第七章《サイキッカーの涙》〔03〕
崩落を始める洞窟の中、光を握る魔物に立ち向かう二人の戦士。
照準位置を探すガンマンに、魔法陣をかける死霊使い。
それを黙って見守る、傍観者の死神。
「Strengthening《強化》」
死霊使いであるウェリがSIG552を構えるアイザに、術をかける。
緑色に輝く球体がアイザをつつむと、それはアイザの体に吸い込まれていった。
それを確認したアイザは、深呼吸をひとつついて。
「………いくぞ」
「グルぁあアあぁああア!!」
左翼を毟り取られ、苦痛の叫びをあげる魔物に容赦なく切りかかる二人の戦士。
片方は身の丈以上の大剣を片手に、もう片方は手をサーベルに擬態化させて魔物を貫く。
「うおおぉおぉ!!!」
突然、キリコが魔物に向かって大量の火を吹いた。
呆気に取られた戦士二人は、キリコの方を見て呆然としている。
火の海と化した魔物の周りに火花が飛ぶ。
魔物が熱さに、光を握っていた手を離した。
それを見逃さんばかりに、キリコがその小さな体で倍ある光を抱える。
「アイザっ!今だっ」
「おうっ!」
キリコの合図とともに、アイザが魔物の背後の壁に撃ち込んだ。
ドンッ
見事に直撃した弾は、壁に皹をいれて爆発。
崩れてくる瓦礫から逃げることも出来ずに魔物は埋まってしまった。
「クロラ、いつになったらやるつもりだ?もう倒しちまったぞ」
と、光を抱えたままキリコが言う。
「……君らが勝手に行動するから一撃必殺のチャンス逃しただけだよ。」
キリコの問いに、ため息をつきながら答えるクロラは人差し指で瓦礫を指した。
「どーんっ」
「ヴルあアああぁあ!!!」
魔物の上へと落ちる、大きなハンマー。
自信まんまんな顔のクロラと、「チャンスとかのタイミングより助けてやれよ」と説教するキリコ。
何がなんだか分からないといった顔でその場に佇むアイザたち。
男の腕には、光を纏う少年が寝息をたてながら眠っていた。




