スパイダーと少年のクレイジーな戦闘
彼は真面目にテスト勉強をしていた。次の日にあるテストの為に。だが、長い間勉強していた為、集中が切れ、ふと勉強机の横にある小さな机を彼は見る。そこにヤツはいた。スパイダーが。
スパイダーは「よぉし、彼に気付かれてないし、潜入成功だ。それにしてもあいつはアホだな、ボクの存在に気付いてないとか。おかげさまで新たな住居確保だ!」と言わんばかりに華麗にシュー、と一本の糸を頼りに床に向かって舞い降りる。
「え?」
彼はそのことに気付き、心拍数が徐々に上がり始め、息が乱れる程にまでなった。スパイダー恐怖症だからこればかりは仕方ない。
そんな中、スパイダーは相変わらずシュー、と華麗に床に着地する。
「あ、気付かれたようだが、あいつビビリだしボクを放って置いて逃げるハズだ! 見よ、この毛むくじゃらな我がボディーを! このオスらしさを、少年よ!」とでも言いたげに堂々と立ち止まり、彼を暫くの間見つめる。
「ひっ!!」
彼は少しテンパり、「一刻も早く見つけねば」と殺虫剤を家中探し回る。
その間にスパイダーは彼の部屋にあるベッドの下に移動し、息を潜める。
やがて、彼は殺虫剤を手にスパイダーが少し前までいた場所に行くもスパイダーを見つけられずにいた。
「スパイダーの野郎! 隠れんな! 逆にもっと怖いだろ!!」
彼は少しでも落ち着きを取り戻す為、スパイダーに向かって必死に話しかけていた。
そして、スパイダーは彼の言う事が理解出来たのか、てくてく、と脚を高速に動かしながら彼に近づく。
「ぎゃぁぁぁぁ!!! ヤメロォォォォォ!!!!! 何なんだよ、その動き!!! もっと怖いだろぅがよぉぉぉぉぉ!!!!!!」
彼は驚きのあまり、スプレーを噴射するもスパイダーには当たらず。
スパイダーは念の為ジャンプをし、彼を更に怖がらせる行動を取ることにした。
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁ!!! スパイダーがジャンプしたぁぁぁぁ!!!!! 近いし! 噛まれるぅぅぅぅぅぅ!!!!!!」
そんな中、彼はスプレーを噴射し過ぎて、スプレーが空になった。
「あれ、空っぽか? 嘘、だろ?」
一方、スパイダー側は、「あ、やべぇ! 力が段々と……。なんとか持ちこたえなければ」というぐらいに弱っていた。けど、スパイダーは決して諦めなかった。スパイダーはこう思ったのだろう、「ボクはこんなところでくたばっていられるハズがない。これからの人生に希望を持たずしてどうする? 生き残ってやるぞぉぉぉぉぉ!」と。
「こうなったら最終手段だ!」
彼の鼓動が高まる中、彼は履いていたスリッパを手に取り、動きが止まっていたスパイダーへと近づく。
(ここで彼の脳内で勝手に実況が始まった)
ーーおっとぉぉぉ。彼は攻撃を繰り出すもスパイダーに避けられるぅぅぅぅ!!!
ーースパイダー側は彼の動きを一つ一つ正確に捉えているようだ。さぁ、ここでスパイダーの出番!
ーースパイダーが彼の足元へジャ〜〜ンプ! 彼は驚きのあまり体勢を崩し、尻餅をついたようだ。さぁさぁ、ここがスパイダーのチャンスですよぉぉぉ!
ーーなぬ⁉︎ 彼は素早く起き上がっただとぉぉぉ?
うぉっと、今度は彼がちゃんと狙いを定め、スリッパで叩き潰す覚悟が出来たようだ!!! スパイダーよ、どうする?
ーースパイダーはここで、一旦逃げることを選択したようだ! スパイダー、頑張るんだ。生き残るんだろ? そうだろ? 大志を抱け、スパイダーよ!
ーーおっとぉぉぉ、彼は攻撃を繰り出すも、また外れたぁぁぁぁ!!! 一方スパイダーはーー何をしている⁉︎ スパイダー、逃げるんじゃない。しっかり戦うんだ!
ーーぬ? 彼は静止してる⁉︎ そして、そう、スパイダー、その意気だ。彼を退治するんだ! 彼をやっつけろぉぉぉぉぉ!!!
ーーな、彼がフェイクをかけた⁉︎ 惑わされるな! スパイダー! スパイダー? 聞いてるか? まさか⁉︎ スパイダァァァァァァァ!!!!!
(そんな、バカな……)byスパイダー
結果、彼はスパイダーに見事勝利!
このようにして、スパイダーから彼自身の生命を守り抜き、彼とスパイダーによるクレイジーな戦いに幕が降りた。
めでたし! めでたし!
となる所だったが数日後のこと。
何故か学校の靴箱でも新たなスパイダーが見つかり、驚きのあまり後ずさるが床にあった砂で滑り、後頭部が床に直撃‼︎
その後、彼は救急車に運ばれ、結局スパイダーという生き物に敗れ、短い生涯を終えることとなった。