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消滅9
娘は気が利く子で、蝶を追いかけていないときはいつも私や私の夫を気にかけてくれていた。それでよく私たちを手伝ってくれていた。一緒に料理をしたり、または一緒に森の奥へと入っていったり、そんなことをしてくれていた。そんな優しい、かわいらしい娘は、私が目を離した瞬間の時に・・・・消えてしまった。
「蝶はつかまえられ・・・・・・・―――――――――――っ!?」
私が外にでたときには娘がいなくなってしまっていた。私は必死に探した。まだ小さい、幼い、だからそんな遠くへは行かれない。だから必死になって探した。でも見つからなかった。ただ蝶々がひらひらと二匹とんでいた。かわいらしく、何も知らない蝶々はただただ、ひらひらと舞っていた。そして春の風が吹いてきていた。でも・・・それでも、蝶々はここにいるのに、娘は帰ってこなくなっていた。
かわいらしい子だった。本当に大好きだった。また、かえってほしい、と願ったって、神様もだれも、私の願いなんかかなえてはくれなかった。