冒険者の覚え書き:『魔導白地図』
『魔導白地図』
自動書記の魔術が込められた白紙の地図。
所有者登録をおこなった者が、この地図を所持して移動すると、その足跡が自動的に地図として書き込まれていく機能を有している。同時に、周辺の地形情報なども記録されるため、移動すればするほど詳細な地図が作成されていく。単純に位置情報を把握できるだけでも、冒険者の利点は計り知れない。
ただし、注意点として、使用に際し面倒な条件を達成しなければいけないことがあげられる。
その条件とは、常に一定の歩幅を維持しながら移動しなければ自動書記が発動しないということだ。もし、歩幅が少しでも狂えば、地図が書き込まれることもない。そのため、一般の冒険者が所持する魔導白地図は、魔物との戦闘や疲労による歩幅の乱れなどで記述が途切れることがままある。
それゆえ、全力疾走しながらでも歩幅を崩さない優れた測量士の描いた地図は高値で取引されることが多い。
なお、この地図を所有した一部の冒険者は、ある衝動に悩まされる場合がある。それはたとえば、何もない部屋を隅から隅まで歩き回ったり、袋小路と分かっている通路をわざわざ進むなど、無意味と知りつつも地形情報を地図に正確に記載するためだけに、なぜか歩き回ってしまうことである。
俗に【マップ埋め】と呼ばれるこの衝動の発生要因は、現在でも解明されていない。