第四章《死霊使いと笑う悪魔》〔03〕
「あがっ!!!?」
鮮血が地面に滴り落ちて、リテュールが跪く。
はあはあと肩で息をしながら、キッと睨みつけた先に存在するのは小さな少女。
少女は手に杖を持っていた。その先端からは、真っ白な煙が。
発動した魔法の残骸か。
少女はその杖をリテュールの額にあて、問うた。
「君、私になんの用?何でこんなトコで武器振り回すの?」
リテュールはその問いに、途切れ途切れ答える。
「ボクは、つよ…いやつと、戦い、たいだけ」
「どうせ、クロラちゃん追っかけてきたんでしょ?あの子、強いもん」
「ウェリ!!!ウェリだよね?」
二人のもとに駆けつけてきたのはクロラ。
クロラは少女の顔を覗き込み、「久しぶり」といって握手をした。
「ウェリ、ごめんね…こんなに怪我させて」
「怪我させたのはこの子じゃん。クロラちゃんが謝る必要ないよ」
そういいながら、ウェリはリテュールの方を見る。
ウェリの体にはリテュールが殴った跡がくっきりと残っていた。
「ともかく、この子連れて宿屋に戻ろう」
ウェリは、怪我させられたはずのリテュールをクロラと一緒に担いで宿に向かった。
「何で」
「何でって、なにが?」
アイザの不機嫌そうな顔を見るなり、クロラはぷっと吹き出して笑った。
自分の問いが帰ってこないことと、自分達を執拗なまでに追ってきた少年が連れてこられたことに
不満を抱いているのだろう。
クロラは少年、リテュールをベッドに降ろし、一緒に来たツインテールの少女にアイザを紹介する。
「アイザ君、この子はボクの知り合いでウェリって言うんだ」
紹介されたツインテールの少女はこくんと頷いてアイザの手を取り
「こんにちは。私はウェリ。死霊使い《ネクロマンサー》です」
と言って無愛想な顔で口の端を無理に持ち上げ笑顔を作る。
アイザはそんなウェリの手を握り返して、こちらも同じように笑顔を作った。
どちらかといえばウェリもアイザも笑顔を作るのは苦手のようだ。
両端の口元を上げることはできないらしい。
クロラはその二人を見比べ、クスリと微笑んだ。




