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メイド達の会話を聞いて覚えられる言葉を全て覚えて好奇心と知的欲求を持て余していた時に、いつも世話をするメイド達とは雰囲気が違うメイドが一人入ってきて、一言も言わずに俺を抱きかかえて部屋を出て移動を開始する。
なんだ、このメイドは俺に一言も言わないで勝手に抱きかかえたりして、俺が喋るのを知らないのか、それとも知っていてこの態度なのか。
まぁ、いいか。それよりこの先に何があるのかの方が気になるな。
赤ちゃんを抱えたメイドはそのまま数分間歩いた後に一つの扉の前で止まりノックをした。
ここが目的地か、この中に多分だけど俺のこの世界での親や兄弟がいるだろうな。
さて、鬼が出るか蛇が出るかはたまた天使が出てくるか。
そしてメイドが扉を開ける。その扉の先は縦に長い机がありその机の上座に重圧さと力強さを漏れ出させている男が座っておりそこから順に10代前半の少年が二人座っておりその反対には20代後半くらいの女性が二人に20代前半くらいの女性が一人そして10代後半の少女が一人座っていた。またその後ろにはメイドが何人か待機していた。
その光景を見た赤ちゃんは目を見開いて驚いていた。
嘘だろ、この男は強すぎる。内包する魔力の量が他の人達とは桁違いだ。
それに俺が目に魔力を集めているのにだって気づいてるはずだ、なのに何もしないってことは力の違いをを分からせるためか。
これ以上は、探るのはやめておくか。
目に集めていた魔力を体全体に散らばらせた瞬間に上座に座っていた男がほんの少し笑みを浮かべてから喋り出す。
「さて自己紹介をしようか、私はお前の父親だ。そしてここに座っている他の者たちはお前の家族だ。私はアルイド公爵家当主ローランド・アルイドだ。私のことはアルイド公爵または閣下と呼びなさい。」
「分かりました。アルイド公爵。」
「よろしい、何か質問はあるか?」
「なら一つ、俺の名前は何ですか?」
「お前の名前か、お前の名前は無い。」
「どういう意味ですか?」
「言葉の意味のままだ、お前の名前を決めるのはお前が10歳になる年にある契約の儀の後だ。そしてその時にお前は正式に我が家の家族となる。」
契約の儀とはなんだ?今はこれ以上は教える気は無さそうだな。
後から分かるだろうし今聞いて機嫌を損ねない方がいいな。
「なら、それまでは俺のことは何と呼ばれるのでしょうか?」
「それは立場によってバラバラだろうな、ここにいる他の者たちは名前があるから名前で呼ばれるだろうから、私は三男とでも言おう。」
「分かりました。」
「それとお前は10歳まではこの家では使用人より少しだけ上の立場だ。分かったか?」
「はい、わかりました。」
「これからは家の中なら歩き回ることを許可する。それとお前が自由に過ごせるのは5歳までだそこからは家庭教師を付ける。」
「分かりました。」
随分と高圧的だな、それに体から微量の魔力を出してこちらを萎縮させようとしているのか。
さらに周りの家族もこちらに興味のある人と無い人にはっきりと別れている、とても歪な家族だな、それともこの世界ではこんな家族が一般的なのか。だが俺からしたら都合がいい。
「ならばよい。それでは部屋に戻れ。」
「分かりました。」
「次に我々と会うのは四年後だが何か言いたいことはあるか?」
「いいえ、特にはありません。」
「そうか、ならば部屋に戻れ。」
そういうと男はメイドに指示を出して赤ちゃんを部屋から出そうとする。赤ちゃんがドアをくぐる一歩手前で一言だけ発した。
「では皆さん『さようなら』。」
その瞬間に俺は溜め込んでいた魔力を一気に体の外に放出する。見た目からは考えられない程の魔力が噴き出しそこにいた全員の髪が揺れ動いた。そのにいる全員がその魔力量に目を見開いて驚くだけで何も発することができなかった。その間に俺は悠々と部屋からでる。
なんてことはないただの嫌がらせだ。
さて、置き土産はどうだったかな。そろそろ第二段階にいったかな。
これだったらあの男もビックリすると思ってやってみたが流石にあそこから魔力が集まって爆発するのはやりすぎだったか、今ごろあの机に穴が開いてるだろうな。
さて今から4年間はこの世界に関する情報集めに動こうかな。