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お風呂シーン

「(えぇと……この世界で【蛇口】って、なんて訳したらいいんだ……?)」


 マークトが待ちに待った、一五年ぶりの日本式風呂であった。


 バイオレンスハゲエルフたちから勧められ、マークト一行は連れ立って梶田邸の浴場に来ていた。


 と言っても、ヒロインズにとっては初めての日本式風呂。


 カランやシャワーの使い方から掛け湯などの作法、ボディーシャンプーと洗髪用シャンプーの違いに、リンスやコンディショナーの使い分けまでも説明する必要があった。


 で、とりあえずマークトがお手本を見せることになり、実際にマークトが風呂を使う事になったのであるが……そこで出て来たのが冒頭の言葉である。


 蛇口。 水栓ともいう。


 当然、捻れば水が出てくるアレだ。


「(ジャグチ、カラン……もう、そのまま普通名詞として通訳するか。


 そもそもこの世界には【上水道】なんて概念は……あれ?


 ……よく考えれば蛇口これ、すでにとんでもないチートじゃね?


 要は水道管を使った給水システムがあるってことだよな?


 て事はもしや……【浄水場】から始まる【上水道】も?


 だとしたらもう、完全に近代国家レベルのインフラじゃん!?


 チートの定番【手押しポンプ】なんて軽く吹っ飛ばしてるよ!?)」


 たかが【蛇口】……しかしマークトは、そんなありきたりなところにもある日本とこの世界との技術格差に愕然としていた。


「……マークト、どうしたの?


 使い方を説明してくれるんじゃなかったの?」


 爆乳ツンデレツインテ幼馴染さん(もちろんまだ着衣)の問いかけに、マークトは我に返った。


「(……まあいいや……とりあえずは使い方だけ説明しよう。 詳しい事は後で梶田さんに聞けばいいか)


 えぇと……まずはこのジャグチの使い方なんだが……」


「「……ジャグチィー……」」


 真剣な表情で、オウム返しする妹ズ(着衣)。


 どこか疲労した様子で笑みを見せてから……マークトは不意に、カッと目を見開いた。


「これをひねると……お湯が出ます!!」


 そしてマークトは赤い印のついた蛇口をひねった。


 そこから後は……妙にノリノリになって説明するマークトであった。

「まさか……火の気もないのに、そんな小さなところからお湯が出るなんて。


 よほど良くできた魔道具でもない限りは……熱い!!


 ホントにお湯が出てきたわ!!??」


 日本で言うところの、まるで深夜のTVショッピング系のアシスタントのように見事なリアクションを見せたのはツインテさんであった。


「ああ、熱いので気を付けてくださいね!


 それよりその熱いお湯は……こちらの湯船の方に注ぎます。


 そして、一杯に溜まったところで、その湯船の方に入るのです。


 これが、この村の【入浴】というシステムなんです!!」


 ショッピング番組の司会者になったように、マークトは説明を続ける。


 応じて、またもツインテさんが問いかける。


「で、でも……こんなに熱いお湯に入ったら、熱すぎて火傷をしてしまうわ!?」


「大丈夫!!


 その時は、こちらの青い印が付いた方のジャグチを捻ればいいんです」


 そう言ってマークトは、複合水栓の二つある蛇口、その青い印が付いた方を少しだけ回す。


「すると……それまで熱すぎたお湯の温度が下がります!!


 こうやって適温に調整できるわけなんですねー!!」


「な、なるほど……これなら火傷しなくて済みそうだわ!!


 この中に入るなんて……凄く体が温まりそう!!」


「そうなんです!!


 疲れも一気に吹き飛びますよ!!」


「で、でも……こんなに贅沢にお湯を使うなんて……随分お高いんでしょう?」


「大丈夫!! このお湯は、タダなんです!!」


「「「ええええええ!!!???」」」


 マークトの言葉に……ヒロインたちはマークトが一番欲しかった反応を見せていた。


「はい!! それが……太陽熱式温水器です!!


 なんと……太陽の熱を利用した給湯システムなんですねー!!」


 どんな田舎にでも一軒は屋根に設置してある太陽熱温水器……そういえばマークトは、梶田邸を眺めた時に、それらしいオブジェが屋根についていたのを思い出していた。


 思い出しただけだから……実際そうなのかどうかは分からない。 もしかしたら、同じく田舎によくある灯油式ボイラーによる給湯システムかもしれない。


 だが……どちらにしても、マークトには追及する気はなかった。


 この世界の人間にとって……灯油式でも太陽熱式でも、どちらでも理解の外であっただろうから。


「「まさか……太陽の熱でこんなに熱くなるなんて……」」


 本気でイイリアクションを見せる妹ズ。


 それに笑顔を見せてから、マークトは続けた。


「……はい!


 それでは、湯船に溜まるまでお湯の事は置いといて……次は身体の洗い方について説明します!!


 まずはこの……容器をご覧ください!!」


 そういってマークトはシャンプーボトルを手に取っていた。


 思い切りメーカー名と商品名が書いてあり、バラエティー番組ならモザイクがかかるか目張りされるところであろう。 当然、メイドインジャパンであった。


「この器の中には、あるものが入っています!!


 皆さん、この一番上の部分、これを……押さないで下さいよ?


 まだ押さないで下さいよ!??」


「ああっ!!! 何か、いい匂いがする液体が出てきたわ!!」


「想定通りのリアクション、ありがとうございます!!!


 実はこれ……【石鹸】が進化したものなんです!!!」


「「「ええっ!!


 あの高級品、【石鹸】が、進化を!!??」」」

 ……なんかいつまでもやってそうなので、本作品初の【お風呂シーン】はここまでとさせていただきます。


 あとボディーシャンプーは、別に石鹸が進化したものではありません。

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