第3話 『 厨二病的神の子 』
「早く行くぞ、次の場所へ。」
一言目を放ったのは、少し焦りを見せる
彼であった。
「どうして、焦ってらっしゃるの?」
いつも堂々としている彼であったのに、
何か変な焦りを見せる匂いが感じる気がする。
そんな上記の一言を彼に気にかける様に発する彼女は、少し首を傾げ何か嫌な事でも起こるのか、と少しこちらも不安になる。
「いや、何でもない。少し…嫌な感覚がしたもんだから…だが、気のせいのようだ」
「ふぅん、なら行くわよ…もうそろそろ夜なんだから、早く帰って疲れを癒したいのよ…お腹も空いてるの」
「嗚呼。」
微かに彼女は勘づいた気がした
彼が何かを隠し持ってるのだと。
ーー何を隠し持ってるの?
何でそんなに、焦る匂いが彼からはするの?
大悪魔様の貴方に " 怖い " ものなんてあるの?
そんな、不信感で彼女の頭の中は一瞬いっぱいになってしまったのだった。
******************
ーー ここは、街外れた貧民街。
薄汚れた貧乏人達がここで密かに暮らしている。
彼女からしたら、一生来ない場所だと思っていた場所である。
「初めて来たけど…パルポニ母様が言ってる通り、雰囲気が全く違うわね…」
「嗚呼。運命の神に見捨てられた奴らの集まりだ。」
「運命…ね…。大っ嫌いな言葉だわ。」
運命。
だって、それは自分で "これをこうしたい" " 一生こうなりたい!" なんて思っていても 運命の神が決めることだから確実にそうならない奴もいれば、なる奴もいる。
そんな" 運命 " が彼女は大ッ嫌いでいた
「 で、ここに来た理由とは… 」
「最近の新聞記事でメインを飾っている、この国の人間共が日々恐怖に包まれている事件… そう、"連続殺人事件" その犯人を見つけて…何とか使えないかと思ったのよ。」
「ほぅ…我らの屋敷に招き入れて、何とか駒として使うと…?」
「えぇ、その通りよ。」
ーー 連続殺人事件
それは、ここ最近起きてる最も人間共が怖がっている事件と言っても過言ではないだろう。
それも、連続殺人事件の犯人は…ただ、殺し方がおかしいらしい
銃、ナイフ、そんな物体を使ってるわけではなく…" 能力 " らしい。
その能力とは、" 闇系術 " その中でも召喚式である。 犯人の召喚獣は " 魔狼 "
死神が作り上げた魔獣である。
「魔狼を召喚できる契約していない、神の子らしいわ…素敵じゃないのっ」
「神の子とは、珍しい奴だな。神の子の生き残りをポリスに捕まえられては…大悪魔としても困る。」
神の子とは
悪魔、天使、死神達とは契約していないにも関わらず、生まれつき能力を持つ人間のことを意味するーー、
神の子は古代、" 神様 " と呼べる存在であった。そんな神様は希少価値がとても高い、そのため 悪魔 天使 死神の三種族は狙っていたのであった。
「そんな犯人の住んでる場所が貧民街とは…どんな者なのかしら。」
「古代では神様と呼ばれてた存在がな…神の子になれたのは幸運だが、存在的には不運だな」
そんな、無駄口をたたきながら歩き続けていれば とある小屋にたどり着いた。
そこには女の子の様な可愛らしいフリフリのドレス等が飾っており、貧民街の住宅地からはかなり離れていて、隠れ場所と言っても過言ではない所だ。
「ここに、犯人がいるのか?」
「えぇ、ここから術式の匂いが凄いするわ。」
術式の匂い。
それは、わかりやすく 鼻に来るような果実の様な匂いである
「ーーー」
「貴方達は、漆黒の魔女である…高貴なる少女である僕。" ルーベン=ナピット "の住処で何をしているのだっ!!!」
後ろから、少女の意味の分からない単語が詰まった言葉が大きく聞こえる。
その声と共に振り返った彼女と彼が見た光景は ーー
黒髪の長い髪がドリルの様にくるくるとなっているツインテールの髪が特徴の桃色の瞳を見せる、フリフリの目立つドレス衣装を着こなす少女であった。
「あなたが、連続殺人事件の犯人ね?」
「えぇ、そうよ!僕は…漆黒の魔狼使い魔女であり…神に愛された、神の子…そして、連続殺人事件を起こした犯人ですわっ!!」
「な、何か…自信あり気な娘ですね…お嬢…。」
人に気づき、召使口調にすぐ様変えれば、眉の皺を寄せ少し苦笑いをして
「えぇ、何を言ってるかは知らないけれど…犯人ってことを聞いたもの…。あなたに1つ言いたいの」
「ほう…僕に一言?はっ!言ってみるがいい!!」
その上から目線には、少し彼女もイラッと来たのか強ばった表情を一瞬見せるがすぐに心を落ち着かせ
「ーー、私のお屋敷に来ませんこと?」
「 ーーえ?」
その一言に驚いたのか、さっきまで強気でいた彼女は、口を開いたまま固まってしまう。
彼に関しては、本当に屋敷に入れていいのかと呆れた様な素振りを見せるが
彼女は至って本気みたいだ。
「なんで僕を屋敷に招待するんだ?僕は高貴なる連続殺人鬼だ…!!怖くないのか?」
「逆よ。連続殺人鬼が駒として欲しいのよ…私の目的を達成させるために。」
「目的…?…それは後で聞かせてもらおう…別に僕は君の屋敷に行ってもいい。美味しそうな食べ物とか〜、お金持ちしうだし、素敵な暮らしが出来そーう!!でもね、…すぐに行くってのも面白くない…」
「条件つきってことね、えぇ…言ってみなさい。」
「ーー、僕と勝負しようよ?」
「勝負事で決める…流石、殺人鬼らしいお考えですね…お嬢様、ここは私が……」
「待ちなさい、ガル。これは私と少女のお話よ、あなたは下がってなさい」
そう。彼女が勝負を挑むというのだ。
それを聞いた彼は、面白そうな勝負になると考え、愉快な笑を浮かべる。
一方ルーベンは、そのまっすぐな彼女の視線に一つ微笑みかける。
「では…僕と君との、栄光ある高貴な戦いを1戦繰り広げるとしよう……専攻は?」
「そちらで構わないわ。」
「では、お言葉に甘えて……漆黒の魔狼よ、神の子に名において…召喚されしっ!!!!」
その言葉と共に、彼女の目の前に現れたのは、鋭い牙を持ちし灰色の毛に包まれた " 魔狼 " だった。
それも一体ではなく…合計10匹程は召喚されている。
( 10匹相手にするのは、流石にエルでも難しいか…。となると、我が出なくてはならないな… )
と心の中で思いを語るのは、召使の彼であった ーーが、その心配は一瞬のうちに消えることになるだろう
「ど、…どうして……狼達が…全員倒れているの!?!?」
そう、召喚されて僅か五秒もし無いうちに、彼女の前に威嚇していた魔狼がすべて白目で倒れているのであった。
「っ!!…こ、これは……」
その光景に驚きを表面に出したのは、
ルーベンだけではない…召使、ガルもだ。
「ーー、こんな力もあるだなんてね…」
そう一言告げた彼女を見た、召使はすぐに全ての謎が解けたのである。
それは、彼女の瞳が悪魔のように " 赤く煌めいていたからだ "
ーー、魔眼。
それは、大悪魔が持つ能力であり…
何かの思いが強くなれば、発動させる事が可能となる能力である。
目を見た相手は一瞬にして気絶する…
動物であったら、殺すことができる高性能な能力の一つだ。
「で、これで宜しいのかしら?」
「い、一瞬にして勝敗が付くなんて…ぼ、僕は…僕は……あぁ…」
自分の愛する狼達が一瞬にして倒されたことにショックを受けすぎたのだろう、
ルーベンは気絶してしまい、その場に倒れたのであった。
その姿を見た彼女は、やれやれと呆れた表情で召使である、ガルに " 屋敷に運ぶ様に " 命令をしたのである。
ーー、こうして 一つの駒を手に入れたのであった。
******************
「ーーー?」
何時間、彼女の元に座って本を読んだのであろう。
やっと、ルーベンが目をしましたのであった。
ルーベンは、辺りを見回し
隣に彼女が居ることに気付いた途端飛び上がり個室に置かれている小さなテーブルの中に身を隠す。
「そんなに、怯えなくても…」
「君は、僕の狼を一瞬にして倒した女だっ!!」
「まぁ、そうなるわね。…で、私その条件果たしたのよ?」
「まぁそうだけど…あ!!それとそうだ…君の目的とやらを聞いてない!」
「あぁ、そんなこと言ってたわね」
目的、そう…ルーベンをこの屋敷に招いた目的を彼女はまだ答えていない。
このまま答えないままだと、ルーベンはこの屋敷から出ていくだろう。
その為に、彼女は真剣な眼差しで
口を開いた ーー、
「私の目的、それは この国を滅ぼすことよ。」
その一言を聞いたルーベンは
何かに魅入られた様な瞳をして、じっ…と彼女を見つめ続ける。
その無言な時が何分か経った時に、ルーベンは一言目の口を開いたのである
「素敵!!とっても素敵!!僕も、この世界が大っ嫌いだ!!…お、思わず魅入ってしまったよ…」
その発言に、彼女は少し驚きを見せた。
てっきり
" 滅ぼす!?意味の分からないこと言ってるね君!! "
等と帰ってくると、予想していたのだから。
「…その発言だと、この屋敷の使用人として私の駒になってくれる…ということであってるのかしら?」
「うん!!僕はここに住むよ!…あ、!でも…殺しは続けていいのかな?」
「大歓迎…ですわっ」
「んじゃ!決定で!!…僕の名前は、ルーベン=ナピット、闇系術の魔狼召喚式能力を持つ神の子…貧民街出身さ!」
「私は、エルゼ=レヴァリィ…この人が召使のガルネット=ヴァンピィ」
「宜しくお願いします…ルーベン。」
「よろしく!エルゼお嬢様、ガルネットさん!!」
こうして、この屋敷の使用人が1人増え
今後の、滅亡物語が進むのであったーー