お知らせ6
……今日はちょっと帰るの早かったw
「で……マークト君、どうするんだい?」
ニヤニヤ笑いながら、鈴木さんは問いかけていた。
「………」
鈴木さんの問いに……沈黙するしかないマークト。
マークトは、考えてみた。
当初の予定通り、幼馴染と手を取りあうという事……それは即ち、彼女が【生贄】に捧げられるのを阻止する、という事になるだろう。
だがその場合……ハイファを【生贄】に捧げようとする側の妹ズと敵対することになる。 結果的に、妹ズの命を奪う事になるかもしれない。
少なくとも……今まで家族だと思っていた生家の人間たちは敵に回すだろう。
何しろ……王家再興という錦の御旗を持っているのだから。
無論、幼馴染と手を切ることなど……できなかった。
なぜなら。
マークト君はすでに……自分でも気付かないうちに【デレ】てしまっていたのだから。
ょぅι゛ょがどうのこうの言いながらも、数々のテンプレイベントに遭遇しながらも、結局求めたのは……最古参の幼馴染さんだったのだから。
結局のところ……マークト一行の中で、一番【ツンデレ】さんだったのは、マークトであったのだ。
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「(まあ……事がここに至った以上、ハイファと縁を切ることなんて、出来ない。
ある意味、略奪婚だな。
それによって……故郷の人間に恨まれるのはよしとしよう。
……どうせ蚊帳の外だったしな、畜生。
だが……妹たちと戦い合う事になるのは忍びない。
どうにか……妹たちを、こちら側に引き込めないものか……)」
真剣な表情で三人と対峙しながら……マークトは考えていた。
一瞬【全員孕ませEND】というパワーワードが脳裏をよぎったが……マークトはそれを、頭を振って脳内から追い出した。
「(い、嫌だよ僕は。 世間様に【マコト氏ね】なんて後ろ指差されるのは!?)」
なまじ、それが【決して不可能ではない】事に思考が及んで……マークトはさらに強く頭を振る。
「(【生贄】ってのがネックなんだよな……すなわち、ハイファの命をもって、王国復興の礎にしたい人間がいるということ。
……て、あれ?
……【生贄】を以って王国復興の礎にする、て……そもそもどういう事なんだ?
【魔法の儀式】とか言ってたけど……) まさか!?」
唐突に、マークトは叫んでいた。
当然ながら、周囲の視線をすべて集めることとなっていた。
躊躇うような周囲の注目の中……マークトは妹ズに視線を向ける。
級に視線を向けられておどおどする妹ズに構わず……マークトは問いかけた。
「まさか……まさか、とは思うけど……」
「兄、な、何……?」
「お前たちは……【魔法の儀式】とやらで、ハイファを【生贄】に捧げ……【国家再興の礎】とするんだよな?」
「……その通り……だけど?」
「それってまさか…………【勇者召喚】じゃないよな……?」
【勇者召喚】。
それは……異世界の【王様】や【お姫様】が、【生贄】などの【多大のコスト】をかけて………【日本】から、【トラックに轢かれた人】や【高所から転落した人】や【道や霧に迷い込んだ人】、あるいはその魂を召喚する儀式である。
そして。
そして。
何という事であろうか。
ここは……【異世界日本人村】であった。
【異世界日本人村】の……ほぼ村人の数だけ、【勇者】がいることになる。
「「「 どっどうして……それを知っているの……っ!!??? 」」」
ヒロインズのきれいな唱和に、マークトは……本日何回目かの天を仰ぐことになっていた。
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「あーっはっはっは!!!!!
これはいい、最高に傑作だよ!!!!!
よりにもよって、【勇者召喚】なんて!!! ……ぷっ!
あーっはっはっは!!!!!」
天を仰ぐマークトの代わりに、鈴木さんが大爆笑を以って三人に応えていた。
応じて三人は、あからさまに激昂して見せる。
「い、い、いくらなんでも……許せないわ!!」
「「……技量で及ばないなら……せめて捨て身で一太刀でも……っ!!」」
「あっ、あはっ、あははっ、決して君たちを馬鹿にしてるんじゃなくってね……ぷーっ!!
あははははっ、駄目、お腹苦しい、マークト君、説明してあげて………あーっはっはっは!!」
鈴木さんは、破損した長座卓の上にぱたんと背中から倒れると、そのままゴロゴロ転がりながら笑い続けていた。
「(………人名シリーズは良いけど……徳川家康の生母はないでしょ。
さっきまで、ちゃんと言えてたじゃん………)」
憮然とした表情で鈴木さんを眺めるマークト。
その一方で……ヒロインズは、決死の特攻の準備を始めていた。
その光景にため息をつきながら……マークトはヒロインズに声をかけた。
「ハイファ、ミリア、リリア。
ここで凄く……残念な【お知らせ】がある。」
「「「 ……… 」」」
憤懣遣る方無しと言った様子のヒロインズだったが……マークトの呼びかけに、プンスコプンスコしながら顔を向ける。
幼馴染も、上の妹も、下の妹も……険しい視線で、マークトを見る。
その様に、もう一度ため息をついてから……マークトは問いかけた。
「多分だけど、僕……その、今まで説明していなかった僕が悪いんだけど……」
そう言ってマークトは……すべての解を提示した。
【生贄不要】になり【護衛の義理立て不要】になるという……まさに魔法のようなキーワードを。
「僕………【勇者】なんだけど。
ていうか、ここの村の人……ほとんど【勇者】なんだけど」
「「「 」」」
絶句。
マークトのその残念な【お知らせ】に……ハイファもミリアもリリアも完全に【石化】していた。
ただ……鈴木さんの爆笑だけが、部屋の中に響いていた。
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お知らせです……双子の妹の名前が決まりましたw




