自体、おかしいですから!!」


 ビシッ!!


 マークトは指をピンと伸ばした掌で、古式ゆかしく突っ込んでいた。


 だがピンと伸びているのはその掌だけで、その身体のほうは疲労を隠せない様子でやや前傾していた。


 明らかに、マークトは疲労している様子だった。


「「「 ………… 」」」


 同様にその一行、ハイファ、ミリア、リリアもまた疲労を隠せない様子であり、歩いてはいるが、完全に無言………それは死体が並んで歩いているようにも見えた。


 先の言葉通り、一行は山道一〇〇キロを三日で踏破していた。


 平坦な土地ならまだしも、アップダウンもある深い森の中の獣道を、徒歩で一日平均三三キロを三日間歩き続けたという計算になる。


 しかも……合間合間に【魔の森】に棲む【魔物】との戦闘をこなしながらである。


 それも、並の冒険者や軍隊も寄せ付けないレベルの【魔物】。


 そしてそのレベルの【魔物】が溢れかえっている【魔の森】。


 わかりやすく言えば、ラスボス手前のフィールドか、ラスボスを倒した後の【やり込みユーザー】の為のフィールド、というレベルの場所である。


 それでもマークトたちが生存し、三日で一〇〇キロの行程を踏破できたのは……二つの理由があった。


 一つは、マークトたちが【それなりに】名の通った【それなりに】レベルの高い一行であるという事。


 そしてもう一つは………マークトたちをはるかに上回る【レベル】の鈴木さん一行が【魔物】たちを瞬殺で片付けていたという事。


 マークトたちが……魔法の剣や魔法の杖を構える暇もないほどの瞬殺。


 マークトが数えただけでも二十数度の戦闘があった……それも、マークト一行より格上の【魔物】との戦闘。 そのことごとくが瞬殺であった。


 もしかしたら……マークトたちが全く気付かない間に処理された戦闘もあったかもしれない。


 機会があればその【作業工程】は語るが……鈴木さんたちは【異世界日本人村】の住人。


 【神話級】【英雄譚級】の冒険者たちの数倍のレベルである彼らにとって、それは児戯にも等しい【単純作業】であった。


 そしてその【作業工程】を何度も見せつけられて……ハイファもミリアもリリアも、その瞳から【反抗】の色を全く失っていた。


「「 ……… 」」


 全く無言のまま、マークトの左右の肩にそれぞれ手のひらを置くミリアとリリア。


 不審そうに振り返るマークトに、ミリアとリリアは静かに語った。


「「………あの人たちに、逆らわないで。


 もし逆らうなら……私たちのいないところでやって欲しい……」」


「………」


 真顔で静かに言う妹ズと、無言のままこくこくと頷くハイファ。


 それにマークトは………憮然とした表情を見せることしかできなかった。

 で。


 一行は完全に森を抜け、街道に至った。


 街道と言っても、人が一人も歩いていなかった。


 それこそ【街道を三歩歩けば馬車襲撃シーンに出くわす】レベルの【テンプレ転生者】マークトをもってしても、誰とも遭遇しない。


 よほど人里から離れているようだった。


「えぇと、こっち方面はあんまり来たことがないんだけど……ずいぶんさびれた土地だねえ」


 それは的確で正直な、鈴木さんの感想。


 マークト一行は、【魔の森】を抜けて真っすぐにマークトたちの故郷を目指していた。


 そこへ至る街道が人っ子一人いないという事は……。


「あー、なんか、すいません……。


 僕たちの故郷、とんでもない田舎なもので……」


 申し訳なさそうに鈴木さんに言葉を返したのは、マークトだった。


「王都から一番離れた辺境の村、て言うのが売り文句の小さな村ですから。


 一〇〇年ほど前にひらかれた開拓村で……まあ土地の痩せた寒村って訳じゃないんだけど。


 けど周辺の村からもぽつんと離れた単独の村ですから……あまり商人も寄り付かなかったんですよね。


 ………ふむ。


 今にして思えばあの村……亡国の王族が隠れ住むにはちょうど良かったのかもしれないなぁ……あるいは、最初からそれを狙って村を興したのか。


 まあとにかく、それくらい辺鄙な村なんですよ」


 自嘲気味に言うマークトに、妹ズが、むう、と小さく唸った。


 そのまま不機嫌そうに唇を尖らせる。


「……辺鄙じゃない。 私たちの村は、周りの村からちょっと距離が離れているだけ」


「……辺鄙じゃない。 私たちの村は、出来てまだ一〇〇年しか経っていない、新興の村」


「いや、それさっき言ったから。


 そういう反発のしかたこそ田舎者の証拠だからね!


 なんでこんなところで小さいナショナリズムを弾けさせてんの?」


「「 ………むぅ。 」」


 マークトのツッコミに、妹ズは不機嫌そうに、ぷい、と横を向いて拗ねてしまった。


 そのやりとりに鈴木さんたちは苦笑を見せていた。


「まあまあ。


 どんな所でも住めば都って言うしね。


 自分の生まれ故郷を大事に思うのは、悪い事じゃないさ。


 私たちなんて………いくら大事に思っても、いくら懐かしく思っても、【本当の】故郷には帰れない訳だしねえ」


「【本当の】……故郷………」


 苦笑交じりの鈴木さんの言葉を拾い、反芻したのは……ハイファだった。

 ハイファは……【誤解混じり】ながらも、【異世界日本人村】の村人の多くが【異邦人】であることは理解していた。


 その【異邦人】の口からこぼれた、故郷、という言葉。


 そして【帰れない】という言葉。


 それに、ハイファは……少し悲しそうな視線を鈴木さんたちに向けた。


 そこに在るのは、同情。


 帰るべき【クニ】に帰れない【異邦人】に対する憐れみの思い。


 【ツンデレ】さんは本来……優しいのだ。 【ツン】と【デレ】を向ける対象以外の存在には。


 その視線と言葉に、鈴木さんたちはもう一度苦笑していた。


「ははっ。 そんな目で見なくてもいいさ。


 私たちは別に、寄る辺のない異邦人って訳じゃない………それこそ【【異世界日本人村】じん】って奴さ。


 そりゃ懐かしく思い出すことはあるけど……まあ、同じ境遇のみんなでワイワイ騒ぎながら暮らしているんだよ。


 私たちは結構……この世界を楽しんでいるんだから。」


「………………」


 鈴木さんの言葉に、ハイファは無言のまま視線を伏せる。


 無言のままだったのは……返すべき言葉を思いつかなかったからだった。


 その様に……鈴木さんたちは肩をすくめてみせる。


「やれやれ……調子が狂うな。


 まあともかくだ。


 私たちの役目……【魔の森】脱出までの護衛は、ここで終了だ。」


 やや強引に言葉を切ると、鈴木さんは視線を街道の別の方向、つまりマークトたちの村とは反対方向の街道に視線を向けた。


「君たちの村までは、護衛はもういらないだろう?


 だったら私たちは……情報収集のために近隣の村や町を巡ってくる。


 数日後に、君たちの村に行くから。


 それまでまあ……故郷の人たちと積もる話もあるだろうから、しばらくのんびりしなよ」


 鈴木さんのその言葉に、マークト一行は鈴木さんたちと別れた。


 そしてマークト一行は故郷の村に足を向けていた。

 で。


 マークトたちの後ろ姿が見えなくなるまで見送った鈴木さん一行。


 鈴木さんたちは……先の言葉通り、近隣の村や町を巡って情報収集を行う予定だった。


「「「 ………。 」」」


 鈴木さんたちは……それぞれ無言で自身の【アイテムボックス】を操作していた。



 ダークエルフ山田さんは【アイテムボックス】から……馬ほどの大きさの狼の死体を取り出していた。 【一角雷狼】と呼ばれる……この世界において【国崩し】の神話を持つ霊獣の屍を。 【闇】の【精霊魔法】である【死体使役クープードル】で、操るつもりであるらしかった。



 ドワーフ佐藤さんは【アイテムボックス】から……側車サイドカー付きの古いオートバイを取り出していた。 もしそのオートバイを見て『【九七式側車()付自動二輪車()】じゃねえか!?』と叫ぶ輩がいたらそれは間違いなく古い時代の軍事オタクだろう。



 小人(コロポックル)鈴木さんは【アイテムボックス】から……なんと【ドローン】を取り出していた。 どうやら【ドローン】に乗ってそのまま空を飛ぶらしい。 【ドローン】に跨って空を飛ぶフィギア……ある意味、鈴木さんが一番【ファンタジー】であるかもしれない。


 三人は、それぞれの乗り物で移動するつもりであるらしかった。


 で。


 それぞれがそれぞれの移動の準備中……ダークエルフ山田さんが、不意に鈴木さんに声をかけていた。


「やれやれ……この世界に来て、初めてじゃないですかね……」


「うん? 山田さん、何がかな?」


「【異邦人】だからって【気の毒がられた】のがですよ。


 まあ我々は【日本人】……いままで能力チートを頼りに生きてきたわけですが。


 この世界の人に……恐れられこそすれ、【可哀想な人】扱いされたのは初めてだという事です」


 肩をすくめながら言う山田さんに、既にドローンに跨った鈴木さんは苦笑交じりに言う。


「ははは……山田さん、もしかして、あのが気に入ったのかな?


 もしかして……本気で【仕え】る気になったとか」


「あはははは……まあ、ちょっと真面目に手伝ってあげる気になっただけですよ」


 そう言って静かに笑うダークエルフ山田さん。


 残念なことに……鈴木さんの言葉に否定とも肯定とも答えていなかった。


「………山田さん、あんた、チョロすぎないか!?」


 鈴木さんはそう言って、呆れた様子で突っ込んでいた。


 なお、ドワーフ佐藤さんは……黙したまま笑顔を見せていた。


 鈴木さんに問いかけられる前に……手動ミッションを操作し、一二七二ccのエンジンを大きく吹かして誰もいない街道を発進し(逃げ)ていった。

結論:みんなチョロい

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