第二章《不老不死を狙う者》〔05〕
ウェイスの中心にある緑色で塗られた屋敷に、二人の男が招かれる。
一人はヒョロヒョロとした体に重たそうな木製の杖を両手に抱える男性。
もう一人は前者より体格の大きな巨漢。
だが巨漢の方は魔法を発動させるための媒体が無い。
どこかに隠しもっているのかー…今現在、媒体武器無しで魔法を発動させることが出来る
プレイヤーは一人しか居ない。
その人物は、既にRSをアンインストールしていて、もう居ないが。
「遠い所を来ていただいて有難う御座います。お茶菓子はお好きですか?
ついこの間、美味しいお菓子を見つけたんですよ」
玄関前で男に話しかけているのはアーリア。
車椅子に座るビスクドールは、悪戯そうな顔をして笑った。
「いやいや、すみませんねェ!野郎二人なんかに割く時間なんか無いでしょうに」
ヒョロヒョロな男が頭をかいてにまにまと笑う。
「いえいえ。私がお呼びしたのに割く時間が無いなんてありえませんでしょう?」
アーリアが屋敷のドアを開け、中に入っていく。
男二人は顔を見合わせて、にやっと不吉な笑みを見せるとアーリアに続いて屋敷に
入っていった。
「うわー…凄いなアーリアさん」
屋敷の二階にある一室から外の様子を覗いていたキリコが言う。
「演技には自信があるって言ってたしねー前にもこんなことあったし」
クロラが手に持っていたマカロンを、セブの口に詰めながらそれに答えた。
マカロンを口いっぱいに詰め込まれたセブは、幸せそうにむぐむぐと口の中のマカロンを
消費して、次のお菓子を待っていた。
「さて、もう直ぐ奴さんがアーリアの用意した罠にかかる頃だよ?」
セブの期待を裏切るかのようにクロラが最後のマカロンを口にくわえる。
セブの無表情が少し悲しそうな顔に変わるのを、キリコは見てため息をついた。
「ほら、これやるから」
キリコの差し出したチョコレートにセブの表情は和らいだ。
屋敷の大広間でアーリアと男が話している。
「さて、いつ貰えるんですかねェ?その…賞金とやらを」
「……なんです?」
アーリアが微笑みを見せたまま男の方を見る。
「とぼけないでくださいよぉ、貴女がここに呼んだんでしょうが…「貴方達の功績を称えて賞金を授与する」って」
男はいつまで経っても金を渡さないアーリアにいらついているのか、車椅子に座るビスクドールを
睨みつける。
アーリアは「ああ」と言って、小さな指でパチンと鳴らすと
「トリス、ミリア。あれを持ってきてくださる?お茶菓子と一緒に、お二方に渡す大事なものを」
部屋のドアから出てきた使用人二人にそう命じると
使用人は軽く一礼して部屋を出た。
「……なんか不思議なアバターですね。小動物と体格のいい男でしたけど」
「そうですわね。彼らはつい最近入ってきた新人ですのよ」
男の質問に、アーリアが軽く答える。
「まあ、楽しみにしていて下さい。賞金と一緒に美味しいお茶菓子を用意させましたから」
アーリアの笑みが静かに「クス」といったのを、ギルドハンターが気づくことは無かった。




