冒険者の覚え書き:『雷火の杖』
『雷火の杖』
稀代の錬金術師ニコラの作品の一つ。
「一時的に世界に新たな法則を作り出し任意の奇跡を引き起こすのが魔術なら、既存の法則のみを利用して魔術の行使に劣らぬ結果を生み出すことは可能か」をコンセプトに作り出された武器。
外見は、木と金属を組み合わせた杖とも筒ともつかぬ奇妙な形状であり、用途の判別は困難。
敵に向けて使用すると破裂音と煙が上がったあとに敵が倒れるため、一見すると奇妙な形状の魔導具にも思える。が、この現象に魔術はいっさい使用されていない。
その正体は、筒の内部で小規模な爆発を起こし、発生したエネルギーを利用して金属の弾を高速で射出するというもの。
貫通力や命中精度、射程距離といった数多くの点で従来の飛び道具を遥かに上回る性能を持つ。しかし、その反面、連射性で劣り、使用が天候条件に左右されるといった欠点もあわせ持つ。
また、矢とは異なり一度撃った弾丸を回収することも基本的に出来ないので、費用対効果も悪い。製作者曰く「カネを弾丸にして撃ってるようなもン」。
もともと、この道具は弓矢の通用しない石像の魔物に襲われた友人のためにニコラが作り上げたもので、この世に存在するのは試作品を含めた二丁しかない。その性能と稀少性から、極めて価値の高い貴重品。