第四章《死霊使いと笑う悪魔》〔02〕
「どーしよっか、なー?」
雪の降る町、ノイシュタットの広場でクロラは手の鎌をぶんぶんと振り回し、アイザの方をみる。
「アーイザっ君?どうしたの」
クロラは変に俯いて歩くアイザの顔を覗く。
その顔は何か思いつめたような顔で、クロラはしょうがないといってアイザの肩に手を置いた。
「リテュールは前にも一回戦ったことあるんだ。そんときもボク、死にそーだったし。
しょうがないよ、アイザ君は…ー」
「…ーそんなことじゃない」
「え?」
「俺が聞きたいのはそれじゃない」
アイザは顔を勢い良く上げて、クロラの手を掴んだ。
「こっち、来て」
無理やりに連れて行かれた先はクロラがアイザに出会う前、彼を待っていたときに入っていた
カフェだった。
アイザはクロラを一番端のテーブルの椅子に座らせて、ウェイトレスに注文する。
「コーヒー二つ」
「かしこまりました。少々お待ち下さい」
ウェイトレスは注文したアイザににこりと微笑むと、その白と黒のミニスカートを右へ左へ揺らしながら
厨房に向かっていった。
「ずっと、気になってたことがあるんだ」
「……なに?」
クロラが真剣な顔で、アイザの目を見る。
アイザは一呼吸おいて、話し始めた。
「「血の静粛」…ここで起きた事件でさ、大量虐殺に関わっていた魔王ってやつがいたよな。
俺はそのときまだこの世界には無関係だったんだけど、クロラってそのときからいた?」
「……あー、その噂か」
クロラはかしかしと頭をかき、ひとつため息をつくと、
「悪いけど、それは嘘だよ」
「…え?」
「だから、嘘。
前の持ち主がやったってのが正解」
クロラは自分の服襟をくいっと持ち上げて、笑った。
「血の静粛は先代のシェーラ=リコルが主犯格だけど、彼女の大量虐殺に調子にのって参加したのは
ボクの前のプレイヤー。もちろんキラーハンターにはボクがその人物じゃないってことはいってあるよ」
どんっ。
突然、ノイシュタットの広場の方から爆撃音が聞こえる。
二人は椅子から立ち上がり、外へと駆け出した。
そこには、狂気の笑みを浮かべたリテュールの姿が。
彼は一人の女の子相手に、拳で殴りつけている。
ごすっ、ばきっ、どんっ!!
「うっ……!!!」
「君、よわーい」
リテュールは女の子に容赦なく殴り続ける。
女の子はそれに黙って耐えているだけだった。
「もう、おしまいにする」
リテュールが女の子を突き飛ばし、一歩一歩近づいていく。
歩きながらリテュールが呪文を唱えたかと思うと、手から魔方陣が展開され、
その中に手を突っ込むと、勢い良く引き出す。
その手には、小さなタクティカルナイフが握られていた。
「……っ!!」
女の子は地を蹴り、リテュールから逃げるようにして走る。
そして、なにやらぶつぶつと何かを唱えていた。
「ー……空を支配するもの、天空から舞い降りたし女神の慈悲、
悪魔に打ち勝つ聖なる剣、死霊使いの名の下にいでよ!!!」
女の子が死の咆哮をはなったとき、リテュールの叫び声が当たり一面に響いた。




