第一章《ハンドガンと君》〔02〕
白い雪の上を、黒い格好のクロラが歩く。
ここ、フェンガスト山は北地方で一番大きなダンジョンで、ここにレベル上げをしに来るプレイヤーは
どこのダンジョンよりも多い。
クロラも、レベル上げをしている最中だ。
だが、彼女の周りにいるプレイヤーのレベルは10から20程度。
NPCである魔物もそんなに強くは無く、クロラは呆れて本日2回目のため息をつく。
「ここじゃ意味ないかぁ…どうせならあそこでやったほうがいいかな」
そういってクロラが開いたのはマップ。
リアルセカンドの世界のマップだ。
クロラはマップに触れ、その指である場所に丸印を入れた。
「よしっ。行こう」
クロラが、雪に埋もれた足を上げようとしたそのとき…
「おジョーちゃん、ちょっといいかなぁ?」
振り向くと、いかにもそこら辺に居るゴロツキのような格好をした男三人がクロラを囲んでいた。
「……なに」
クロラは男を睨みながら言った。
「君、いいカッコしてるよねェ。ちょっとこっちに来てくれるぅ?」
男の顔はいかにも女の尻を撫で回して興奮している中年の顔だった。
後ろに居るとりまき(?)達も同じような顔でクロラを見ていた。
「…なんで?悪いけどボク、君みたいな雑魚相手に奉仕するような暇なんてないから。
消えてくんない?おっさん」
「……ンだとぉ!?俺の言うことが聞けねェのかぁ!?」
クロラの挑発的な態度に怒った男は、腰の鞘から剣を取り出しクロラに斬りかかった。
だが彼女は何の構えもなく、男の剣を素手で受け止める。
手から滴り落ちる血が、白い雪を赤く染めた。
「っ!!?」
「……だから言ったじゃん。雑魚相手に割く時間もないのに」
クロラは左足で男の腹に蹴りを入れる。
そのまま勢い良く吹っ飛んだ男は、とりまきの男共と一緒に雪山を転がり落ちていった。
「あーあ。どうも、加減できないってのは面倒なんだよね」
手から出る血を、反対の手で拭う。
クロラはまた、ため息をつきながらゆっくりと雪山を降りていった。




