第2話 『 滅亡の始まり 』
『 この世界を 滅ぼす 手助けをしろ 』
そんな事を、彼に投げかけたのはいいものの、ただ滅ぼすだけじゃ面白くない。
そう考えていた。
どう、 " 面白く " 滅ぼすことができるのか
どう、" 満足に " 滅ぼしを確実にできるのか ーー
「 考えているな? 」
そう、一言彼女に声を掛けたのは
召使 "ガルネット" であった。
彼は少し楽しげな愉快な笑を浮かべ
彼女の肩をそっと、包み込む様に叩くのだ。
「当たり前だわ。どう楽しく滅ぼせるのか…私が満足して滅亡できるのか…考えているのよ。」
「っはは、 早い話をしているようだな?早々に滅亡出来るわけはない。いくらエルがその力を持っていたとしても、一発で滅ぼす…とまでにはいかないだろう。」
彼の言う通りだーー。
いくら、自分が強力的な偉大な力を手にしたとしても この世界を焼き殺したぐらいで人々は死なない。
でも 、だとしたら
「 これから何をすればいいって言うのよ!ずっと、時を待てって言うのかしら!?そんなの、めんどくさいったらありゃしないわ!!パルポニ母様もお喜びにならない!!」
「お前の親のことなんて、俺には知ったこっちゃない。お前の契約は "この世界を滅ぼす" と "お前のそばにいる"それだけだ。」
「!!……。」
そうだ。 彼の中でこの "2つ" の契約以外は興味等皆無なんだった
だから、彼に何を投げかけたとしてもあの二つ以外の事には何も触れない。何も助けなどしないのだ、と分かりきっていた事を彼女は改めて記憶したのだ。
「だが、滅ぼすのはこの世界を壊すだけではない…この世界に生きている何億人もの人間を、壊せばいい。狂わせればいい。恐怖に陥れたらいい…分かるか?」
ーー、想像してみろ。
この彼の甘く包み込む一言は、
頭がイカれた彼女を一瞬にして
狂気の愉快な道へ引きずったのである。
" 想像 "
何億人もの、うじゃうじゃの生きてやがる人間共を 一瞬にして
壊す。 狂わせる。恐怖に陥れる。
そんなこと…、そんなこと…
「狂っていて、愉快で素敵な考えだわぁ!!」
さっきまで、壊れていた この世界の滅ぼししか脳になかった彼女は 愉快で満足気な表情を浮かべ、右腕しかない手で激しく自分の髪を乱雑にした。
「ガル。まずは…事件を起こしまくってこの世界の住民、人間共を…狂わせていくわよ…?勿論、着いてくるわよね?」
「えぇ、当たり前ですよ?エルゼ お嬢様。」
いつもの様に跪き、彼女に光栄なる姿をお見せすると、表情は黒き闇に浸った愉快な笑で それは彼だけではない…彼女もで、あったのだ、ーー
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ここは、レゼット王国 最高気品のある中心街 "バニッシュウェット街"
周りは貴族ばかりの、金持ち集団の街だ。そこには…お金を求める貧乏人もうじゃうじゃいる、そんな表裏を持つ街である。
「表は、穏やかな気品ある風景に見えるけど…裏は 路地に囲まれそこには…金持ちが貧乏人をいじめる格闘場と化してる…そんな街。気持ち悪いわ」
「おや?、人間共の争いが嫌いみたいだな?大悪魔からすれば、最高な見物ものだが…?」
路地近くを歩くだけでも、耳をすませば途端 気品ある気高き笑い声と共に聞こえる悲鳴が伝わる。
大悪魔であるガルネットは、悲鳴を聞きながら、悪意詰まった笑を浮かべつつある。
ーー、正直言って こうゆう系は嫌いだ。
殴って、何が楽しいのだろうか。
奪って、何が楽しいのだろうか。
そんな小さなことをするのであれば、
" 殺してしまえばいい " そう思う
まぁ、殺せない理由なんて同じ人間として知っている。 " 怖い "からだ。
殺す感覚なんて怖すぎる、気持ち悪すぎる。捕まりたくない。人殺しは嫌だ。
人間は、そんなもんなんだと思うーー、
「ガル。来なさい」
「ぉ?何処いってんだ…おいっ…。」
黒いドレスに包まれたエルゼは、少し暗い表情をして、裏路地へと足を踏み出していく。そんな彼女の後ろを付いていく彼は、少し疑問な表情を心の中にしまいつつも付いていく。
「ーー、ハハハ!!貧相な愚民がぁ!」
路地の中では、何人もの高貴なるお嬢様方が、気持ち悪い笑い声を高々とし、扇子で貧乏人達を痛みつける。
そんな光景をまじまじと見つめる彼女に
召使である彼は、首を傾げながらその彼女をじっ、と見つめた ーー、時だった。
「ぐぁっ!!…痛いっ、…く、るじぃ…ですぁ……」
1人の女性が苦しみだす声が聞こえる。
女性のお腹からは、真っ赤な薔薇のように赤い液体が溢れ出てくる。
そして、まじまじと見てた彼女の手元には一つの真っ赤に染まったナイフと、黒き心の様に染まったドレスは薄く、赤く染まっていることに気づく。
1人の女性が苦しみもがく光景は、誰もが恐怖に堕ちるそんな光景だ ーー
特に、生まれた時から良い生活をし、生まれた時から何もかも人任せ好きなことだけしかしていないクズ人間共には、失神するほどの出来事だったのだろう…
他の何人かの女性達は 失神や、その場に腰をつき座り込む奴もいた
そんな人でも、生かしておけばこの先邪魔だ。だから、一人残らず殺してやったのだ
何故、殺すのかって…?
何故、無視しなかったのかって…?
こうゆう、"いじめ"とやらは…
パルポニ母様が、お嫌いだったから。
「おぉ!!貴方様方は私の命の恩人!!神様ぁ!!素敵です!ありがとうございます!!」
その光景を唯、見つめ続ける異臭のする男性は涙乍に彼女達を見て、泣き喚き歓喜の気持ちをずっと言葉に表していた。
「痛むでしょう?大丈夫なの…?」
「はい!!これぐらい、助けてもらったんですもの!!大丈夫です!!」
それが、私への優しさ…だと思ってるのかしら?、甘い甘い、蜂蜜のように甘ったるいわ。
「ふふっ、そうなの?それはそれは…良かったわ」
「命の恩人様方に、私恩返しがしたいです!!何かしてあげれること…ありませんでしょうか!!」
へぇ…、恩を貸した相手にちゃんと恩を返す。それが分かってるところだけ上出来ね。なら、お言葉通り ーーー、
「……あがぁぁあ!!!!ん、ぐぁ…な、ぜ…わた、…しま……ぁがっ」
"恩返し" その言葉を聞いた途端の彼女は
悪魔からしたら素敵な笑を浮かべていた。そしてーー、右手の持っているナイフの力を強め、瞬時に男性の胸元を刺した。
返り血が、頬へ、服へ、右腕にありえないほど付いたのがわかる。
裏路地は、鉄臭く 異臭で包まりかえった。
「あぁら?恩返ししてくれたじゃない?なんで、"何故"なんて聞くのかしらァ?」
楽しい。 楽しい楽しい楽しい楽しい。
ーー 楽しすぎるっ!!!
興奮が高鳴り、絶望と達成感と味わいを彼女は一瞬にして感じる。
「私は この世界を滅ぼす者。その為には人間が邪魔なわぁけっ…だから、1人この世からさよならしてくれるだけでも…有難いの!!」
「ま、…ぁ…るで、悪魔…だ…」
その一言は、私の立派な価値、立派な存在意義が全て入った言葉である。
そうーー、"悪魔" 死んでいった気品ある女性も、私の狂気さを見たガルネットも、一緒に過ごしたことあるパルポニ母様以外の人間も、全て 彼女の事を"悪魔"と最初に認識するだろう。
悪魔、最初言われ時は " 気味が悪い "
そう思ったけど今はそう思わない。
逆に、堂々と彼女はこう言える
「えぇ、なんせ…悪魔と契約した…悪魔の少女。ですもの」
そして、彼女は 自分の二つ名を胸に刻み込んだのであった。
「よく言ったな? 悪魔の少女か…強いていえば、悪魔の親奴隷の方が似合わないか?」
「やめなさい。パルポニ母様が悪者みたいだわ。…私は自分から奴隷みたいな感じですもの。」
「ほう…?」
召使である、彼は即座に血で真っ赤に染まった彼女の顔や服、腕の全てを綺麗にしたのだ。
さっきと同様、綺麗な黒いドレスは…何故か幻覚なのかは分からないが
ーー、より黒く染まっていた。
「んで、エル。お前の本当の目的はこれではないだろう。」
「えぇ、覚えているわ。さてと…そろそろ夕方、お腹も空いてるの…早く、王城前へと行くわよ」
そう、今日の目的は 王城前へと行くことだった。
これは彼女の望み、何をするかは 彼女だけしか知らないことであった ーー
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レゼット王国 王城門前、長い階段の一番下へ着いた。
ガラスの様に煌めいて、氷のように綺麗な白に近い不思議な色をしている立派な王城だ。
そこに辿り着くまである、長い階段…
" リービオ階段 " は、神者が登る階段と、いう古代のお話がある…そんな階段である。
「こんな所に来て、何をするんだ?」
「ここに宣言するのよ。」
ーー宣言。
そう、この世界を滅ぼす目的があと1歩まで行った時辿り着く場所は絶対にここなのだ。
なんせ、ここは国…いや、世界を握る王城と言っても過言ではないのだから
「この宣言が終われば…本当の、滅ぼしのstoryが始まる…とゆう事か?」
「えぇ、ここまでは序盤にしか過ぎなかったわ。だから、ここで全てを始めるの…」
そう語った彼女は、風と共に黒の染まる漆黒のドレス、亜麻色の透き通る髪の毛を揺らし、その右腕しかない手を階段の方へ伸ばすのだった。
伸ばした途端、その手に現れたのは
ーー、黒い薔薇。
黒薔薇は、彼女達そのものの様に
黒に染まり 目を凝らして見つめると人を呪うかのような感覚に囚われる そんな気がする花である。
そんな花に、一つの口付けをし
小さな桃色の唇を小さく開き
この世に宣言を致す
「ーーー、ここに宣言する
この世界を 滅ぼす事を 。」
その一つの言葉、その一つの出来事が
このさき、彼らを "不幸" か "幸" に連れていくのは、神しかしらないstoryなのである。
「良い、宣言だねっ…それが実現する日を楽しみにしてるよっ…」
一つ、聞き覚えのない声がし
それと瞬時に振り返った時…一瞬
同じ亜麻色の髪の毛が微かに見えた。
「ねぇ、ガル。今誰か私に話しかけて来なかったかしら?」
「さぁ、知らない……。ーー来たか」
最後の、彼の密かに放った
"怒" と "不安" 混じりの言葉は
彼女には 届かなかったのだった ーー。