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1.自称カメラマン岡嶋と霊二人

街中にデジカメで猫を撮影しようとしている青年が一人。

傍から見れば野良猫専門のカメラマンが野良猫を撮影しているように見える。


猫はくつろいで仰向けになって寝転がっているがカメラを構える青年の表情は硬い。


『おおっへそ天してるのぉ』

年齢を重ねた口調の声が聞こえる。

『ほんとだ~かわいいよね~』

それに対してゆるい感じのした声が聞こえる。

『宗坊さっさと撮りなよ』

『そうだよ、いますっごくいいタイミングだと思うよ?早く撮らないとタイミング逃すと思うよ、岡嶋君』

「あのさぁ、二人とも・・・撮影終わるまで自重してくんない?お前らが撮影範囲に入ってて思いっきり心霊写真になっちまうからさ・・・。つーか、タイミングいいと思うならそのあたり考えてくれよ」

その青年が撮ろうとしている猫のそばには二人ほど霊がついていたし、青年にはしっかりと霊の声も聞こえていた。


青年の名は岡嶋宗次(おかじまむねつぐ)27歳の自称動物ブロガー。

そして、彼についてきている二人の霊のうち歳を重ねたほうは御防幽禅(みさきゆうぜん) 宗次の先祖らしい。

また、もう一人のほうは原伸平(はらしんぺい) 宗次の高校時代のクラスメイトである。


霊二人をどかせて撮影にいそしむ宗次。それでも表情は硬い。なぜなら・・・

『もふりたい!!猫に思いっきりもふりたいんじゃあ!!!肉球ぷにぷにしたいんじゃあ!!』

『もふれる実体がある岡嶋君が本当に羨ましいよ・・・。』

霊二人が後ろで騒いでいるからである。霊感なしの人間なら全く気にもならないだろうが、しっかりと聞こえる為集中しようにも集中しづらい。だからといって怒鳴り散らせば猫も逃げるしご近所様にもよろしくない。

あと、都市伝説である黄色い救急車にお呼ばれされる必要があると思われるのもすっごく嫌だ。

普通猫を撮るのにすり減らす事のない神経をすり減らしつつ撮影にいそしむのであった。

ちなみに、猫は聞こえているのか聞こえていないのか関係なく寝転がっている。


何匹か猫や犬を撮影して、そして猫と二人の霊が戯れているうちに夕方になり、借りてる部屋に帰ろうとしているときに・・・

『そういえばもう10年じゃの・・・』

「そうだな・・・」

『ほんとごめんね岡嶋君、僕のせいで家出するようなことになっちゃって・・・』

「いいよ、あんな腐ったところにいるよりはマシだろうし。原の件が無くても出るのが多少遅くなっただけだと思うわ。それに、原のおかげで今の仕事してるようなものだしね。」


彼は17歳の頃に家出。5年ほど前から野良猫や他の動物を撮影している。写真をアップロードしたブログの収益が今の表向きの主な収入源である。ちなみに、それを勧めたのは猫好きの伸平である。

岡嶋家は大まかに言うと退魔の家系である御防家の傍流であるが、御防家の家系の中で最も高い才能を有している。ただし、現在生きているという条件がつく。

なぜ「大まかに」と言うと、御防家は魔を退けるのではなく魔を滅するためであり、御防家のような者たちは大半の正当な退魔師から嫌われていた。なぜなら、退魔師は文字通り滅することなく退ける事により魔を飯の種にしていたからである。滅するものたちはその飯の種を消してしまう。ただし、全盛期の御防家に関しては「退魔師の手に負えないものに限り」という約定があったためそこまで嫌われることはなかった。現在は順調に没落して退魔師としても落ちぶれており、退魔師達からの嘲笑の対象となっている。


『それにしても10年経ってもあの連中はしつこいのう・・・』

「ほんと、俺程度が禅爺の再来とかねーのに、ちょっと他の連中よりあるってだけで大騒ぎだもんな。」

『はっきり言って堕落しきった今、御防家の再興は不可能としか言いようが無いわ。わしの頃から数代は京で活動できておったが、今の御防家はほとんどが堕落しておるからのう。宗坊にあっさりと返り討ちにあうのがなによりもの証拠なのにのう。まあ、教えているのがわしだというのもあるかもしれんがな。』

『退魔師よく知らないけど、10年も負け続けてよく折れないよね。・・・折れるところが無いのかもしれないけど。』

「たまに思うけど原ってひどい事言うよね、本当の事だろうけど」


御防家に関しては宗次にとっても幽禅にとってももはやどうでもいい話である。

宗次は家出したので興味は無く幽禅は堕落しきった御防家を見限ってしまっている為、二人とも御防家がどうなろうと関係ないというスタンスである。

ちなみに宗次が家出した理由は伸平の死の原因と御防家の件が絡み合っており、その件についても幽禅は憤慨している。

当の二人はもう興味すらも無いのに、御防家は宗次に追手を差し向けて返り討ちにあっているのである。

出奔した傍流に能力でボロ負け。本来、能力の高いものを養子に据えて再興を図るべきだろうにその傍流に逃げられてしまったことが他の退魔師達から御防家が侮られている最大の要因 (落ちぶれ)といえる。

とは言え、宗次を養子に据えたところで他の退魔師達に勝てるのかというとそういうわけでもない。それは幽禅は理解しており、宗次も痛感している。


「原が死んでからも10年なんだよな・・・」

『本人が言うのもなんだけど、そだねー。そういや、おっちゃん達から連絡あったけど樋山(ひやま)の祟りはまだ続いていて今でも苦しんでるって。』

「ざまぁ」『ざまぁ』


樋山享(ひやまりょう)とは伸平を死に追いやった男であり、宗次や伸平と同じ学年だった。だが、現在は先祖代々からの恨みや祟りを受けており、精神状態がおかしくなっているらしい。宗次や幽禅が「ざまぁ」と言ったのも二人は彼を嫌悪しているからである。

宗次は友人たる伸平を殺された事で、幽禅はそもそも樋山家を毛嫌いしているからである。

その祟りはこの二人も関っていることを樋山家は知らない。

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