第4話 『 眠り姫 』
ーー、鐘の音が聞こえる 。
椅子に座り 、昼の読書を楽しんでいる
彼女の耳に 3時の鐘の音が聞こえる。
その音を耳にした彼女は手に持つ
" 眠り姫 " という 童話を机に置き
この部屋に近づいてくる音の方へ
視線を向ける。
「失礼します… 今回は良い品質のチョコレートを入手したので、" パヴェ・ドゥ・ショコラ " に致し、チョコレートにとても合うお味の紅茶である " アールグレイ "をお持ち致しましたお嬢様。」
「ふぅん…美味しそうね」
机に並べられた、完璧なお菓子達を
眺め 手を掛ければその美味しさに
少し微笑みを見せる。
「…ほぅ、眠り姫か…。それを見てる、ということはあの事件に関与する、ということだな?」
「やはり知っていたのね…そう、最近巷で多い事件…それはまるで" 眠り姫 "の様な事件よ……」
それは ーー " 10歳の子供が永遠の眠りについてしまう事件 "
最近街行く所で、" 10歳 " になった子供達が次々と永遠の眠りについてしまう、そんな事件が広まっている。
それは、まるで童話の眠り姫の様に
『10歳になった子供は眠りにつく呪い』
そんな決まり事の様に ーー。
「世界を滅ぼすのはこの私…エルゼ=レヴァリィですわっ!!先に滅ぼされては困りますの…」
「そうだな。眠りにつかせ続け、この世界の人口を減らされ先に滅ぼされては迷惑だ…」
「だから、犯人を殺してやるのよ!」
そう、この世界を先に滅ぼそうとしてる奴らは全て先に " 私達 " が殺す 。
手柄は ーー 奪ってやるわ
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「ん…? エルゼ嬢に、ガルネットさん…どこ行くの〜…?」
犯人を見つける為に、昨日眠りについた子供達の住むピピット街に行こうとした時起きてきた少女 " ルーベン " に
彼女は微笑みかけ。
「おはよう、ルーベン。少し、屋敷から違う所に滞在することになったわ…その間、あなたにここを任せてよろしいかしら?」
「1人でこんな大きな屋敷を〜…なんて言わないよっ、分かったわ!任せて!」
と、自信満々に言い放すルーベンを
見詰めては、外に止めてある馬車に乗り
手を振るルーベンを馬車の中で彼女は
じっ、と見ては 本題を話そうと口を開く。
「ガル。犯人の身元に関しては…貴方も薄々勘づいてるわよね?」
「嗚呼、眠りにつかされた子供の親の1人が新聞の取材で " 12時にはまだ息をしていた " と話していた…一斉に眠りについた子供の人数は約20人ほど、それを1人2人で実行したと考えたら、悪魔か天使か死神レベルだ…。だが、調べた所…その三種族の可能性は0である。」
その証言に、彼女は少しばかり驚いた
彼女は、三種族のどちらかの可能性だと少々思っていたからである。
「…違うということは、ルーベンの様な神の子かしら…?」
「いいや、神の子でもない。昨日の夜に悪魔書館という悪魔国の図書館の様な所に行って調べたが…神の子や三種族が動いた気配は0と書いてあった。」
「ということは…複数犯の人間ということね…。全く、馬鹿なもんだわ」
複数犯の人間 ーー
ココ最近で複数の団体やら何かがあったのか、彼女はじっ…と考える。
その時何かに頭が閃き
彼女の瞳は 瞬きをせずに見開き続ける
「ーー、街渡りの音楽団体」
「それだ、流石エル。物分りが早いな?街渡りの音楽団体 " バルウェの音楽隊 "
第二の名の通り街を淡々と渡る音楽隊だ。この音楽隊は 童話等をモチーフにした可愛らしい音楽で有名であるな」
「…それだと、家族客を中心とした音楽隊、ということね…。そこでターゲットを決めて…と…なるほど…。」
音楽隊という団体を装って
子供達を支配していく団体
恐ろしく ーー 愉快である。
「…音楽隊の公演はいつあるかしら…?」
「調べてこよう、それとお土産も買ってきてやろうか?」
「お土産なんて要らないわ。早く行ってきなさい、私を待たせないこと宜しくて?」
そう言い放つと、彼はクスッと笑みを浮かべ
止まった馬車から降りれば一瞬の内にその場から消えた。
音楽隊が、子供達を襲っているとなると
ーー、目的はなんなんだ?
分からないことだらけのピースは
やがて一塊になり、嵌っていくのであろう。
10秒ほど経った時、馬車の扉には
彼が微笑みながら立っているのに気づき
" 早く入りなさい " と扉越しから
眉を寄せて話す。
「ほれ、ピピット街 夜の9時からだと…チケット2枚買ってきてやった…それと、クッキーだ」
「…召使として当然よ。…クッキー…お土産なんて要らないとあるほど…まぁ、頂くわ。」
と、チョコクッキーを1口と食べながら
馬車に乗り続け何時間経ったのだろうか…遠く離れた街 " ピピット街 " へ
彼女達は 踏み入れた 。
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「ーー いい時間帯に来ましたね。お嬢様?」
馬車から降り、足を地面に付けた途端見詰めた風景は夜の中いくつもの派手なテントが並べており 大きな看板には
" 街渡りの バルウェ音楽隊 "
と書かれており、周りには賑わう家族客が次々に中央のテントの中へ足を踏み入れていく、当たりには音楽を運ぶ人や綺麗な薔薇達が咲き誇り 、愉快な音楽で賑わっている。
「まさしく、子供向けという言葉が似合う場所ね…。」
「まずは、中に入るためにチケットを受付に渡さなければいけません…。行ってますね。」
「えぇ 、ーー」
受付の方へ足を進める彼を少々遠くから見つめていれば、終わったのかこちらを向き微笑みを浮かべる彼の方へ
腕を組みながら亜麻色の長い髪と 真っ赤な薔薇のように赤色ドレスを揺らし
彼の元へ行き 、テント内へと入る。
「…中も立派ね。カラフルに作られてて…天井には楽器型のシャンデリアが並べているわ…。」
子供がとても喜ぶ夢の国の様に
出来栄えはとても良いテント内を見渡していれば召使が肩を少し叩いてるのに気づき 彼女は、そちらを振り向く
「チケットの時、お子さんの年齢を聞かれた…年齢を聞き10歳の子供を狙っていくのだろう…」
そう小声で耳元に告げる召使に
もしかして、と閃いた彼女は
次に召使の耳元に口元を近づけ
「まさか、私の年齢を10歳と答えたのかしら…?」
「よく分かったな?流石だ。」
黒い笑みを浮かべる召使に
眉を寄せて口を膨らまし、不機嫌な表情を浮かべるがすぐに笑に変えて
" 良くやったわ " とボソッと話す。
そんな話をしていれば 公演時間を切った
足りのシャンデリアや灯達は一斉にやや暗くなり、真ん中にスポットライトが当てられる。
そこには、緑風の髪色をしている
アンティークな衣装を着た男性が指揮棒を持って立っているのに気づく
「皆様ぁー!この度、街渡りの音楽隊 バルウェの音楽隊公演に来ていただき有難うございますっ!!…今回は、皆様をバルウェの夢の国へ…音楽隊と共にお連れ致しますので…お楽しみにっ!!!」