第一章 1話
「…うわぁ。」
おどおどしい雰囲気の屋敷。
なんかボロイし、壁には蔦が這ってるし、心なしか、ここの周りだけ空が曇ってるような…
「ミリア、ここだよ。」
アリアがわたしの服の裾をくいくい引っ張る。ようは、入れと言いたいのだろう。
仕方なく、そばにあったチャイムを鳴らす。しばらくして、扉が開いた。
そこに立っていたのは、美少年。
灰色というか、銀色っぽい髪がふさふさして、瞳は同じ銀色。ただ、目つきが悪く、身長が低い。服装は、ジーンズにパーカーと、ラフな感じだ。
「誰?」
低い声で言われて、人見知りなアリアがびくっと肩を揺らしてわたしの背後に隠れた。おや、ここは姉としてがんばるか。
「はじめまして。わたし達、ここに入ることになった者なんだけど。」
「…あぁ、理事長がいってたな。」
ひとまず入って。そう言われて、寮の中に入った。
中は、見た目とは大違いで、綺麗だった。
リビングには、アンティークの家具たちが置かれていて、掃除も行き届いてるみたいで、埃ひとつない。
その、明らかに年代物のソファーにアリアと二人で腰かけていた。
仏頂面と合わずに気が利く少年君は、わざわざ紅茶をいれてきてくれた。うむ、ありがたいなぁ。
「ねぇ、君の名前は?」
興味本位で尋ねると、すごく嫌な顔をした。でも、一応答えてくれた。
「ルー。狼男と人間のハーフ。」
「えっ?」
アリアが声を上げると、ルーはそれ以上言うなと言わんばかりにアリアをにらんだ。うっと声をあげてひるむアリア。
まぁ、今のはアリアが悪いな。
「ねぇ、他の寮生は?」
「今はいない。俺と合わせて5人いる。」
「へー」
結構少ないな。
中央学園は全寮制で、寮が5つくらいあるらしい。
その中でも、第一寮は特待生や、秘密などが多い生徒の集まりで、なぜわたし達がこの寮かというと、理事長の計らいである。
(別に普通のとこでも、よかったのになー。)
わたしは、出された紅茶を飲みながらつぶやいた。
あ、この紅茶けっこうおいしい。