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殲滅のピエロ  作者: タカ
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2

ルビのやり方がサッパリ分からん。

 ここはどこだ、暗いな、それに動きづらいな。

 暗いに動きづらいだと!

 魂の状態では何も見えなかったし動きもしなかった、ただ自我があるだけだった。ならば、つまり躰があるってことだ。

 あぁ、消滅できなかったのか、それに記憶も無くなってないってことはまたあの地獄の様で何も無い『愛すべき日常』というものに戻るのか。

 

 その時に動きを拘束していた壁が振動するかのように動き出す。

 一定の方向に押し出すように振動している。

 そしてさらに壁は狭く、動きはさらに大きくなっていく。


 痛い痛い、痛い、頭が潰れそうだ、あと何時間この痛みが続くんだよ。


 その痛みは唐突に大量の光と引き換えに消えていく。

 それと同時にいくつかのとても小さな音が聞こえてくる。


 あぁ、生きて、生きてしまったのならしょうがないかでもせめてもう一度死ぬ機会が回ってくる身体がいいな。

 それにこの小さな音は話し声か?やけに小さい音だなそれに景色もとてもぼやけてハッキリとは分からない。これが目の悪い人の景色か、見たくない者を見なくて済むから案外と悪くは無いな。


 バチンッ バチンッという音をさせながら産まれたばかりの子を泣かせるために背中を叩く。


 「おぎゃーーーー」


 という赤ちゃん特有の甲高い泣き声を発する。

 それでもまだ安心できないのかパチンッパチンッと今度は確認するかのように叩き始める。

 しかしそれは赤ちゃんにとってはとても痛い一撃だ。


 「おぎゃーーーおぎゃーーーー(痛い、痛いってさっきからずっと泣いてんだろ!)」


 その大きな泣き声を聞いたことでやっと安心をしたのか叩く手を止める。

 すると低く重圧さを思わせる男のこえがする。


 「a@3-1se@ag@」


 しかしその言葉は日本語とは違うのかそれとも壊れてしまった耳では聞き取れないからか定かではないが意味が全く分からない。

 すると次に柔らかでどこか棘があるような女の声する。


 「spsgk42d7lbs42fa;a」


 やはりこの女が何を言っているかは分からない。

 そのやり取りだけで低く重圧さを思わせる男の気配はこの近くから遠ざかっていった。

 そして産まれたばかりの子供は布に包まれてやり取りをした二人とは違う人に抱かれて違う部屋に移された。


 ふ~ん、多分だけど今さっきやり取りをしていた男と女の二人が医者だろうな、二人して大けがを負ったであろう患者に薄情だな、別にさっさと治りたい訳じゃないからいいか。

 それにしてもこの身体を覆ってる布はやけにゴワゴワしてて手触りも良くないな。本当にちゃんとした病院か? 

 それにしても眠たいな、もうどうだっていいや。


 ゆっくりとゆっくりと眠りについたその体は、何度も何度も、何度もあの『愛すべき日常』の景色を憎んでしまった風景を忘れぬように何度も、何度も夢のなかで見続ける。


 ふぁーあ、結構長い間よく寝たなそれにしても寝る前と大違いだな。

 なんたってまず目がよく見えあの風景がぼやけていた時とは違うし、体を動かすのにも違和感が一切無い。

 多分だけど傷ついた部分が治っていって身体に馴染んだって事なんだろうな。

 それにしてもこの傷ついた体ってのはすごいな、とても大量に力が湧いてくるな、怪我する前よりも強いんじゃないかと錯覚してしまいそうだ。


 そして赤ちゃんは見えるようになったばかりの目で視界の中にある物を観察する。

 意外にも赤ちゃんが居る部屋は大きかったそして部屋の中を観察しているとあることに気づく、それはプラスチックが一切無いことだ。


 おかしいぞなんでどこにもプラスチックが無いんだ。そんなバカなことがあるのか?この21世紀にプラスチックが無いなんてことが、発展途上国にだってあるような物だぞ、それなのにこんな大きな部屋に無いなんて、本当に病院なのか?


 そして一人の女が入ってくる。

 その手には少し湿らせた布を持っている。

 メイドは自分の頬に湿らせた布を当てて温度を測った後に体を布では拭かずに一言


 「『温風』」


 とつぶやいた。

 その言葉はなぜかこの壊れてしまった耳にも聞き取れて意味が分かった。

 その言葉の後に窓などが開いてもいないのに温かで優しい風が俺の頬を撫でて体を包み込んで水気をどこかに飛ばしていった。

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