第五章《愚者の足掻き》〔02〕
「バスタは、ギルガメシュにいた老人のこと。そうだよね?リテュール」
クロラが床に寝転んだままのリテュールに問いかける。
リテュールは短く「うん」と答えた。
「バスタお爺ちゃんは、キラーメイカーだよ。ボクは実験体にはならなかったけど、
実験体の人たちはなんかこう……死んだような顔だった」
リテュールが死んだような目の真似のつもりか、目元をくいっと上に持ち上げて見せた。
クロラは「有難う」といってリテュールの頭をなでてやると、犬のように鳴き声を上げた。
「そのバスタが今、ノイシュタットにウイルス感染者をつれて来ているんだ。
だから、皆にはノイシュタットにいる人らをつれて、アーリアの屋敷に向かって欲しくて」
「クロラはどうするんだよ」
「僕は……僕はここに残って、奴らを叩く」
クロラは再び手に持つ鎌を握りなおした。
アイザはそんなクロラに問う。
「何でだよ。俺もここに残るぞ。なんか隠し事でもあんのかよ?」
「私も残るよ。相手はキラーメイカー。そいつを叩けばいい話じゃない」
ウェリも一緒にクロラを説得しようとする。
だがその願いは叶わず。
「……駄目!!お願いだから、皆を連れてここから離れて!!!」
鎌をぶんぶんと振り回し、慌てながら投げる三人を追い払うとドアを閉めてしまった。




