異世界日本人村へようこそ
今さらになりますが……行間に改行を入れるのは、読者様が【スマホ老眼】になるのを防ぐためです。
まさかと思った人……そう言う人が【スマホ老眼】になりますw
【スマホ老眼】、舐めんなよ?
早い人は二〇代で始まるぞ?(涙)
【ゲームは一日一時間】は……実は大金言なんやで?(号泣)
で。
マークトは結局、この村に移住することになった。
織田信長に対する【マンガ家】宣言もあるが……決め手になったことがある。
なんと……家を、あてがわれたのだ。
中古住宅ではあるが……木造二階、空調完備、駐車場付き、小さいながら池もある日本庭園付き。
【日本】の地方集落においても、世代交代などで空き家になった家を集落自体が買い取ることがある。
空き家が廃屋となって朽ち果てていくのを防ぐためもあるが、時々現れるこういう血迷った若者を少しでも好条件で受け入れるためだ。
「基本的にこの村では、登録確認代わりのわずかばかりの人頭税と、自己申告の所得税しかない……しかし、ここに住んでくれるなら五年間免除しよう。
【村長】の許可は貰ってある」
宴会の翌日である。
この家の元の持ち主、果物農家の白髪の【後期高齢者】は、物件の案内時にそう言った。
「……随分好条件ですね。 何か理由があるんですか?」
問い返すマークトに、【後期高齢者】はニカっと笑った。
「いやなに、ただの女不足だよ。 彼女たちが居ついてくれるのが条件じゃ」
「………………」
随分はっきり言う【後期高齢者】に、マークトは呆れて沈黙した。
察するに……それは【ヒロインズ】たちのことだろう。
……ここでも彼の【転生者】としての【優位性】は全くなかった。
「ほれ、昔から、【転生】や【転移】する者は、基本的になぜか男の方が多いんだよ。
別にこの村が農業中心だからという訳じゃないが……人口を男女比で言えば、圧倒的に女性が少ないんだ」
「……なるほど」
【後期高齢者】の言葉に……マークトは、すとん、と納得した。
確かに……彼の知る様々な【物語】、【転生】や【転移】する者はほとんどが男だ。
「し、しかし……彼女たちは別に僕の嫁でも愛人でも性奴隷でもありません。
僕が移住を決意したと言っても、彼女たちはこの村を出て行くかもしれませんよ。
それに……仮に居ついたとして、そ、その、子供……が何人か出来たとして、その子供は確率的に男女比率一:一でしょう?
男女比の解決にはならないと思うんですが……」
「そこはおそらく、大丈夫じゃ。
居つくのは一人でも……最悪、おまえさん一人でも良い。
なにせ……【転生者】の子供はだいたい【娘】と相場は決まっているのでな。
長い目で見れば、問題はない……種族にもよるが、【転生者】も【転移者】もだいたい寿命も長いしな。
何十年かすれば……逆に男の方が少なくなるのではないかな?」
「(……くっ、何故だろう、少し納得してる自分がいる……)
い、いや、しかし………」
意外と折れない【後期高齢者】に、何とか反論しようとするマークト。
そのやり取りは、沈黙も含めてしばらく続いた。
だがやがて……【後期高齢者】が、決定的な一言を放った。
「……この家のトイレは【洗浄機能付き】なんじゃが?
ウォシュレ……シャワートイ……はて、何と言ったかな?」
「説得します、何があっても」
がしーん。
マークトはそう言って【後期高齢者】の手を取っていた……【現代日本人】が、洗浄機能付き便座を愛している証左であった。 ちなみに、洗浄機能付き便座を発明したのも日本人である。
こうして………洗浄機能付き便座の為に、【ヒロインズ】は売られた。
「うんうん、いいよな、【洗浄機能付き便座】。
良かった良かった………穏便に事が運んで」
満足そうに言う白髪の【後期高齢者】。
その【後期高齢者】が……不意に手のひらを前に突き出した。
それは【この世界】において、【アイテムボックス】を操作するときの所作だった。
【アイテムボックス】……それは【異世界もの】で定番のアレである。
要するに……RPGのようにアイテムを多量ないし大量に収納できるという奴だ。
「……(さすがは【異世界日本人村】、【アイテムボックス】持ちなんて数千人に一人ってレベルなのに。
……まあ僕も持ってるんですが)。
ん……!!??」
と……その時。
マークトの背後で、不意に獣の咆哮が響いた。
バイオレンスハゲエルフの【トラクター☆☆☆】ではなく……モノホンの【魔獣】だった。
「うおっ!!
村の真ん中で【地竜】!? ホントに出た!?」
マークトは……その巨大なワニを思わせる【魔獣】の出現に思わず叫んでいた。
そして……反射的に応戦する。
と言っても、彼が選択したのは【固体透過不可】だった……【魔剣】持ちの彼であるが、バイオレンスハゲエルフ邸に置いて来てしまっていたからだ。
そして……【同時詠唱】。
【この世界】においては珍しく……マークトは複数の魔法を同時展開できるのだ。
【固体透過不可】越しの、【接近戦】での魔法使用。
バイオレンスハゲエルフには遅れたが……マークトにはそれなりの必勝法があった。
その先を制された。
と言ってもそれは……【地竜】ではなかった。
「なになに、この程度の【魔獣】、この村じゃ子供でも倒せるよ」
孫に話しかけるような口調で言ったのは……白髪の【後期高齢者】だった。
・
・
・
・
・
結論から言うと、【アイテムボックス】から出てきたのは……対戦車ライフルだった。
九七式自動砲……のちに陸軍航空機用重機関砲のベースになる半自動砲だ。
「ひゃっはー! くたばれ畜生めええええ!!!
九七式曳光徹甲弾を食らええええええい!!」
結果だけ言うと……ミンチ肉作成に成功。
毎分二〇発で打ち出される徹甲弾は二~三〇ミリの鋼板を打ち抜く……本来なら運用に一門あたり分隊一〇名ほどの人数で扱う、もはや重機関銃と言っていいレベルのライフルだ。
それを嬉々として扱うバイオレンス&白髪&【後期高齢者】……なんかどこかで見たことがある光景であった。
「あー、一応ワシ、戦後生まれだからな?」
飛び散りまくった返り血……というか【返り肉片】を浴びながら、咳払いなど一つしてから言うバイオレンス&白髪&【後期高齢者】。
「……誰に対するいいわけですか、それ……」
【固体透過不可】越しに浴びた返り血を拭きながら、消え去りそうな口調で言うマークト。
【固体透過不可】に固着した返り肉片は……その解除によって、ぽとぽとと地面に落ちる。
それを眺めながらマークトは今……この【異世界日本人村】に移住を決意したことを、本気で後悔し始めていた。
蒼い顔を見せるマークトに、バイオレンス&白髪&【後期高齢者】は静かに続けた。
「何にせよ……穏便に決まって、良かったのう。
なにせ……最悪は、お前さんの連れも含めて、【機密保持】を実行せねばならんかったから。
一応、【外部】には、この村の事は秘密だからの」
「……………」
バイオレンス&白髪&【後期高齢者】の言葉に、マークトとは完全に沈黙した。
この村の人間がその気になれば……マークトがいかに【転生者】といっても抗う事は出来ないだろう。
なぜならここは……多くの【転生者】と【転移者】とその血族たちで構成されているのだから。
彼は今……この【異世界日本人村】に移住を決意したことを、本気で後悔した。
しかし。
もうすでに遅かった。
「では……わしらはもう同じ村の人間という事じゃな。
【異世界日本人村にようこそ】」
バイオレンス&白髪&【後期高齢者】に、そう宣告されてしまったからだ。
一応、第一部完的なサムシングですw
書きだめ出来ない人なので、今後も更新にはお時間を頂くこととなります。
ここまでお読みいただいてありがとうございます!
これからも本作品をよろしくお願いいたします!!