故郷へ
第二章 建国編(仮)ですー。
ちなみにいま、剣黒変と誤変換されましたーw
……なんで?(汗)
いつ何処で学習したの?(大汗)
月の奇麗な夜だった。
魔の森……そう呼ばれているこの一帯にも、月は淡く優しく降り注ぐ。
月の光は、向かい合って立つ男女を優しく照らしていた。
静かに語り合う二人を気遣うように……今夜は風もなかった。
「そう……マークト、あなたはニホンと言う国から来たの……」
夜の静けさを壊さないよう気遣っているかのように、ハイファは静かに……自分の真正面にいるマークトに応じた。
その言葉に……マークトもまた、静かに答える。
「………ああ。
異世界……そう、【この世界】とは【異なる】世界。
そこから、僕は来たんだ。
……ごめんな、ハイファ。 今までずっと黙ってて………」
言いながらマークトは……目の前の少女に静かに頭を下げる。
それに慌てたように、ハイファは前に進んで……マークトの手を取った。
「……ううん、そんなことは気にしてない。
私もあなたに、【血筋】のことを隠してたし……私の方こそ、あなたに謝らないといけないわ。
ごめんなさい……あなたをずっと騙してて。
そしてずっと……あなたの事をずっと好きだったのに。
素直になれなくって……子供みたいな強がりばかり言ってしまったわ。
本当に、ごめんなさい……今までずっと……そしてこれからも大好きよ、マークト」
真剣な表情で……瞳を潤ませながら、ハイファは真っすぐにマークトの瞳を見つめていた。
「………」
そしてマークトもまた……静かな表情で、ハイファの瞳を見つめるのであった。
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その内心で、マークトは超焦っていた。
「(やばい………ハイファ、超デレてる!!
【あれ】からずっと……ずっとデレてる!!
え? え? なんで急にこんなコトに!?
何そんなに熱い目で見てんの?
なんでそんなに物欲しそうに瞳うるうるしてんの?
どうしてそんなにオッパイプルーンプルンしてんの?(混乱)
……ちゅーなの?
……ちゅーしようっての!?
どうしてそんなにデレちゃってんの!!??
つ、ツンデレって……【ツン】と【デレ】の二面が交互ぐらいに来るんじゃないの!?
そ、それが……【ツン終了のお知らせ】とばかりにずっとデレてる!?
昆虫の脱皮かってーの!!
昆虫の脱皮……いわゆる、【変態】!?
つ、つまり……【ツンデレ】と【HENTAI】は同義語という事なのか……っ!?)」
爆乳ツンデレツインテ幼馴染さんの急激な変化に、平静を装いながらも【状態異常:大混乱】にあるマークト君。
一応注釈しておくと。
【ツンデレ】と【HENTAI】は同義語ではないが、親和性は高い。
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なお、マークトの言う【あれ】とは……当然、プロポーズ直後の大混乱である。
意を決して自分の思いを伝えたハイファは……それからずっと【状態異常:デレ】である。
よほどのことがない限り、それは解除できないであろう……つける薬が、ないのだ。
ちなみに……マークトは知らなかった。
知らない世代だった。
【ツンデレ】とは、今の世でこそ、マークトの言う通り、【ツン】と【デレ】の二面性を持つ人物、あるいはその状態を指すが………昔は【初期症状はツン、やがて末期症状のデレ】という、不治の病を指す言葉だったのだ。
言うなれば【慢性ツンデレ症候群】に、【ステージ移行型ツンデレ症候群】。
ハイファさんは、後者であるらしかった。
で。
マークトは今まで見たこともない、ハイファの恋愛麻疹状態に、大いに戸惑っているのだった。
そしてその好意は全て……マークト一人に向けられていたのだ。
「(お、落ち着け、僕。
そ、そう……僕はもう、プロポーズしたじゃないか。
いまさら、ち、チューぐらいで、な、何をそんなにうろたえているんだ、僕。
まるで【ヘタレ】の【テンプレ転生者】じゃないか……あっ」
そこに思考が及んだところで……マークトは、ふと我に返った。
「(……そうだった。 僕、【テンプレ転生者】だった。
てことは……)
……おい、ミリア、リリア、やめろ」
不意にマークトは、鋭く制止の言葉を口にした。
その言葉に……夜陰の中、二つの気配が大きく動いた。
「「 ……… 」」
がさり。
【魔の森】の木陰から……二人の少女が歩み出ていた。
マークトの言葉通り、それは彼の義理の妹の双子……ミリアとリリアだった。
夜陰の中、同じように昏い目を見せながら……ぼそり、と呟く。
「兄……さすがは【勇者】……私たちの気配を察するなんて……」
「兄……いくら兄が【勇者】だったからって……それで即兄と姉の交際を認める訳にはいかない……」
「そう……いくら兄が【王国復興】に手を貸すと言っても……父さまがそれを受け入れるかどうかは別問題……」
「せめて父さまの許しを得るまで……私たちは、姉の操を守らないといけない……」
「「……そう、仕事だから仕方ない……」」
朴訥な口調で、静かに言う妹ズ。 最後は奇麗にハモっていた。
それに、マークトはため息をついた。
二人の言葉の内容もそうだが……マークトは、自分が【テンプレ転生者】であることに、歎息を隠せなかった。
それはまさしく【テンプレ】……【肝心のところでHなチャンスを逃す】ということ。
言うまでもない事だが………マークトが夜陰に潜んだ二人の行動を制することができたのも、【テンプレ】だからである。
【どうせ邪魔が入る】……そんな気がしたのである。
馬鹿馬鹿しいようだが……彼は【テンプレ転生者】。
彼は、まさしくそういう人生を送ってきたのだから。
「だからお前ら……わかったから。
ナイフを仕舞え!!
いいかげん、僕の頸動脈を人質に取ろうとするんじゃないよ!?」
「「 ……… 」」
マークトに行動を見抜かれ、完全に機先を制され……妹ズは憮然としながらマークトに従った。
その光景に、マークトはようやく安堵のため息をついていた………どう見ても、疲労の色が隠せていなかった。
なお。
【テンプレ】は…………まだ終わっていなかった。
「な、なによ、あなたたち……ずっと見てたの!?
も、もう!! 知らない!!」
そう言ってハイファが『きー』とぷんすこして見せる。
ここまでが、【テンプレ】であった。
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と……テンプレ御一行四名様に、不意に声をかける者がいた。
「全く……あんたたちは、夜中になにやってんだい……。
ここは【魔の森】だよ?
まあ、私たち三人は今更だけどさ。
あんたたち四人は、レベルもまだ低いんだ………油断してると、本当に死んじまうよ?」
呆れたように言うのは……鈴木さん@山田さんの肩の上。
つまり、【ダークエルフ】山田さんの肩の上に座った小人鈴木さんだった。
鈴木さんの言葉に、【ダークエルフ】山田さんは苦笑を見せながら応じる。
「まあまあ、鈴木さん。 いいじゃないですか。
我々がいるんですから、【滅多なこと】にはならないと思いますよ」
「そうじゃな。
仮に【滅多なこと】になったとしても、山田君の【闇魔法】があるからな。
はて……【死霊術】だったかな?」
「【死体使役】ですよ。 つまり、【ゾンビ作成】。
【滅多なこと】になっても……自分の足で歩くことはできるようにして差し上げますから」
「まあ自分の意志じゃあないんだけどね」
「そりゃそうですよ、ゾンビなんですから」
「「「わーっはっはっは」」」
いつの間にか混じったドワーフ佐藤さんも交え、三人は昔の日本映画のように【どっと笑い】を見せていた。
「「「「 ぞ、ゾンビ化って…… 」」」」
年上三人のブラックな【どっと笑い】に……マークト一行は、ドン引きしていた。
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説明が遅れてしまったが……マークト一行四人と鈴木さんたちのパーティ三人は今、【魔の森】の中にいた。
マークトたちは自分たちの故郷に帰省、鈴木さんたちはその護衛である。
単独パーティでは【魔の森】を抜けるのが精一杯のマークト一行、その護衛を務めているのが鈴木さんたちである。
ちなみに今は、野営中。
【日本製】のレトルトな夕食も片付き、そろそろ不寝番を決めようかというタイミングであった。
なお……移動手段は、徒歩であった。
もっと文化的で文明的な移動手段はないのかと問いただすマークトだったが……帰ってきた返事が、『健康の為』、だった。
【日本人】は……確かに運動不足に陥りがち。
呆れつつも思わず納得してしまったマークトであった。
『あとは……気分の問題』、そう言った鈴木さんは【異世界生活】を満喫しているようだ。
で。
……なぜ、故郷を目指しているのか。
それは……【例の計画】の下準備をするためである。
【例の計画】……つまり【王国再興】。
【異世界日本人村】の有志のバックアップにより……ハイファ達の悲願、【王国再興】が成されようとしていた。 ほんのイベント感覚で。
暇を持て余した百人規模の【勇者】の【遊戯】が、静かに始動しようとしていたのだ。




